RADWIMPS&新海誠『すずめの戸締まり』主題歌に十明が抜擢された理由 上白石萌音、三浦透子に次ぐ非凡な歌声
2022年11月11日、ついに、新海誠監督の3年ぶりの新作『すずめの戸締まり』が公開される。松村北斗(SixTONES)が声優として参加することが発表されるなど、公開日が近付くにつれて少しずつ今作の全容が明かされていくなか、9月20日には、同作において新海監督とRADWIMPSの3度目のタッグが発表された。
新海監督とRADWIMPSのタッグは、2016年公開の『君の名は。』から始まった。新海監督は、『君の名は。』を遠くまで届く作品にしたいと強く願っており、そうした作品を実現するために、前々からシンパシーを抱いていたというRADWIMPSへ音楽制作をオファー。脚本の第一稿を受け取った野田洋次郎は、2〜3カ月後に「前前前世」「スパークル」のデモ音源を送った後、新海監督とRADWIMPSは数え切れないほどのやり取りを重ねていく。結果的に、4曲の主題歌と劇伴が完成し、RADWIMPSが生み出した音楽は、映画の大ヒットと合わせて社会現象を巻き起こすほどの話題を呼んだ。2016年の『NHK紅白歌合戦』において、初出演のRADWIMPSが「前前前世」を披露した時のことを記憶している人も多いはずだ。
そして、新海監督とRADWIMPSが、より高い次元で映像と音楽を一体化させることを目指したのが、2019年公開の『天気の子』であった。単に前作と同じことを繰り返すのではなく、全く新しいアニメ表現を追求していく、という共通認識のもと、両者は映像と音楽がお互いに響き合うような作品を目指していった。制作過程においては、主題歌の歌詞をじっくり聴かせるために、音楽都合で映像の尺を調整することも多々あったという。
そのような妥協なき試行錯誤の繰り返しを通して完成した『天気の子』において、RADWIMPSの音楽は、劇伴や主題歌という本来の役割を越えた重要な存在となっている。野田が脚本の第一稿を読んで最初に制作した主題歌「愛にできることはまだあるかい」には、制作初期の段階において、まだ新海監督自身すらも正確に言語化できていなかった『天気の子』の物語の本質を見事に射抜いたメッセージが内包されており、その後の制作における一つの指針となったという。また、新海監督は、野田から届いた「大丈夫」の言葉に導かれるようにして、この物語のエンディングを決定していったという。こうした数々のエピソードから、両者の間に、「映画監督×映画音楽作曲家」以上の深い関係性が築かれていることが伝わってくる。
だからこそ、今回『すずめの戸締まり』において、新海監督とRADWIMPSの3度目のタッグが実現したことは必然的であった。新海監督は、今作の制作について、「過去二作とははっきりと違う音楽が必要になる映画だと思いましたし、今までよりもずっと鮮烈な音楽体験を観客に与えたかったのです」とコメントしている。そうした新しい挑戦をする上で、新海監督は、再び、盟友・RADWIMPSの力を必要とした。なお今作の音楽は、世界を舞台に活躍する映画音楽作曲家の陣内一真との共作であることも発表されている。こうした新しい布陣から、映像と音楽の融合をさらに高い次元で実現してみせる、という新海監督の熱い気概が伝わってくる。
そして合わせて、シンガーソングライターの十明(とあか)が、RADWIMPSが手掛けた主題歌「すずめ」を歌唱することが発表された。前々から公開されていた予告編を通して、既に彼女の歌声を耳にしたことがある人も多いだろう。まだ現時点では、多くの謎に包まれているアーティストではあるが、TikTokでは、これまで彼女が投稿してきたいくつもの弾き語り動画を観ることができる(※2)。