アーティストたちも意見を表明、各所で白熱した“ギターソロ”議論について考える

 今年のゴールデンウィーク、Twitter上で音楽に関するある議論が巻き起こった。きっかけとなったのは、自身もギターを演奏するシンガーソングライター/プロデューサー・高野寛のツイートだった。

 そのツイートには同意や反論、また驚きなど、さまざまな反響が集まり、岸田繁(くるり)、常田大希(King Gnu/millennium parade)、マーティ・フリードマンなどミュージシャンもそれぞれの意見を表明。多くの人々が「ギターソロ」について考えた出来事だった。

 この一連の議論についてはさまざまな捉え方があると思う。筆者の率直な感想は「よくわからない」というものだった。

 その「わからない」の理由はいくつかある。1つは「参考」として紹介されていた「最近、音楽関係者の間では『イントロとギターソロのある楽曲は売れない』といわれている」とする記事(※1)。だ。記事はここでは「若者はギターソロを聴かない」という話を前提に、一定以上の世代にはハードロックやヘヴィメタルが依然として根強い人気を誇っているということを雑誌『レコード・コレクターズ』の特集を引用して語るという構成になっている。それ自体は問題ないが、だからといって「若者がそういう音楽を聴かない」という証明にはならないし、それ自体が悪いというわけでもない。

 2つ目は、前述の記事では「イントロとギターソロのある楽曲は売れない」というふうに書かれているのに、その後の議論はギターソロのみの話題になっている点だ。ちなみに「イントロが聴かれない」というのはここ数年ずっと言われていることで、それを実際に検証した研究論文も発表されている(※2)。

 だが、ここで重要なのは、この研究結果はあくまで「ヒットチャート上位の楽曲の平均値」についてのものであり、イントロ(正確には「歌に入るまで」)の長さと楽曲が売れるか/売れないかという結果の間に相関関係は確認できない、とされている点だ。音楽配信サービスが普及する昨今において、リスナーの耳を掴むためにできるだけ早く歌に入る、という戦法はあると思うし、いわゆる「歌始まり」の楽曲が増えていることは間違いないが、それですら例外が多くある、ということなのである。たとえば、2019年を代表するヒット曲のひとつである、ビリー・アイリッシュの「bad guy」は、イントロが10秒以上ある。ギターソロについても同じように、リスナーがその曲を聴きたいか/聴きたくないかの判断とギターソロの有無は、絶対的に相関しているものではないはずだ。

「bad guy」

 そしてこれが前述の「わからない」と思った3つ目の理由なのだが、音楽ライターとして多くの音源を聴き、ライブに足を運んでいる筆者の“ある実感”だ。もちろんバンドやアーティストによってその扱いは異なるが、「ギターソロが不人気だ」という印象を持ったことは一度もないし、ワンマンライブでもフェスでも、ギターソロが思いきり盛り上がっているシーンを何度も目撃している。ただし、それこそLed ZeppelinやQueenのような長くてドラマティックなソロを目撃することはあまりない。ソロというよりもリフの延長のような間奏もある。ギターソロの捉え方は人それぞれかもしれないが、ギタリストがステージの前に出てスポットライトを浴びながら弾き倒すという瞬間は、今も昔もロックのライブのハイライトのひとつだ。

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