水野あつ、音楽を通して示し続ける“生きる理由” ミュージシャンとしての信念と感謝を伝えた1stワンマンレポ
そこから「でもね」「過去に戻れたら」と弾き語りで柔らかなボーカルを響かせた後、バンドメンバーが再びステージに登場しライブは終盤戦へと突入する。「たいたいな」では跳ねるようなドラムとギターで軽快なダンスロックを展開し、その勢いのまま「独り夜がり」へ。開演直後の緊張はどこへやら、無垢な笑顔で観客とコミュニケーションを取りながら、拳を掲げて煽るなど会場の一体感もどんどん増していく。
ここまでのロックチューンから一変、「ブルーベリーナイト」では肩の力を抜いてピースフルな空気感を演出。チルな音像と小気味いいラップ調のボーカルで紡がれる失恋ソングは、水野あつのソングライターとしてのレンジの広さを感じさせる。あともう一つ、彼の魅力をあげるとすれば、歌詞のピュアさ=透明感だろう。「ハルをたどって」で展開する思春期のある一瞬をパッケージしたような瑞々しい物語は、学生世代にとっては現体験であり、大人にとっては懐かしい記憶を呼び覚ます。そしてラストナンバーの「ソノラ」が演奏され、初恋の終わりのような切ない余韻と清々しさを心に残しながらライブ本編は幕を閉じた。
観客の手拍子に呼び込まれ、アンコールでステージに登場した水野あつ。バンドメンバーを紹介し、和気藹々とトークを繰り広げた後、SNSから火がついた人気曲「知りたい」を披露。そして最後のMCでは、再び観客に感謝の気持ちを伝え、本ライブで最後に演奏したいと決めていたという「カーテンレール」へ。3年前に上京した頃、格安アパートに住みながら音楽を作り、不安と期待の入り混じる等身大の思いと夢を詰め込んだ原点の曲でライブは感動的なラストを迎えた。
ライブタイトル『僕の生きる理由』には、命が尽きるまで音楽を作り続けたいという彼自身の信念と、そこから生まれた楽曲が誰かの生きる理由になってほしいという願いが込められている。自分のためでなく、すべては聴き手のために。シンガーソングライター 水野あつは、その原動力を持って、これから先も“優しい音楽”を生み出し続けていくのだろう。最後に余談だが、途中MCで水野あつが普段ファンからSNSで「可愛い」と評されることを受け、「可愛いより、これからはカッコよくなりたい!」と宣言していたが、彼が思い描くステージ上における理想のアーティスト像を2ndライブで観たいと思ったことも記しておく。