新しい地図の3人が映像世界で放つ輝き 阪本順治、白石和彌……名監督らの証言から紐解く
6月5日に放送された『7.2 新しい別の窓』(ABEMA、※以下『ななにー』)内のコーナー『インテリゴロウ』のゲストとして、映画監督の阪本順治が登場した。同コーナーのホストを務める稲垣吾郎とは映画『半世界』(2019年)で主演/脚本・監督の関係で親交を深めたほか、香取慎吾主演『座頭市 THE LAST』(2010年)も手がけるなど、新しい地図の面々と近くで仕事を共にしてきた。そんな彼が今回の『インテリゴロウ』の中でのトークで、胸躍る場面があった。
それは、「稲垣を主人公に新たに映画を撮るなら?」という視聴者からの質問に答えたとき。そこで阪本は、大阪を舞台に路面電車をジャックする稲垣が、居合わせた“くだらない大阪人の乗客ら”とのやり取りによって計画が頓挫し、果てはなぜか世界を救うことになるというパニック喜劇を提案する。そこで阪本は、「吾郎と作るのであれば、何を考えているのか分からない人として登場してもらいたい」と答える。パブリックイメージを打ち壊す設定、そして少々現実離れしたストーリーを当てはめることで見えてくるのは、意外性ではなく、むしろ稲垣の新たな表現の可能性ではないだろうか。
ドラマ、映画、CMなど、グループ時代から映像世界の中で活躍してきた新しい地図の3人。その映像に携わってきた数多くの有名監督たちが語る3人の印象は、それぞれ異なり、また共通している部分がある。監督たちの目線で読む新しい地図、そこには我々の想像し得ない読み方があるように思う。
香取主演の映画『凪待ち』(2019年)で監督を務めた白石和彌は、香取を役者として「どんなシーンかを説明すると、一瞬で理解する」と評価する(※1)。さらに、「もちろんスーパーアイドルというイメージがあったんですが、香取さんにはアーティストの側面もあって。エンターテイナーであると同時に、作り手にちょっと近い人なんだろうという印象があった。実際に撮影が始まってみたら、衝撃ですよ。カメラと、被写体である自分の関係性を、僕がいままで仕事をしたどの方よりもわかっていると思った」というコメントからは、我々視聴者がイメージする“香取慎吾”を上回る解釈で“役者・香取慎吾”が存在していることを物語っているように思えた。
香取がシットコムに挑戦したことで話題となった『誰かが、見ている』(2020年、Amazon Prime Video)では、三谷幸喜が脚本・演出を担当。これまで数多くの作品でタッグを組んできた両者だが、そこには馴れ合いなどなく、はっきりとしたリスペクトが見てとれる。三谷は同作品での香取に対して、「僕は喜劇俳優として香取さんに全幅の信頼を置いています」と言い切っている(※2)。ただ受け身でいるのではなく、自ら咀嚼した上で生まれるアドリブやアクションを必然だと思わせる、そんな台本を超えた人物を演じられるからこそ、クリエイターらは香取に魅了されるのではないだろうか。