こっちのけんと、乃紫、Mega Shinnosuke、Ayumu Imazu……バイラルヒットで脚光浴びた次世代アーティストたち
年々テレビの画面よりスマホの画面を見つめる時間の方が長くなってきた方も多いのではないだろうか。そんななか音楽のトレンドもテレビやラジオ発からスマホ発へと移り変わりつつある。とりわけTikTokに代表される動画SNSがヒットの火付け役となるようなケースが多く、音楽ストリーミングサービスにその人気が飛び火することで大きなバイラルヒットが生み出されている。このような音楽業界を取り巻くエコシステムの変化の波を乗りこなす新人アーティストが今年、ネットでの楽曲拡散によって口コミ式に存在感を強めてきた。ひと口に今年バイラルヒットを生んだ新人アーティストと言ってもその音楽性やスタイルは多岐にわたる。多様性の時代に相応しく、そのグラデーションの幅は驚くほど広い。一方で共通点を見出すとすればソロアーティストの多さだろうか。パーソナルなメッセージや独創的で突飛なアイデアをすぐさま形にして個人で世界に発信できるこの時代だからこその傾向なのかもしれない。本稿では、TikTokとSpotifyが共同でアーティストを応援するプログラム「Buzz Tracker」にて今年選出された“Monthly Artist”に注目。2024年を総括するこの年末のタイミングで今年バイラルヒットを飛ばした新人アーティストを総ざらいしよう。
こっちのけんと
まずは、『NHK紅白歌合戦』への初出場も決まったこっちのけんとが、その筆頭格である。マルチクリエイターとして音楽制作だけでなく、動画制作やデザイン制作も手がけるこっちのけんと。6曲目の配信シングルとなる「はいよろこんで」が今年お茶の間にまで届くスマッシュヒットとなった。サビの〈トントントンツーツーツートントントン 〉という中毒性の高いフレーズが印象的なこの楽曲。YouTubeで公開されたレトロアニメ調なMVも1.4億再生を超える大ヒットとなっている(12月25日時点)。さらにはMVのなかに登場するダンスも話題を呼んでおり「ギリギリダンス」としてTikTokを中心に振り付け動画が拡散された。楽曲の中毒性、コミカルなMV、真似して踊ってみたくなるダンス、誰かにシェアしたくなる要素が見事に揃った動画SNS時代らしいヒット曲である。
@suppokopeppoko
乃紫
こっちのけんとと同様にマルチなクリエイティビティを発揮しているのが、シンガーソングライターの乃紫である。作詞作曲から編曲のほか、映像やアートワークまで手がける多彩な才能を持ち合わせた乃紫は「全方向美少女」のヒットで今年大きく飛躍した。〈正面で見ても 横から見ても 下から見てもいい女で困っちゃう〉という自己肯定感爆上げのパンチラインが一瞬にして大きなインパクトを残すTikTokと親和性の高い楽曲である。また、すでにTikTok内楽曲総再生回数は4.8億回を突破しているこの「全方向美少女」だけでなく、「ホットレモン (feat. SKRYU) [Remix]」「先輩」といった楽曲もあわせて注目され始めており、圧倒的な瞬発力と心の隅をつくような鋭さで次の動画に進もうとスワイプする指が思わず止まってしまう。
@noa_aburasoba 自己肯定感ブチ上げる曲作ったよ
Mega Shinnosuke
Mega Shinnosukeもまたマルチな才能を爆発させるネクストブレイクアーティストだ。「メガシン」の愛称で親しまれる彼は、これまでにあいみょん、Official髭男dism、King Gnu、Vaundy、藤井 風なども選出されたSpotifyが選ぶ今後飛躍が期待される次世代アーティストプログラム「Early Noise」にもピックアップされたアーティスト。積極的に自身の楽曲をリリースしながらKing & Princeや菅田将暉、私立恵比寿中学など数々のアーティストへの楽曲提供を行うオールラウンドなミュージシャンだ。ポップな嗅覚に優れた彼が今年配信リリースした「愛とU」が、TikTokで総再生回数1億回を突破するバイラルヒットとなった。この楽曲のヒットもまたダンスの振り付けがきっかけだ。歌詞になぞらえたキャッチーなダンスチャレンジが拡散され、乗数効果的に多くの人の耳に届く結果となった。
@megashinnosuke 愛とU (Love and U)(っ'-')=͟͟͞͞❤︎ @らん 란 #megashinnosuke #愛とU #MV #음악추천
Ayumu Imazu
ダンスチャレンジによってヒットにブーストがかかったMega Shinnosukeと同様、ダンスがきっかけとなり注目を集めたのがニューヨークを拠点に活動するアーティスト、Ayumu Imazuである。ダンサーで振り付け師のTikTokクリエイター「タイガの振り付け」がAyumu Imazuの楽曲「Obsessed」に振り付けをした動画がバズを起こし、楽曲そのものにもバズが派生する「ダンス」をブリッジにしたバイラルヒットとなった。全編英詞の楽曲にもかかわらずこれほどまでのヒットとなるのは、まさに言語を超えたダンスの力であろう。多くのインフルエンサーがこのダンス動画を投稿するなか、SEVENTEEN、BOYNEXTDOOR、RIIZE、ENHYPENといったK-POPグループが本格的なダンスカバーを投稿したこともこの楽曲の魅力を最大限引き出す要素となった。
@ayumu_imazu Obsessed out everywhere now!! 발매되었습니다! 配信されました🎧#obsessed #ayumuimazu #newmusic