『FUJI ROCK FESTIVAL ’21』3日間のステージを振り返る 各アクトの名演から受け取ったこと

フジロック3日間のステージ振り返る

 コロナ禍により中止となった昨年を経て、今年2年ぶりに開催された『FUJI ROCK FESTIVAL』(以下、フジロック)。今年は海外からアーティストを招聘できないため、国内アーティストのみが出演する形になったが、長きにわたってシーンの最前線に居続けるベテラン勢から、それらに影響を受けつつ、現在進行形で新たなトレンドを築いている若手バンドまで、日本の音楽シーン全体を俯瞰できるラインナップになったことは、今年のフジロックの1つの特徴と言えるだろう。

 8月20日に開催された初日。RADWIMPSやMAN WITH A MISSIONなど、ロックを軸にエッジの立った音楽性を展開しながら、お茶の間でも高い人気を誇るバンドがGREEN STAGEを賑わす一方、WHITE STAGEにはmillennium paradeやKID FRESINOなど気鋭のアクトが登場した。特にヘッドライナーのRADWIMPSは、終盤にフジロックで披露するために書き下ろした新曲「SUMMER DAZE」を披露。Coldplayを彷彿とさせるたおやかなサウンドと親しみやすいメロディで、コーラスはコロナ禍でなければオーディエンスが嬉しげにシンガロングしていたことだろう。今年は叶わなかったけれど、次はきっと。そう思った人も多いに違いない。

 なかでも個人的に印象に残ったのは、RED MARQUEEで行われたTHE BAWDIESのライブだった。セットリストは9月に発売予定のニューアルバム『BLAST OFF!』からの曲も交え、代表曲を網羅したベスト盤的な構成。フジロック出演は5年ぶりという彼らも、久々の演奏が嬉しいのだろう、終始トップギアで爆走という様相だ。なかでも「HOT DOG」の、場内一体となった盛り上がりはすごかった。もちろん感染対策のルールに則って大声を出したりモッシュしたりはできないのだが、抑えきれない歓喜が、オーディエンスの高く、力強く掲げた手から伝わってくる。こうした一体感は久しく感じていなかったので、胸が熱くなった。終始ライブ巧者たる実力を見せつけたTHE BAWDIESがラストナンバーに選んだのは「KEEP ON ROCKIN’」。この曲を、この時、この場で演奏する意味は、オーディエンスにしっかりと伝わったはずだ。

 そして、夜のWHITE STAGEで観たMETAFIVE。小山田圭吾、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコが欠席、リーダーの高橋幸宏も病気療養のため欠席することを発表したため、今回は残りのメンバーである砂原良徳、LEO今井に加え、相対性理論の永井聖一がギター、GREAT3の白根賢一がドラムでサポートする特別編成でのライブとなった。新曲と思われるオープニングナンバーに続いて、本来であれば8月11日にリリースされていたはずのニューアルバム『METAATEM』の先行シングル「The Paramedics」もプレイ。4人のアンサンブルは急ごしらえのバンドの力量を遥かに超えた整合感があり、スクリーンに映る洗練されたビジュアルアートと相まって、とてもスタイリッシュだ。全体をリードする砂原の静かなるリーダーシップ、無邪気になったりアグレッシブになったりと、ステージの空気を自在に操る今井のフロントマンとしての存在感に圧倒された。とりわけ「環境と心理」のような曲に顕著だが、特徴的な旋律のおかげで今井の歌声が時折高橋幸宏を思わせる瞬間があり、不在ながらも確かに彼が率いるバンドであることが感じられたのも感動的だった。未知数のことも多く、いろいろな意味で注目を浴びたステージだったと思うが、フタを開けてみれば、METAFIVEは今年のフジロックの中でも一、二を争う圧巻のパフォーマンスだった。

 8月21日に開催された2日目。Ken Yokoyama、ザ・クロマニヨンズ、NUMBER GIRL、The Birthday、AJICOといったパンクやロックのベテラン勢がズラリと並び、その実力をしっかり見せつけたラインナップになった。ヘッドライナーを務めたのはKing Gnuで、前日に出演した常田大希率いるmillennium paradeと両方のアクトを観られる楽しみはフェスならではだろう。また、同じく前日にRADWIMPSで出演した野田洋次郎が、PYRAMID GARDENでアコースティック・ソロライブを行ったのも印象的だった。

King Gnu

 そして、個人的に大きな見どころだと感じていたのは、再結成後初、そしてフジロックには20年ぶりの出演となったNUMBER GIRLだ。「タッチ」からスタートしたところで、彼らに出会った1999年の記憶が走馬灯のように頭を巡る。まさに「OMOIDE IN MY HEAD」(この曲も後半でやった)、たちまち情緒がどうにかなりそうだ。ふと一抹のペーソスをまとって向井秀徳(Vo/Gt)が独唱した「夕焼け小焼け」など、興奮と弛緩を自在に操りながら進みゆくショウは、演奏はもとより、MC、ステージ構成、何もかもが巧みである。特に中尾憲太郎(Ba)と田渕ひさ子(Gt)は様々なコラボやセッションーーいわば「他流試合」を経たことで自身の揺るぎないプレイスタイルを確立した印象があり、それが演奏に一層の「コク」を加えていた。アヒトイナザワ(Dr)が演奏面でも完全復活して、骨太のドラミングでサウンドをがっちり支えていたことも大きい。メンバー紹介での「中尾憲太郎、47才です」にも時の流れを感じてしみじみ。前に会った時は「中尾憲太郎、27才」、あれから20年の歳月が流れたのだ。「伝説のバンド」と呼ばれるアーティストの再結成以降のライブは、時代性がズレていたり「過去のきらめき補正」も手伝ってリアタイ世代以外にはピンとこないことも多いのだが、NUMBER GIRLに限っては、今が史上最強なんじゃないかと思う。

NUMBER GIRL



インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる