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総決算!音楽トピック2024

 リアルサウンドでは特集『総決算!音楽トピック2024』をオープン。

 2024年を振り返ると、多数の気鋭アーティストがデビューや躍進を遂げ、
ストリーミングヒットが新たな音楽トレンドやバズを生み出した一方、
ドームクラスの大規模公演から海外公演の増加に至るまで、ライブシーンもさらなる活況を呈した。
また、国内外でベテランアーティストの再始動や再結成が立て続いたことで、
往年のファンにとっても嬉しい1年になったと言えるだろう。

 本特集では「J-POPライブのアジア進出」「“TikTok発”新星が躍動」「マネジメント新勢力の台頭」
「ドーム・スタジアム級ライブ続々」「ストリーミングヒットの多様化」「再始動/再結成で蘇る記憶」
という6つのトピックを立てながら、アーティストインタビューを続々と展開。
コラム記事も交えて、2024年の音楽動向を総括していく。

J-POPライブのアジア進出

 J-POPアーティストの海外公演が活発化している。2024年は特にアジアでのライブが盛り上がり、King Gnu、YOASOBI、Official髭男dism、羊文学、imase、Eve、milet、なにわ男子、Travis Japan……など、幅広いアーティストが初のアジアツアーへ乗り出した。また、2度目のアジアツアーを成功させた藤井 風をはじめ、LiSAは6年ぶり、Perfumeは5年ぶりにアジアツアーを開催。宇多田ヒカルは初のアジア単独公演を台北で成功させ、乃木坂46は約6年ぶりの香港単独公演を成功させている。ストリーミングサービスによって新旧のJ-POPが発見されてグローバルヒットし、各地域でファンの存在が顕在化してきたことで、今こそアジアに勝機を見出しているアーティストも多いだろう。2025年にはMrs. GREEN APPLEや米津玄師も海外公演を控えており、こうした動きはさらに加速していきそうだ。

「TikTok発」新星が躍動

 2024年もTikTok発の新人アーティストが、日本の音楽シーンを席巻。“ダンス動画”を起点とした曲としては「はいよろこんで」の大ヒットにより、こっちのけんとが『第75回NHK紅白歌合戦』への出場が決定。KOMOREBI「Giri Giri」は『TikTokトレンド大賞2024』大賞を受賞した。そのほか、edhiii boi「おともだち」、Mega Shinnosuke「愛とU」、Ayumu Imazu「Obsessed」など、多彩な音楽が日本中を踊らせた。また昨年に続き、CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」、乃紫「初恋キラー」など、“自己肯定感の向上”に繋がるようなヒット曲も続々登場。AKASAKI「Bunny Girl」や友成空「鬼ノ宴」ら若き才能も台頭した。2025年も引き続き、TikTokがヒットソングの発信地となり、まだ見ぬニューカマーがJ-POPを盛り上げるだろう。

マネジメント新勢力の台頭

クラウドナインに所属するAdoは「うっせぇわ」で鮮烈なデビューを飾り、今や日本の象徴とも言える存在となった。SKY-HIが代表取締役CEOを務めるBMSGは、自分らしく才能を開花させるための場所としてのマネジメントを展開し、短いタームの中でドームアーティストを育て上げた。LAPONEエンタテインメントによってK-POPの方法論を踏襲したサバイバルオーディションから誕生したJO1、INI、ME:Iらの旋風も凄まじい。滝沢秀明が立ち上げた新たな事務所 TOBE、アソビシステムによるアイドルプロジェクト KAWAII LAB.、ソニー・ミュージックエンタテインメントがマネジメント機能とレーベル機能を両立させたEchoes――。これらの組織が生まれ、そして新旗手として台頭したのは、今からたった5年内の話である。なぜ、この短期間の中で大きな力をつけることができたのか。なぜ、新たな音楽とアーティストの在り方を提案できたのか。そして、なぜ日本の音楽市場の歴史に誰も体験したことのない音楽とアイデンティティを名実ともに刻むことができ得たのか。日本の音楽の行き先、その舵を取るのは、彼らによる新時代の力なのかもしれない。

ドーム・スタジアム級ライブ続々

 2024年のライブ/コンサート業界は、長らく続いたコロナ禍の余波から本当の意味で復活を遂げた。屋内施設としては日本最大の収容人数を誇る東京ドームでの音楽ライブイベントの開催日数が過去最多の89日にのぼる見通しであることが発表されたように、ドーム会場でワンマン公演を行うアーティストが多発。またNissy、BUMP OF CHICKENら周年組からKing Gnu、BE:FIRSTといった初開催組までドームツアーとして全国を巡ったアーティストも目立った。さらに、スタジアム級のワンマン公演の活況も特筆すべき点だ。その顔ぶれはアイドルやK-POPらグループ勢だけではなく、Mrs. GREEN APPLE、ONE OK ROCK、藤井 風といったバンド/ソロアーティストらにまで及ぶ。エンターテインメントにおいて“体験”が求められる今、アーティストたちが自身最大規模の会場での単独公演を行う流れは、来年以降も続いていくだろう。

ストリーミングヒットの多様化

 2024年もストリーミング経由でのヒット曲が多数誕生した。サビのワードが広く浸透したKOMOREBI「Giri Giri」やこっちのけんと「はいよろこんで」、年内最後の世界的ブームとなったROSÉ(BLACKPINK)×ブルーノ・マーズ「APT. 」などのTikTokでのダンス動画をきっかけとしたヒット曲の他、弾き語り動画に注目が集まったtuki.「晩餐歌」、自己肯定感を高めるメッセージを含んだ乃紫「全方向美少女」、コレサワ「元彼女のみなさまへ」、CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」といった女性アーティストたちの楽曲がTikTokからバイラルヒットしたのも今年の傾向と言えるだろう。また、Omoinotake「幾億光年」、米津玄師「さよーならまたいつか!」やaiko「相思相愛」など、ヒットの定石であるドラマ・アニメ主題歌からもさまざまな話題作が誕生したが、ダンスの要素も加わったことで海外で火がつき、国内人気も加速したCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今年最大のヒット曲に。「ライラック」をはじめ7曲を配信リリースしたMrs. GREEN APPLEは、過去曲も含めてストリーミングヒットを連発した。一方で今年1年で聴かれた楽曲を振り返る各種チャートではVaundy「怪獣の花唄」やYOASOBI「アイドル」などロングヒットの楽曲も目立ち、来年以降も「その年のヒット曲=新曲であるとは限らない」という前提がより進んでいくことが予想される。

再始動/再結成で蘇る記憶

 多くのアーティストやバンドが再始動や再結成を果たし、音楽シーンに新たな息吹をもたらした2024年。西野カナの復帰は時代を越えて愛されるポップスの力を改めて証明し、Aqua Timezは再結成によって時代の変化を超えた普遍的なメッセージを再提示。清 竜人25は唯一無二のコンセプトを再構築し、進化した姿を見せた。一方、海外ではOasisの再結成が長年のファンの夢を叶える形で話題をさらった。これらの動きはもちろん、単なる懐古ではない。過去の栄光に寄りかかるのではなく、いかに現代の音楽シーンで存在感を発揮するのかーーその姿勢が多くのリスナーに“再始動”の意義を問いかける。活動休止や解散を経て、再びステージに立つ決断の裏には、音楽への情熱と、新しい時代を切り拓く覚悟が宿っているのではないだろうか。今年の再始動・再結成は、その意味を深く考えさせる象徴的な年となった。