宇多田ヒカルが2022年に見せた飽くなき姿 コーチェラ出演や積極的な国内メディア露出を振り返る

宇多田ヒカル、2022年の活発な動き

「いろんなところに、いろんな人にちょっとずつ頼るみたいなことが、本当は依存の逆の定義なんじゃないかなって思って」

 8月6日、『ライブ・エール2022』(NHK総合)に出演した宇多田ヒカルが「BADモード」に込めた思いをこう明かした。今年発表されたこの曲は、同番組で「大切な人を亡くしてる経験を踏まえると、私だったら大事な人がそう思っているなら言ってほしいなって思う」とも話していたように、“調子の悪い時期”にいながらも周りに気を遣って誰にも頼れずにいる相手に対して寄り添う姿勢を見せる一曲だ。最愛の母の死という大きな喪失を経験した彼女だからこそ説得力のある歌だと感じる。そんな彼女が話すこの言葉には、ある特定の何か一つに依存することからの対処法的な考え方が隠されているように感じた。

 このテレビ出演をはじめとして、2022年の彼女の動きは今までになく活発だ。今年1月には通算8枚目となる新アルバム『BADモード』をリリースし、自身の音楽史をまた一歩前へと進ませた。一方で、過去の全アルバムをアナログ盤再発&初アナログ化するなど、彼女にとってこれまでの活動のある種の総括的な年になっているとも言える。なかでも印象的だったのが4月の『Coachella Valley Music and Arts Festival(コーチェラ・フェスティバル)』への出演だ。

 日本時間4月17日、米カリフォルニア州インディオで開催されている世界最大級の音楽フェス『コーチェラ・フェスティバル』のメインステージに登場した宇多田は、アジアのカルチャーを発信するプラットフォーム・88risingの一員として「First Love」「Simple And Clean」を含む4曲を披露。とりわけ「Automatic」の導入で観衆に向けて「Let's go back to '98!(1998年に戻りましょう!)」と言い放ったシーンには感慨深いものがあった。1998年に日本でデビューし一世を風靡してから常に音楽シーンのトップランナーであり続け、活動休止を経てもなお進化を見せている彼女が、日本ひいてはアジアを代表する世界的アーティストの一人として名実ともに認められた瞬間であったように思う。

 そうした上半期を経て、今夏はまずカルティエの限定ジュエリーコレクションのキャンペーンムービーに出演。映像にはアルバム収録の「Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-」が使用され、気品漂う現代的かつ優雅な世界観に、彼女の洗練された音楽が見事に花を添えている。

「CARTIER TRINITY FOR CHITOSE ABE OF sacai」 with Hikaru Utada

 さらに7月21日には、表参道のWALL&WALLにて開催されたシークレットイベントにサプライズで登場。同曲や「BADモード」のサウンド面を大きく担うFloating Pointsが繰り出す先進的かつ幻想的な音世界の中で、彼女の伸びやかな歌声が美しく響き渡った。

 
 
 
 
 
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 “来日”して人前で生歌を披露するという点でももちろんレアではあるが、キャパ200人ほどのこの小さな会場で歌うというシチュエーションもまた彼女にとっては珍しい。そういう意味ではかなり変化に富んだ一年だ。

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