新しい地図の3人が映像世界で放つ輝き 阪本順治、白石和彌……名監督らの証言から紐解く
役者というフィールドにおいて、共演者、スタッフ、そして監督らから称賛を集める草なぎ剛。彼にまつわる多くの証言からわかるのは、演技における天衣無縫な才能を持ち合わせている、ということだ。
信頼を寄せるカメラマンとの会話から草なぎに興味を抱いていたという内田英治監督は、『ミッドナイトスワン』でタッグを組むことに。「自分が考えていたのとは全然違う、予想していなかった動きをするので驚きました」(※3)と、草なぎの役者としての立ち振る舞いから驚愕していた様子。また『インテリゴロウ』に出演した際には、「目の芝居が素晴らしい」「受けの演技」と稲垣を前に草なぎを分析(※4)。トランスジェンダーという役どころが大きくフィーチャーされがちだが、そんな草なぎの演技は演じる以上に“その人が存在している”ことを視聴者の脳裏に強く焼き付ける。
『青天を衝け』(NHK総合)での徳川慶喜は実在した人物だが、草なぎの演じた慶喜は「当時、実際の慶喜もそんな目線や表情をしていたに違いない」と、多くの視聴者に歴史のリアルを伝えていた。だが、当の草なぎ本人は役への没入や解釈を感覚的に捉えているようで、そこもまた彼を天衣無縫だと感じる部分なのである。
手塚治虫原作の『ばるぼら』(2020年)を実写映画化した際、二階堂ふみと共に主演を務めた稲垣。同作の監督を務めた手塚眞は、「彼は聡明なので、理解が早い。原作も読み込んだ上で、本作の美倉(洋介)というキャラクター、自分がそれを演じることの意味をしっかり理解して表現してくれました。間違いのない人、安心して任せられる俳優さんだと感じました」と稲垣の演技についてコメント(※5)。『ミッドナイトスワン』での草なぎの演技を称賛していた稲垣だが、監督視点では稲垣も“役を存在させる術”をその身に宿していると、しっかり見抜いているようだ。
数々の名監督らが画面やレンズ越し、何より肉眼で見てきた新しい地図の3人の姿。そこには監督だからこそわかる3人の特性や魅力があり、また監督だからこそ連れて行ける3人にとっての新境地がある。この先、香取は映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』(今年9月公開)、草なぎは『サバカン SABAKAN』(8月19日公開)にカンテレ・フジテレビ系月曜22時枠の連続ドラマ(2023年1月放送スタート)、そして稲垣は今泉力哉監督による『窓辺にて』(今年11月公開)がそれぞれ控えている。3人の活躍によって書き足される線、それは新しい地図をまた大きくしていくに違いない。
※1:https://moviewalker.jp/news/article/195176/
※2:https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1242089#google_vignette
※3:https://realsound.jp/movie/2020/09/post-625524.html
※4:https://realsound.jp/2020/09/post-615043.html
※5:https://maidonanews.jp/article/13832156