Mori Calliope×亀山陽平 特別対談 2人が語る“言語の壁”の超え方とはーー音と視覚で突破するグローバルな表現論

YouTubeチャンネル登録者数260万人を誇るバーチャルアーティストでありラッパーのMori Calliope、そして、YouTube総再生回数1.5億回を突破しているアニメ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』で注目を集めている亀山陽平。この度、世界的な支持を得ているアーティスト同士の対談が実現した。
「LET’S JUST CRASH」(TVアニメ『ガチアクタ』第2クールOP主題歌)のMVを亀山が手掛けたことが両者の出会い。『マッドマックス』的な世界観、スピード感に溢れた映像、ポップなキャラデザインなど、楽曲の魅力をダイレクトに伝えるMVは現時点で(2月2日時点)900万回に迫る再生数を記録している。
Mori Calliopeは2月6日にメジャー3rdアルバム『DISASTERPIECE』をリリース。さらに同日、亀山監督の劇場版『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が公開された。今回の対談では、「LET’S JUST CRASH」のMVの制作を軸にしながら、海外で支持されるクリエイティブや言語の壁の越え方などについて語り合ってもらった。(森朋之)
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きっかけは『ミルキー☆サブウェイ』、言葉を介さない視覚表現の力
Mori Calliope(以下、Calliope):お久しぶりです。
亀山陽平(以下、亀山):お久しぶりです。今年もよろしくお願いします!
——お二人が会うのはいつぶりですか?
亀山:「LET’S JUST CRASH)のMVの打ち上げ以来ですね。僕は結構酔っぱらってたんですけど(笑)。
Calliope:とても楽しかったです。亀山さんがたくさん英語で話してくださって。
亀山:一応、留学経験(2016年にアニメーションを学ぶためにアメリカに留学)があるので。シラフの時はあまり喋れないんですけどね(笑)。
——亀山さんは以前からCalliopeさんの音楽を聴いていたとか。
亀山:はい。ずっと真夜中でいいのに。の「綺羅キラー (feat. Mori Calliope)」でCalliopeさんがラップパートを担当されていたのがきっかけでした。アニメ『異世界スーサイド・スクワッド』(TOKYO MXほか)のEDテーマになってた「Go-Getters」がめちゃくちゃカッコよくて、それ以来ずっとリスナーです。
Calliope:そうなんですね。知らなかった。
亀山:いろんなジャンルの音楽を聴くし、邦楽、洋楽も分け隔てなく好きなんですけど、Calliopeさんの曲は日本語と英語の混ざり方がすごくよくて。
Calliope:嬉しい! ありがとうございます。
——では、早速「LET’S JUST CRASH」のMVについて聞かせてください。この楽曲はアニメ『ガチアクタ』(TBS系)第2クールのOP主題歌。作詞はCalliopeさんとsyudouさん、作編曲はsyudouさんが務めていますが、どんなイメージで制作されたんですか?
Calliope:私はロックが好きで、以前からメタル曲や叫ぶ曲を作りたくて。『ガチアクタ』OP主題歌のオファーを受けて、「これはチャンスだ」と思いました。『ガチアクタ』の原作者である裏那圭先生とはお友達で。普段は「自分の世界観を伝えたい」という気持ちが強いんですが、『ガチアクタ』はすごく好きな作品だし、「LET’S JUST CRASH」も『ガチアクタ』の曲として作りたかったんですよね。なので、歌詞は主人公のルドの視点で書きました。怒りもたくさん入ってるし、もちろん希望もある。まさに、歌詞にある通り〈掃き溜めで希望を〉ですね。サウンドはロックやメタルで、アニメソングの雰囲気もあるし、ちょっとだけラップも入ってます。『ガチアクタ』はグラフィティの要素もあるので、HIPHOPのバイブスが合うんですよね。
——Calliopeさんのルーツもしっかり込められていますよね。亀山監督にMVをオファーした経緯は?
Calliope:この曲は『ガチアクタ』のタイアップ曲だし、私にとってもすごく大事な曲で。MVをどうするか悩んでいた時に、偶然Xで『ミルキー☆ハイウェイ』を観て、「すごい!」と思ったんです。「MV、作ってもらえるかな?」とプロデューサーさんに連絡を取ってもらいました。
——やはり『ミルキー☆サブウェイ』のインパクトが大きかった。
Calliope:そうですね! パイロット版の『ミルキー☆ハイウェイ』も観たんですが、カッコいいし面白くて、海外の人もすごい好きだろうなって。キャラクターの表情もすごくいいんですよ。カートゥーンっぽいというか。
亀山:昔から海外のアニメーションをたくさん観てたんですよ。ディズニー作品もそうですけど、表情で見せたり、演技にこだわっている作品が多くて。自分で作品を作る時も、そういうところにフォーカスを当てたいんですよね。言葉がわからなくても、表情を見れば何をしているか大体わかるという。もともとアニメーションは、ビジュアルで物語を伝えるのが大事だと思っているので、世界の人たちに観てもらえることを意識しながら作ってますね。
——音楽とキャラクターの動きがリンクしているのも亀山さんの作風なのかなと。
亀山:50年代くらいのアメリカのアニメって、音楽に合わせてアクションを展開する作品が多かったんですよ。自分もそういうものが好きだし、専門学校の卒業制作を作る時も“音楽に合わせたアクション”にフォーカスしていました。『ミルキー☆ハイウェイ』は映像と物語がメインで、それをより盛り上げるために音楽がある。でも、MVは音楽を盛り上げるための映像なので、主体が違うんですよね。

MV制作秘話ーー『マッドマックス』インスパイア、キャラクターデザインのこだわり
——「LET’S JUST CRASH」のMVに関して、Calliopeさんサイドからはどんなオーダーがあったんですか?
Calliope:私にもアイデアはあったんですが、“too ambitious”で……。
亀山:気合いが入り過ぎてた?
Calliope:ふふ、そうです(笑)。完成したMVは『マッドマックス』からインスピレーションを得ましたけど、最初の案ではもっと単純な“カーレース”だったんです。車がたくさん走っていて、いろんな面白いキャラクターが出てくるMVがいいなと思っていました。私のプランをもとに、亀山監督が調整してくれました。
亀山:「いろんな見た目の観客がたくさんいる」というアイデアでしたよね、最初は。確かにそれはめっちゃよさそうだなと思ったんですけど、物理的な制約もあって。一番いい落としどころを見つけるのは大変だったんですけど、お互いにやりたいことがありつつ、現実的に何が可能かを調整する作業も映像作りの楽しいところだったりするので。全部を叶えられなかったという悔しさもありますが、すごく充実した制作でしたね。
——亀山さんの制作のイメージはどんなものだったんですか?
亀山:初めて「LET’S JUST CRASH」を聴かせてもらった時に、とにかくCalliopeさんのシャウトがカッコいいなと。なのでストーリー仕立てというより、テンションが上がり続けるような映像の羅列もいいのかなと思ったんです。ただ、その中でCalliopeさんから「レースの物語にしたい」というお話があって、そこから広げていった感じですね。ストーリーとしては、起承転結を作りながら、意外なオチを用意して。あとは「どれだけ曲に合った演出ができるか?」というところですね。
Calliope:私は亀山監督のファンだから、「任せたい」と思っていました。アーティストは、その人自身のビジョンが一番大事。ほかの誰かがエディットに口を出したり、リクエストし過ぎると作品のクオリティが下がると思うので、今回も「あまり言わないほうがいいな」と。実際、すごくいいMVになったので、最高です。
亀山:よかったです(笑)。自由にやらせてもらえるのは、こちらとしてもめちゃくちゃありがたくて。自分が超やりたかったことで言うと、Calliopeさんの歌声、特にラップとシャウトを活かしたくて、MVの映像のなかにシンガーがいてほしいと思ったんですよ。最初にそのアイデアを持っていった時は、Calliopeさんから「あんまりCalliopeを押し出したくない」と言われて。
Calliope:そうですね(笑)。
亀山:「え、もっと自信持ってやろうよ!」と思ったんですけど(笑)、自分の中で調整して、最終的にCalliopeさん自身ではなく“Queeen”というキャラクターになったんです。
Calliope:Calliopeのペルソナみたいな感じかもしれないですね。
——キャラデザインについては?
亀山:MVの主人公はピンク色の髪の“Challenger”と呼ばれているキャラクターなんですけど、あのデザインはCalliopeさんの案なんですよ。そのデザインがすごくよくて、「僕も本気でやらないとヤバいな」と。ほかのキャラは僕がデザインしたんですが、主人公に見劣りしないように頑張って作らせていただきました。
Calliope:私も専門学校でマンガの勉強をしていたんですよ。結局音楽を選びましたが、今もコミックがすごく好きで、絵もたくさん描いています。MVの主人公は確かに私がデザインしたんですけど、3Dアニメーションでどう作ればいいかわからなかったから、亀山監督にブラッシュアップしてもらいました。
亀山:頭身のバランスだったり、細かいディテールを変更したくらいですけどね。“Challenger”、めちゃくちゃいいキャラです。
Calliope:ほかのキャラクターも主人公のバイブスとマッチしていて。すごく素敵な世界観のMVになりました。『マッドマックス』インスパイアのMVは観たことがないし、もしかしたら世界初かも。

——今回のMVの制作には、カナバングラフィックス、ツークン研究所(東映)も参加していますね。
亀山:それも個人的には結構なチャレンジだったんですよ。これまでは基本ひとりで制作していたんですけど、今回は監督業に徹しました。複数の人と映像を作った経験がほとんどなかったので、それぞれのスタジオさんにもいろいろと調整してもらったり。
——チームで制作するメリットも感じられたのでは?
亀山:そうですね。ひとりで作っていると、どうしても諦めなくちゃいけないディテールがあるんですよ。今回は細かいところまで丁寧に作っていただいたので、そこはすごくありがたかったです。たとえば槍がバーンと発射されるシーンがあるんですけど、一瞬、太陽の光が画面に映るんですよ。それは私ではなくて、スタジオさんの判断で加えてもらったんです。自分では思いつかなかったし、そういう細かい演出の一つひとつがしっかり活きてるなと思いますね。

















