トゲナシトゲアリが全速力で駆け抜けた2024年を総括 『ガルクラ』の看板を守り、そこから飛躍したバンドの成長譚

トゲナシトゲアリ、2024年を総括

 2024年のテレビアニメ放送に向けてひと足先に活動を始めた、『ガールズバンドクライ』の劇中ガールズバンド・トゲナシトゲアリ。彼女たちは2023年初夏から楽曲リリースを始めることで、バンドのカラーはもちろんのこと、『ガールズバンドクライ』の世界観を我々に伝えていく。ある種、アニメ放送が始まる前までに『ガールズバンドクライ』という看板を守り続け、人々に周知させることがトゲナシトゲアリの使命だったとも言える。

TVアニメ『ガールズバンドクライ』ノンクレジットオープニング|トゲナシトゲアリ「雑踏、僕らの街」
TVアニメ『ガールズバンドクライ』ノンクレジットエンディング|トゲナシトゲアリ「誰にもなれない私だから」

 そういう意味では、今年3月16日に開催された1stワンマンライブ『薄明の序奏』(※1)はトゲナシトゲアリにとって、アニメがスタートするまでの活動におけるハイライトだった。デビューから1年に満たない新人バンドが、アニメの全貌が明らかになる前に1000人規模の会場で単独ライブを実施することは無謀なこと。持ち曲だってこの時点では10曲程度と、心細さもある。しかし、情報が少しずつ公開になるにつれ、アニメファンからの注目が集まり始めていた話題作にケチをつけるようなライブは絶対にできない。そう、この日は初ワンマンながらも絶対に失敗の許されない勝負の公演だったのだ。

 しかし、いざ蓋を開けてみれば会場は満員。既発の10曲に加え、アニメのオープニング&エンディング主題歌「雑踏、僕らの街」「誰にもなれない私だから」を初披露したほか、アニメの冒頭パートをここで初公開するなどして、オーディエンスを大いに喜ばせた。もちろん、ステージに立った5人のメンバーもキャラクターを背負いながら、そのときのベストを尽くした最良のライブを展開。理名(Vo/井芹仁菜役)がMC中、会話の流れを見失ってしまい、ほかのメンバーがサポートするというハプニングも新人バンドらしかったが、それ以外の場面で見せたパフォーマンスや佇まいは、すでに「プロデビューしたアーティスト」そのものだった。

 このライブの成功が『ガールズバンドクライ』の人気にどれだけ拍車をかけたのかは、正直わからない。しかし、放送が始まる前から『ガールズバンドクライ』やトゲナシトゲアリに注目していた人たちにとっては、「自分たちの判断は間違ってない!」と強く確信させる1日だったことだけは断言できる。

 テレビアニメがスタートした4月以降、トゲナシトゲアリはそれ以前に発表した楽曲をまとめた1stアルバム『棘アリ』を皮切りに、先の「雑踏、僕らの街」「誰にもなれない私だから」をはじめとするアニメの主題歌や挿入歌を次々にシングルとしてリリース。放送が進むにつれて『ガールズバンドクライ』の人気はどんどん高まっていき、それと同時にトゲナシトゲアリの楽曲にも注目が寄せられ始める。セールスはもちろんだが、サブスクでの新曲や過去曲の再生数も伸び始め、気づけば海外にまでその人気は波及し始めていた(※2)。

 6月末のアニメ最終話放送を機に、トゲナシトゲアリは『かわさき100フェス』(6月29日)からライブ活動を再開。凪都(Key/海老塚智役)と美怜(Dr/安和すばる役)の活動休止という予期せぬ困難に直面するも、理名や夕莉(Gt/河原木桃香役)、朱李(Ba/ルパ役)の3人で活動を続け、8月30日にはアニソンの祭典『Animelo Summer Live 2024 -Stargazer-』という大舞台にも立ち、ここでの大歓迎ぶりから『ガールズバンドクライ』の成功を実感することとなる。

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