くるり、岸田繁楽団による『京都音楽博覧会2020』 『京都音博』らしい空気感と通年では観ることのできないアクトの数々

『京都音楽博覧会2020』レポート

 くるりプレゼンツ、今年で14回目の2020年の『京都音楽博覧会』は、オンラインでの開催となった。事前に京都のライブハウス、拾得で収録を行い、9月20日の19時30分から配信(くるりは「配心」と表記)。視聴券は前売3,500円で当日4,000円、クラウドファンディングとして寄付チケット5,000円と寄付チケット+グッズ10,000円も販売された。1週間後の9月27日23時59分までアーカイブ視聴あり。当日の配信終了後には、YouTubeのくるりのオフィシャルチャンネルで、『京都音博2020打ち上げ 【くるりのツドイ】』の生配信も行われた。

 会場の拾得は、京都に2軒ある蔵を改造した老舗ライブハウスのうちの古い方で(1973年開業)、くるりの3人は学生時代からお世話になっているハコ。なお、新しい方の磔磔(といっても1974年開業だが)では、くるりは、7月11日に生配信ライブを行っている。

 出演者は、くるりと、岸田繁楽団の2組。後者は、くるりの岸田繁・佐藤征史・ファンファン、ドラム石若駿、ピアノ野崎泰弘のほか、ストリングス&ホーン&コンダクターが9名、そしてゲストシンガーで小山田壮平、畳野彩加(Homecomings)、UCARY & THE VALENTINEが参加する、17人編成の楽団であることが、事前にアナウンスされた。

 白キャップ、白シャツ姿でアコースティックギターを弾く岸田繁のショットから始まり、カメラが切り替わると、岸田繁楽団の面々がコンダクター三浦秀秋の指揮で「Main Theme」を演奏していることがわかる。本来のステージの上にいるのは、ピアノの野崎泰弘のみ。岸田の位置はカウンターの中だったり、ホーンセクションが2階だったりと、拾得をフルに使ったフォーメーションである。

 岸田繁楽団は、曲の合間に、PCに向かってアレンジをしたり、拾得や『音博』やゲストについて語ったりする岸田の映像がはさまりながら進んでいく構成。2曲目はTHE BOOM「島唄」。岸田のマイクは、レコーディング用のごっついコンデンサーマイク。確かに、歌も、各楽器の音も、隅々までクリアで、ただす角のない、自然で温かな音が鳴っている。

畳野彩加

 

 3曲目は、畳野彩加がボーカルで荒井由実「ひこうき雲」。と、日本のスタンダードのカバーを2曲並べてから、同じく畳野彩加のボーカルで、平賀さち枝とホームカミングスの「白い光の朝に」へと続いていく。

UCARY & THE VALENTINE

 次のゲストシンガーはUCARY & THE VALENTINE。岸田がNHK Eテレの『みいつけた!』のエンディングテーマとして提供した曲を、セルフカバーして6月3日に配信した「ドンじゅらりん」と、彼女と岸田のツインボーカルで4年前にリリースした「琥珀色の街、上海蟹の朝」の2曲を歌う。

 続いて、ストリングスチームの後ろに立った小山田壮平がスタンドマイクで歌い、ファンファンがトランペットで加わる「ブレーメン」。そういえばファンファン、昔、andymoriのライブで吹いてたよなあ、と思い出す。

 次はandymoriの「1984」。岸田曰く、「(最初に聴いた時)同業者の曲にこんなに持っていかれることはなかった」。ストリングスやホーンのオーガニックな響きと、小山田壮平のボーカルが、不思議なくらい調和している。

小山田壮平

 

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 最後に「Santa Lucia」(ナポリ民謡)を、岸田がオペラ歌手のような歌いっぷりで聴かせて、岸田繁楽団は「Ending Theme」で終了。間髪入れず、くるりのライブが「愉快なピーナッツ」で始まる。ドラムはBOBO、鍵盤は野崎泰弘、ギターは松本大樹、5人が思い思いの方向を向いているフォーメーション。

 そのまま5人で「さよならリグレット」。岸田の持っているさまざまな側面のうち、叙情性が強く出たこの曲をていねいに聴かせてから、ファンファンが加わって「京都の大学生」。岸田はハンドマイク、発声可能音域の上限まで使って絶唱する。

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