水野あつ、音楽を通して示し続ける“生きる理由” ミュージシャンとしての信念と感謝を伝えた1stワンマンレポ

水野あつ、1stワンマンレポ

 シンガーソングライター 水野あつが8月14日、1stワンマンライブ『僕の生きる理由』をSpotify O-WESTにて開催した。同公演のチケットは発売から瞬く間にソールドアウト。水野あつの貴重な初舞台を見守るべく、会場には彼のグッズや定番カラーでもある水色のアイテムを身につけたファンが集まった。

 開演前、水野のルーツであるクラシックピアノ曲の場内SEに耳を傾けながら、彼の登場に期待を膨らませる観客たち。ライブへの入り口となるオープニングムービーが流れ、会場が水色のライティングに満たされる中、バンドメンバーに次いで水野あつが登場した。記念すべき初ライブの一曲目に選んだのは「キュクノス」だ。バンドサウンドにより力強さが増したダンスロックチューンに会場の熱気も上がる。ボーカルにはやや緊張の色が垣間見えるものの、スタンドマイクを両手で握りしめ、しっかりと歌声を届けていく。そして、そんな彼の初めてのステージを手拍子で盛り上げるファンの空気感が温かかった。

 続けて披露した「もしも流れ星が落ちたら」では、スタンドマイクからハンドマイクに切り替え、会場を広く見渡しながらはにかむ笑顔が愛らしい。3曲目に披露された「信じることが怖い」は、“不登校”に悩む主人公の独白のような歌詞が印象的だ。そんな繊細な楽曲とは打って変わり、バンドサウンドの強靭なアンサンブルを見せたのが「プレストアパショナート」。ライブバージョンにアレンジされたイントロは、キーボードを自ら演奏する水野あつを含め各バンドメンバーが巧みなソロプレイを見せ、まるでインストゥルメンタル曲の様相で観客を魅了。キーボードから離れた水野あつは、その熱量を乗りこなすように力強いボーカルで最後まで駆け抜ける。

 ここで一旦バンドメンバーが退場し、水野あつのキーボードによる弾き語りセクションへ。MCでは、3年前に音楽の道に進むと決心して上京し、不安な気持ちがある中で活動を続けてきたが、今回観客と対面したことで改めて自分の選択が間違いではなかったと思えたと語り、ステージ上で喜びを噛み締める。

 MCで「普段は一人ぼっちで曲を作っている」と彼はこぼしていたが、不思議とバンド形式でボーカルに徹している時よりも、一人でキーボードと向き合っている方が肩の力が抜けているように感じる。そして、優しいピアノのイントロで始まったのは水野あつの代表曲「生きる」。この曲も「信じることが怖い」と同じく、引き篭もりで学校に行けない主人公が登場する。2019年から“優しい音楽”を掲げて活動をスタートした水野あつの楽曲は、社会や学校に上手く馴染むことができない、生きる上で困難に直面している人々を肯定し、温かく包み込むような歌で溢れている。背中を押すでもなく、答えを出すでもない。ただただ聴き手の心情に寄り添いたいというスタンスが、水野あつの音楽の魅力であり、共感を呼ぶ理由なのではないだろうか。

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