くるり 岸田繁×氣志團 綾小路翔、フェス主催アーティスト赤裸々対談 コロナ禍による中止から2022年の開催まで

岸田繁×綾小路翔赤裸々フェス対談

“バラエティに富んだ”ブッキングは直接的には集客につながらない

──では今年、2022年はいかがでしょう?

岸田:2020年、2021年と開催できなくて、「2022年、できるかなあ」って言ってたら、「あれ、できるんちゃう?」みたいな感じで準備を始めたのが、今年に入ってから。ただ、ブッキングは例年以上にすごく苦労しました。

團長:うん、うん。

岸田:みんなそれぞれやっぱり、思うところがあるんですよ。僕が尊敬しているあるアーティストの方にも声をかけたんですけど、「自分は今この現状で、フェス出演に関してはこう考えているから。こういう事情や関係とかもあるから、今年は出られない」って。それが、自分にとっては大きくて。だいたい、「あ、ここに出るからここには出ないんですね」とか、「このアーティストは次にこういう動きをするから、今年はこうなんですね」とか、傾向とかがあるし、長く業界にいるとなんとなくわかるじゃないですか。今はそれがそれぞれの事情になってきている、というか。だから、実はこんなにブッキングに苦労した年はない、っていうぐらいです。

團長:僕らは、一昨年に声をかけたけど、かなわなかった方たちを中心にブッキングしました。みなさん「もちろんだよ」と言ってくださったんですが、やっぱりそれぞれの予定が変動しまくっていて。ツアーが飛んで、ブッキングし直して、やっと動けるようになったから、みんな同じ時期にツアーが入っていたりとか。まさに今年の9月17・18・19日も、各地でフェスがいっぱいあるので、そういう意味でも大変で。あとは、うち的にいちばんの問題は、メインスポンサーが下りてしまったこと。

岸田:ああー……。

團長:やっぱり、協賛いただいている企業さんたち、どこもこの2年きつかったんだろうな、って。あと、外資の会社は戦争でダメージを受けていたりとか。

岸田:ああ、ありますよね。

團長:だからとにかく本当にみなさん来てください! っていう感じなんですけど(笑)。あと『氣志團万博』が何年も大変だったのは「バラエティに富んだ」って言われるブッキングが、実は直接的には集客につながらない。

岸田:そうですよねえ。

團長:武道館クラスの人が10組出たら、100000人来るかと思ったら集まらない。それより、普段500人キャパでやってるけど、熱い仲間たちが10組集まったら余裕で20000人来る、っていうふうに、ジャンルがしっかり決まっている方が直接集客につながる。そりゃあ全国各地のフェスのメンツはこうなるよね、って。各地のフェスを見ていると、ターゲットも20代から30代前半までって決めてるんだろうな、っていうラインナップですしね。もしくはそうじゃないキャンプ系のフェスとの2種類に分かれていて。そんな中で、「でも、おもしろいアーティスト、いっぱいいるんだけどなあ。みんなにいろんなものを観せたいなあ。僕は子供の頃に、よくわからないままいろんなものを聴いていたおかげで、今こんなに人生豊かだよ?」っていう、おせっかいなんですよね。

岸田:そう、僕らも同じです。

團長:ようやくこの数年間で、それを楽しんでくれるお客さんが増えてきた。「誰が出るかわかんないけど、今年も行こうぜ」みたいな。2年空いた分、「待ってたよ」って言われる機会が増えて。前は「メンツによっては『氣志團万博』、干す」って言われることもあったんですけど(笑)。

岸田:はははは。

團長:でも今回は「帰って来てくれてありがとう」と思ってもらえてることが嬉しくて。2年できなかったのも、悪かったことばかりじゃないなって思いながら、間もなく開催を迎えます。

──では最後に、フェスをオーガナイズしているミュージシャン同士として、お互いに聞いておきたいことがあれば。

團長:僕の方から聞きたいのは、やっぱりブッキングですね。それこそミスチル、どうやって呼べるんだろう? って。

岸田:対バンに一回誘われたんですよ。

團長:なるほど!

岸田:誘われたのがけっこう意外で。僕は「売れてる人、なんか怖い」って、いまだに思うんですけど(笑)。

團長:うん、うん(笑)。

岸田:でも、呼ばれて行ったら、すごくホスピタリティが良くて。僕らは超アウェイでしたけど、まずお客さんがあったかい。さらにミスチルは演奏が終わって打ち上げで一緒に飲んでくださって。で、僕らがハイエースで会場から出る時に、考えられないくらい出待ちのお客さんが待ってるわけなんですよ。もしかしてミスチルと間違えられてるかもと思ったから、窓を開けて「くるりです」って会釈したんですよ。ほんならもう、全員整列して「ありがとうございました!」みたいな感じで。本当にいいファンがついていて。それもあったんで『音博』でお声がけさせていただいて、僕らが一回出たからなのかOKしてくださって。ライブもすばらしかったです。

團長:そうか、まずミスチルから声をかけられてるんだもんね。そこだな! 僕、JEN(鈴木英哉/Dr)さんしか知らないんで。JENさんに相談すると「翔やんごめんな……俺、権限ないんだ……」しか言わないんですよ(笑)。

岸田:でも『万博』も大物の方、いっぱい出てるじゃないですか。

團長:うちは基本バカみたいに何も考えずにチャイムを押すっていうことを、ただくり返し続けて来ただけです。「あれ? あいつこないだ追い返したのに、なんでまた来たんだろう?」っていう。

岸田:はははは。

團長:ダメって言われても、「来年は?」「いや、来年の予定はまだ出てないんで」「じゃあまた来年来ます」みたいなことをくり返し続けて、何回目かでちょっとだけドアが開いた瞬間に、新聞の勧誘のおっさんみたいにバンと足をはさんで、「すみません、お話だけでも!」みたいな(笑)。あとは超遠いところから攻めたり。

岸田:ああ、ああ。

團長:わらしべ長者のようにつないでいってもらって辿り着くとか。それしかないなあ、と思って(笑)。

岸田:まったく一緒ですね(笑)。

『京都音楽博覧会2022』公式サイト
『氣志團万博2022』公式サイト

コロナ禍を経たフェスの今

2020年、新型コロナウイルスの流行により開催延期や中止に追い込まれた音楽フェス。オンラインの活用や様々な制限下の中で新たな形を…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる