Kenta Dedachi、豊かな感性が生み出す独創的なメロディライン あらゆる壁を越えて響くポップソングとしての可能性

Kenta Dedachi、ポップソングの可能性

 ジャンル、国籍、言語、ジェンダー、世代。様々な壁を越え、グローバル/ダイバーシティという概念をナチュラルに体現しながら、誰もが楽しめるポップミュージックへ結びつける。今の時代に必要なのは、こういう音楽なのだろう。

 Kenta Dedachi。アメリカと日本を行き来し、いろいろな文化や人と触れ合いながら生み出される音楽性によって確実に注目度を高めているZ世代のシンガーソングライターだ。1999年に長崎で生まれ、千葉で育ったKentaの音楽の原点は、幼少期に所属していた聖歌隊。賛美歌を大勢で歌うことの喜びを味わった彼は、10代初めからギターを弾きはじめ、数々のワーシップソングのほか、エド・シーラン、テイラー・スウィフト、ジャスティン・ビーバーといったアーティストのカバーをYouTubeにアップ。10代らしい瑞々しさと10代とは思えない奥深さを感じさせる歌声は世界中のリスナーを魅了し、Kenta自身もさらに音楽にのめり込んでいく。

Anyone / Justin Bieber - エニワン(ジャスティン・ビーバー)

 オリジナル曲を作りはじめたのは17歳のとき。フォーク、カントリー、R&B、ヒップホップ、ジャズ、エレクトロなどが自然に混ざり合ったサウンドやアレンジ、そして彼自身の等身大でポジティブな感情が反映された日本語と英語のハイブリッドと言える歌は、早耳の音楽ファンの間で話題となった。2019年にリリースされたアルバム『Rocket Science』は、Kentaのピュアな感性とルーツに根差した独創的なサウンドが一つになった、聴き応え抜群の作品だ。

 そして2022年春には、Kenta Dedachi名義での活動が本格的にスタート。配信シングル「Fire and Gold」でメジャーデビューを果たした。東京国際工科専門職大学、大阪国際工科専門職大学、名古屋国際工科専門職大学のCMソングに起用されたこの曲は、ネオソウル〜ファンクリバイバルの潮流をアップデートさせた楽曲。自然と身体を揺らしたくなるフロウ、〈I found better of me/When I was around you and me/世界で待ち合わそう/最寄駅なノリでさ〉に象徴される前向きなバイブレーションを感じさせるリリックを含め、彼の音楽世界がポップに広がっていることを示すナンバーだ。プロデュースは、ブラジル出身の音楽プロデューサー・Renato Iwai。ブラジル系のトップミュージシャンが参加し、心地よくグルーヴするベース、美しいレイヤーを描くシンセ、軽快なギターカッティングによってKentaのボーカルの魅力を際立たせている。

Kenta Dedachi - Fire and Gold (Official Music Video)

 5月にはメジャー2ndシングル「Jasmine」をリリース。映画『20歳のソウル』のために書き下ろされた英語詞のバラード曲だ。

 市立船橋高校吹奏楽部を舞台に、応援曲「市船soul」を作曲した高校生・浅野大義(神尾楓珠)の生涯を描いた本作。「Jasmine」は劇中で流れる「Jasmine〜神からの贈り物〜」にオマージュを捧げる形で制作されたという。冒頭は大らかにして神聖な響きをたたえたピアノの旋律、そして〈Do you hear the song?〉というライン。さらに壮大なバンドサウンドとクラシカルな弦楽器が重なり、ドラマティックな展開へとつながる。軸になっているのはもちろん、美しさとスケールの大きさを兼ね備えたKentaのボーカル。まるで賛美歌のような雰囲気を持ったメロディは、彼自身のルーツとも結びついている。

Kenta Dedachi - Jasmine (Official Music Video)

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