YUKI、観客と共有した“自由”を謳歌する幸せ ホールツアー『SUPER SLITS』ファイナル公演

 YUKIのホールツアー『YUKI concert tour “SUPER SLITS” 2024』が、12月21、22日東京・東京ガーデンシアターにてファイナルを迎えた。本ツアーは6月にリリースした12枚目のオリジナルアルバム『SLITS』を携えて行われ、8月12日埼玉・戸田市文化会館を皮切りに全国12都市を巡った。本稿では22日最終公演の模様をレポートする。

 開演時間、身体にずっしりと響く低音が場内を支配すると、暗闇の中に淡い光が浮かび〈今 此処 此処にいる私を抱きしめる〉というフレーズが聴こえてきた。アルバム『SLITS』の冒頭を飾る「Now Here」だ。ステージの中央に設置された高台にYUKIのシルエットが現れると、割れんばかりの大歓声が起こる。黒を基調としたモードな衣装に身を包んだYUKIが、ストイックなフロアナンバーを牽引していく。曲終わりの長めのアウトロからスクラッチ音を経て聴こえてきたのは、YUKI屈指のダンスチューン「JOY」。お馴染みのサビの振り付けで早くも会場全体に一体感が生まれた。

『YUKI concert tour “SUPER SLITS” 2024』

 YUKIの位置する高台は回転ステージ仕様。雪山を進んでいく映像を背景に「クライマー・クライマー」を歌い終えると、回転して出現した階段を下りてメインステージへ。大勢の観客を前に「こんなにたくさん来てくれるなんて夢みたいです。本当にうれしいです。どうもありがとうございます」と告げて深々とお辞儀をするYUKI。アルバムツアーではあるが新旧織り交ぜて披露すると話し、「誰一人残さず、いいところに連れて行きます。最後までよろしくお願いします!」と挨拶。また、「私の中の自由をめいっぱい詰め込んだアルバムなので自由に楽しんでほしい」と伝えた後、「今日はいつもよりも光ってます。スーパースターなので現実的にも光ってるんですけど(笑)、脱いでも光ってるんです」とおどけながらキラキラ光るスパンコールのジャケットを脱いでノースリーブのブラックドレスに。飛び交う「かわいい」の声を聞いて「この優しい空気の中歌っていいですか」と告げると、『SLITS』収録の「ユニヴァース」をフルートの調べをアクセントにした上質なバンドサウンドに乗せて披露。YUKIの伸びやかな歌唱も絶好調だ。久々のコンサート披露となった「コミュニケーション」では、タンバリンを片手にしたYUKIが幸福感たっぷりのボーカルで会場を満たしていく。自然と体が横へ揺れる軽やかな「鳴り響く限り」、印象的なドラムとピアノに導かれて始まった「トロイメライ」では、美しいハイトーンを響かせた。

 歪さや違和感が強烈なインパクトをもたらす幕間の映像を挟み、回転ステージ上部に3名のホーン隊、下部にYUKIが位置づくと、LEDビジョンに映るデジタルダンサーを従えて「流星slits」へ。ベビーピンクのアシンメトリーなドレスに着替え、体全体を使って会場全体を盛り上げていく。こちらも久々の披露となる「Jodi Wideman」は、巨大なミラーボールをバックに“SUPER SLITS Remix”と名付けたくなるような深遠なトラックに乗せてパフォーマンス。YUKIと観客のテンションは高まる一方だ。そこからシームレスにつながった「One, One, One」では、回転ステージ上部に電話ボックスと電灯が登場。曲の途中にYUKIが電話BOXの中へ入ると室内にはカメラが設置されており、YUKIの間近な表情をキャッチ。電話越しで観客に語りかけながらそのまま歌唱へと戻っていくという、ステージと客席の距離をグッと縮める手法がとられた。続く「雨宿り」は、メッセージ性を備えたエレクトロなダンスチューン。愛らしい仕草やダンスとともに会場の奥のほうまで目を配り、言葉一つひとつを大切に届けていく。

『YUKI concert tour “SUPER SLITS” 2024』

 階段に並んだホーン隊とともに歌詞の情景が浮かぶ「ミス・イエスタデイ」を披露すると、「素晴らしい気持ちでいっぱい。歌う喜びで満ちあふれてる。みなさんの命の輝きをいただいている。本当にありがとう」と感謝の思いを伝えたYUKI。アルバム『SLITS』は女性のスリットスカートから着想を得たこと、スリットスカートの“天邪鬼”なところが自分の書く歌詞に近いこと、そして自分自身の歌で自分自身の風通しをよくするために制作したことなどを明かし、収録曲の一つ「友達」の披露へ。メロディを聴いて浮かんだ自らのティーンエイジャー期の風景を歌にした同曲では、少しずつ歌を彩る楽器が増えていき、楽曲の情景を鮮明に呼び起こしていく。そして、ステージが回転して青い光に包まれると、「プリズム」の冒頭を飾るやさしいピアノの旋律が鳴り響く。いつ聴いても変わることのない不朽の名曲、歌詞にあわせてステージに増えていく〈光の輪〉が幻想的なムードを引き立てた。YUKIの独白のような歌が突き刺さる「こぼれてしまうよ」では、それぞれの人生への祝福を表す〈誰の上にも見えるよ 白い紙吹雪〉の歌詞が現実となる場面も。エモーショナルなムードの中、YUKIは演奏を残してステージ袖へと走り去っていった。

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