『温泉むすめ』プロデューサー 橋本竜、コロナ禍で直面したプロジェクトの危機 温泉地と共に歩む再生の道のり
『温泉むすめ』が、9月11日に福島県・飯坂温泉にてイベントを開催する。本イベントでは、吉岡茉祐(飯坂真尋役)、篠田みなみ(道後泉海役)、澤田美晴(塩原八弥役)、山根 綺(三朝歌蓮役)が登壇し、それぞれのソロ曲パフォーマンスやトークを予定している。
現在も猛威を振るう新型コロナウイルスの流行に伴い、観光事業と密接に関わる『温泉むすめ』も大きな影響を被り、事業規模の縮小を余儀なくされた。そんな苦しい状況の打破、地方創生のために各温泉地と密に意見交換を交わし、再生の道を模索してきたという。リアルサウンドでは、『温泉むすめ』総合プロデューサーの橋本竜氏にインタビュー。2020年に始まったコロナ禍以降に『温泉むすめ』に起きた出来事を振り返りながら、地方の温泉地が置かれたリアルな状況と、今後の展望について話を聞いた(編集部)。
リストラ、不採算事業の見直し…売上8割減で転換迎えたビジネスモデル
――『温泉むすめ』のプロジェクトは2017年3月に本格的にスタートし、地域創生と地域活性化のために全国の温泉地と手を組んで様々なイベントを行なってきました。そして2020年にコロナ禍になり、状況はどのように変わったのでしょうか?
橋本竜(以下、橋本):まずは我々が軸にしていた、集客イベントを打って地方の魅力を発信しながら送客することが出来なくなりました。コロナになってビジネスモデルの転換を迫られたわけです。
――全国の観光地の集客が著しく減ったように、温泉地も苦しい状況になりましたよね。
橋本:『温泉むすめ』を活用いただいている宿泊施設や事業者の中にも、コロナによって撤退したり倒産されたところもありました。事業を存続させるために銀行から借り入れをして頑張っていらっしゃいましたが、元本の支払いをしなければいけないタイミングになっています。これからより苦しい状況がくると予想されます。そういった意味では、当時も大変でしたけど、今後はさらに深刻な状況になると思います。
――コロナによって大きな打撃を受けたわけですが、それに対してどのような対策をされましたか。
橋本:1番はビジネスモデルの見直しです。とは言いつつ、我々のビジネスが難しくなったから「もう『温泉むすめ』はやりません」というのは非常に無責任かなと思っていますので、温泉地に対しての向き合いも変わらずに続けています。やはり、運営会社が存続しないと『温泉むすめ』のプロジェクトが継続できませんので、弊社でも大胆なリストラをしましたし、不採算事業の見直しなどを含めて規模も縮小しました。あと、大きなところではイベントを打つこともしばらくは諦めました。
――コロナ前と比べて、売り上げはどのくらい変わりましたか?
橋本:売上でいうと8割減ですね。
――そんなに大きなダメージを受けたんですね。
橋本:前回のインタビューで「色々な展開を考えています」とお話ししました。当時は売り上げがある程度立っていたからこそ、仕込みが出来たのですが、コロナ禍になり「もうイベントは出来ません」と言われた瞬間から、イベントを開催する前提で仕込んでいた一連の展開が一気に崩壊しました。そんな中、我々が行なった対策はいくつかあります。まず、イベントの代わりに個人で温泉地に行った方が満足できるように、現地で購入できる『温泉むすめ』のグッズの種類や展開エリアを増やしました。それと社内で新しい事業部を立ち上げました。オリジナルのキャラクターコンテンツを0から立ち上げて自社のみで単独で運用してきたことで、なかなか得られない知見と経験が広がったかなと思っています。その運用経験を生かしてキャラクター活用のコンサルティング業務を始めたんです。それによって新しい売り上げが立って、今はなんとか会社が成立している状況です。
――温泉地と手を組んで宿泊プランの提案もされましたね。
橋本:コラボ宿泊プランは今もすごく人気で、週末は予約で埋まることもあるそうです。元々、『温泉むすめ』はロイヤリティフリーでキャラクター使用料もかからない。だからこそ、基本的には受け身だったんです。温泉地の方からご連絡をいただいて、それを打ち返すのがコロナ前までのやり方でした。もちろんイベント事業が忙しかったのも大きな要因です。しかし今は、もっと温泉地とリレーションを深めながら、宿泊プランを考案したり、新しいグッズを作ったり、スタンプラリーを含めて個人で楽しめるキャンペーンを提案したり、PR活動にも注力するようになりました。やっぱり温泉地が存在しないと、『温泉むすめ』はおろか運営も存在しないわけですから。あと宿泊チケットを前売りで販売して、お客様の好きなタイミングで温泉旅館に行けるクラウドファンディングにもトライしました。
――『温泉むすめ』3周年を記念して寄せられた温泉地からのエールの言葉には、これまで一蓮托生で業界を盛り上げてきたからこその絆を感じました。
橋本:ありがとうございます。『温泉むすめ』は温泉地と一緒に盛り上げていく「温泉地プラットフォーム」なんです。そういった意味では地方の方と真摯に向き合って、課題解決をしてきた証だと思っております。