“特別”から“いつも”のフジロックへ 2020年中止の決断、今年のラインナップの狙いまで運営スタッフに聞く

“いつも”のフジロックへ、運営インタビュー

今年のブッキングの経緯、Cornelius出演発表について

ーーそして今年のフジロックでは国外アーティストがついに出演します。2022年には海外のアーティストを呼べるかも、という気配はいつ頃から見えてきたんですか?

藤川:ある程度見切り発車しないと交渉事は進まないですからね。しかも同じ開催タイミングで『ロラパルーザ』など海外フェスとも日程がかぶっていたので、もう早めに動いていかないといけない。特にヘッドライナーのブッキングなどは。

ーー2020年に出演予定だったアーティストをそのままスライドすることはできないですからね。ということはラインナップ自体も一から決めていったんですか?

藤川:そうですね。それこそアルバムのリリースがあるアーティストもいましたし、2020年にラインナップされた人たちの中でも今回は来日できないアーティストもいたり。なのでいったん全部白紙にしました。

ーー第1弾発表で一番驚いたのがホールジーのヘッドライナーへの抜擢で。

藤川:それこそコロナ前にリリースもたくさんあって元々狙っていたんですけど、コロナで全部ストップしてしまって。おこがましい言い方かもしれませんが、フックアップじゃないですけど、そういう機会を設けたいという思いもあったり。本当にいいアーティストなので。

ーーホールジーはソロアーティストですが、海外アーティストでもバンドの交渉というのはやはり大変でしたか?

藤川:バンドに限らず、ソロアーティストでもバックバンドを連れて来るソロアーティストもいますし、ステージに立つ人以外で一緒に来日するスタッフは大勢いますからね。中にはDJアーティストで本人と数人での来日もありますが、それに比べるとやはりバンドの方が人数も多く交渉のハードルが高いというのはあったかもしれないです。

ーー日本は入国の規制の厳しさもあると思うんですが、それも理由の一つにあるのでしょうか?

藤川:例えば、全部の国ではないですけど、今ワクチンを3回接種していると待機期間なしで入国できるんですよ。出身国じゃなくて、日本に入国する直前にどこの国にいたかが重要で。それこそ韓国はこの間まではワクチンの有無に関わらず全く入国ができなかったり。日々状況は変化していますね。

ーー強制力はないですからね。例えば待機期間が長いのなら嫌だというアーティストもいそうです。

藤川:いますよ。「ホテルから出られないの?」みたいな。待機期間は日本で観光できるだろうと思う人もいますね。これは海外と今の日本のコロナに対するギャップだと思います。

ーーでは今回出演を快諾してくれたアーティストは、フジロックでライブをやりたいからという理由で出演してくれた?

藤川:そうですね。2021年に来てくれたお客さんと同じ思いのアーティストもいると思いますね。

ーーそして今年は去年以上に国内アーティストの中でも意外な名前がいるなと。特にYOASOBIの出演には驚きました。

藤川:どう感じられましたか?

ーーいや、フジロックでどんなステージを見られるのか楽しみですよ。

藤川:よかった。ぜひ楽しみにしてください。ちなみに、今年僕はORANGE RANGEをブッキングしたんですよ、GREEN STAGEに。バンドが今年結成21年目なんですよね。21年も経つとお客さんもアーティストもみんな変わるわけで、つまりはフジロックに来るお客さんも変わっているのかなっていうのもあって。もちろんフジロックらしさがなくなっては意味がないので、そこの見極めは難しいと思いましたけど。

ーーライブを観ないとわからない良さがありますからね。いわゆるフジロッカーズというと初年度のRed Hot Chili Peppers、Rage Against The Machineみたいなイメージの方も多いと思うんですけど、ブッキングのバランスみたいなものはどういうムードを反映していこうと思っていますか。

藤川:フジロックらしさっていうところに繋がってくると思うんですけど、それこそ今年議題に挙がったのが、有名なアーティストばかり集めても味気がない。もちろんその要素も必要であると思うんですけど、ただ有名な海外のアーティストだけを呼んでいるだけになってしまうと屋外でライブイベントをしているなという話が一度ありました。海外ではある程度知名度はあるけど、日本ではまだあまり知られていないアーティストをSMASHがフジロックというメディアを通してお客さんに紹介する、そういうブッキングは大事だよねっていう話にはなりましたね。

ーーそしてCorneliusの復活の場がフジロックに決まったことも話題になりました。しかも『SONICMANIA』出演と同時発表されたじゃないですか。その辺りの経緯は?

藤川:昨年の件はアーティスト本人の意思に沿って判断しました。(『SUMMER SONIC』『SONICMANIA』を企画制作する)クリエイティブマンさんと我々で話をして、フジと『SUMMER SONIC』、SMASHとクリエイティブマンで協力してそういう場を設けたいなという感じですね。

ーー2017年に『Mellow Waves』ツアーのキックオフをフジロックでやっていましたし、フジロックで活動再開するというのは最もいいのではと感じました。そして、今年フェス全体では“いつものフジロック”をテーマにされています。それが意味することをお聞きしたいんですが、具体的な要素としては何が“いつも”なんだろうと。

藤川:それは自分もいまだに考えてるんですけども。コロナ前のフジロックが必ずしもすべて“いつものフジロック”と考えすぎるのも違うんじゃないかなと思い始めてます。例えば、ハード面(ステージやエリア)は元に戻すことを“いつも”と考えても良いと思うのですが、アップデートしないといけないこともあったり。たぶん目に見えない様々な要素が“いつも”を構成しているんじゃないかなって。

ーー“いつも”が何なのかが変わってきた。

藤川:そうですね。ただフェスティバルはお祭りっていう意味ですし、前述の通り自分たちは野外で音楽のイベントをしたいのか、野外でお祭りを共有したいのか、そういうのをよく考えるようになりましたね。音楽ももちろん目玉となる一つの要素ですけど、ご飯とか自然との調和とか、それこそ地元とのつながりもそう。日高がずっと思ってきたことだと思うんですけど、それをもう一度、我々世代でも考え直して、自分たちなりにやっていく、体現していくというのが今年も含めた来年以降のテーマでもあるのかなと。

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