ASIAN KUNG-FU GENERATIONの歩みは4人だけのものではないーー様々なゲストを迎えた25周年ライブ

アジカン25周年ライブレポ

 3月12日から2日間にわたり、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのワンマンライブ『25th Anniversary Tour 2021 Special Concert “More Than a Quarter-Century”』がパシフィコ横浜で開催された。今回は、その初日、3月12日公演の模様をレポートしていく。

 アジカンは、昨年11月に全国ツアー『25th Anniversary Tour 2021 “Quarter-Century”』を開催しており、今回の公演は、その延長線上に位置付けられたものである。筆者は11月22日のZepp Tokyo公演を観たが、その時に感じたのは、そのツアーを通して、結成以降の25年間の歩みを振り返りながらも、すでに彼らはその先の未来を見据えている、ということだった。4人は今回の公演においても、これまでの25年間を総括しながら、同時に、その先へ向けた輝かしいビジョンを高らかに示していて、とても感動的なライブだった。

 まず、新旧の代表曲を次々と披露していく前半の展開が圧巻であった。きっと、この日の会場には、長年にわたって彼らを応援し続けているリスナーが多く集まっていたのだろう。冒頭の「センスレス」と「Re:Re:」が終わった時点で、すでに会場の熱気はクライマックスのように高まっていた。続いて、3曲目の「アフターダーク」へ。タイトなビートとスリリングに加速していく展開に圧倒された。この曲に限らず、今回披露されたキャリア初期の各ナンバーは、今の4人が鳴らす最新のサウンドとして洗練されていて、シャープに研ぎ澄まされたバンドサウンドが、とても深く胸に刺さる。

 「自由に、みんならしく、声は出せないけれど、それぞれの在り方で。よろしくお願いします」という後藤正文(Vo/Gt)のMCを挟んで、近年の新たなライブアンセム「荒野を歩け」へ。後藤の言葉通り、一人ひとりの参加者がそれぞれの受け止め方、楽しみ方をしている光景は、とても美しいものだった。なお、今回の公演では、ステージ上のメンバー後方の位置に「舞台上ライブ参加型鑑賞席」が用意されていた。筆者は通常の2階席からライブを観ていたが、抽選で選ばれた数百人の参加者が、それぞれの在り方でライブを楽しむ光景は、それこそまさに、いつもメンバー4人が目にしている光景と重なる。こうした「ステージ」と「客席」という区切りが取り払われたような演出によって、通常のステージセットでは実現し得ないような一体感を味わうことができた。そして、前方と後方のファンに囲まれながら演奏する4人が、ライブ中、何度も嬉しそうな表情を溢していたのも印象的だった。

喜多建介(Gt)
喜多建介(Gt)

 「ループ&ループ」「リライト」「ソラニン」「君という花」という怒涛の4連打を経て、喜多建介(Gt)がメインボーカルを担う「シーサイドスリーピング」へ。代表曲もレア曲も出し惜しみなく連発していく今回のセットリストは、まさに、メンバー4人からファンへ向けた最大限の感謝の表れだろう。会場のファンは声こそ出せないものの、それぞれに拳を上げたり、両手を上げたりしながら、4人の想いに最大限に応えていく。筆者はこれまでに数え切れないほどアジカンのライブを観てきたが、このように、みんなで一緒にアジカンの25周年を祝い合う光景は、やはりこの時限りの特別なものだったと思う。

 ライブ後半では、これまでアジカンの音楽活動を支えてきたミュージシャンの仲間たちがゲストとしてステージに登場していった。まず、2010年の『マジックディスク』のツアーに参加した金澤ダイスケ(フジファブリック)がステージインして、5人で「夕暮れの紅」「ケモノノケモノ」を披露。金澤の軽やかなタッチが織り成すキーボードの調べが、アジカンのバンドサウンドを美しく彩っていった。

金澤ダイスケ(フジファブリック)
金澤ダイスケ(フジファブリック)

 「夜を越えて」を経て、9年間にわたりアジカンのライブを支え続け、今もアレンジャーとして彼らと一緒に作品を作り続けているシモリョー(the chef cooks me)をステージに迎え入れる。「迷子犬と雨のビート」に続いて披露されたのは、昨年の最新シングル曲にして、シモリョーが編曲を手掛けた「エンパシー」だ。緻密に施されたアレンジによって、まるで、ロックの高揚感がアップデートされたかのような音楽体験を味わうことができた。まさに、今のアジカンを象徴するパフォーマンスであったと思う。

シモリョー(the chef cooks me)
シモリョー(the chef cooks me)

 「触れたい 確かめたい」では、塩塚モエカ(羊文学)が加わり、彼女のしなやかで力強い歌声が、会場を幸福なフィールで満たしていく。そして、塩塚とバトンタッチするように、畳野彩加(Homecomings)がステージインして、共に「UCLA」を披露。可憐で儚い歌声が、楽曲の詩世界に深みと奥行きを与えていく。この日の公演によって、改めて感じたことがある。それは、アジカンの25年間の歴史は、決して4人だけのものだけではなく、同じ時代を生きるミュージシャンの仲間たちと共に紡いできたものである、ということだ。繰り返しにはなってしまうが、そうした歩みをたくさんのゲストと共に再現した今回の公演は、やはり本当に特別なものだったのだと思う。

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