RADWIMPS×新海誠が築いた音楽とアニメの蜜月 『天気の子』地上波初放送を機に捉え直す、良質な相乗効果
本日1月3日、新海誠監督による映画『天気の子』が地上波で初放送される。映画が公開された2019年時点で“抗えない事象によって変わりゆく世界”を描いていたこの作品が、コロナ禍という困難に直面しながら生きる現在の我々のもとへ運ばれる意義はあまりにも大きい。そんな『天気の子』を語る上で欠かせないのが、劇中で鳴り響くRADWIMPSの音楽だ。
『君の名は。』(2016年)でもインストゥルメンタル含めて劇中音楽を全曲担当したRADWIMPSだが、『天気の子』でも31曲に及ぶ楽曲を制作した。バンド形態にとらわれることなく、様々なアプローチで作られたインスト曲はもちろんのこと、ボーカル入りの主題歌は5曲にも及び、映画を形成する大きな要素となった。物語が動き出す予感が漂う「風たちの声 (Movie edit)」、晴れゆく空のショットに重なる「祝祭 (Movie edit) feat.三浦透子」など、その映像の意味や登場人物の描かれていない心情を深く掘り下げていく曲ばかり。ダイジェスト的な場面の連続を劇的に演出しているのだ。
終盤に流れる「愛にできることはまだあるかい (Movie edit)」や「大丈夫 (Movie edit)」といった楽曲もシーンを大きく躍動させ、心を揺さぶる。台詞やアニメーションそのものでも登場人物の感情は十分伝わってくるが、それを数段階押し上げるのがRADWIMPSの演奏と野田洋次郎の歌声だ。それはもう1人の登場人物かのように、語り部として物語を押し進めるかのように存在感を示すRADWIMPSの音楽は、単なるBGMにとどまらない重要な役割を果たしている。
本作の主題歌でも特に印象的なのは「グランドエスケープ (Movie edit) feat.三浦透子」だろう。インストかと思わせるような金属音の瞬きから徐々に曲の輪郭が生まれる。そして、アニメーションと連動しながら至上のサビへ向かって駆け抜けていく壮大な1曲だ。映画がなければ生まれなかったであろう楽曲構成であり、この曲調でなければ演出できなかったシーンがそこにある。音楽と映像が一体となり、映画全体を大きくうねらせるこの楽曲と場面は、RADWIMPSと新海誠による丹念な共同制作の賜物だろう。主人公とヒロインの想いを飛び越えた超常的な祈り、観客の心情をも巻き込んで高揚するような最後の合唱に伴うシーンは間違いなくハイライト。今回の地上波初放送でも、多くの視聴者が息を飲んで見守る瞬間になるはずだ。