空白ごっこ、1stワンマンライブ『PLAY ZONE』レポート セツコを突き動かす“変わりたい”という思い

空白ごっこ、1stワンマンレポ

 5月14日、渋谷WWW Xにて空白ごっこの1stワンマンライブ『PLAY ZONE』が行われた。

 2019年結成。セツコ(Vo)、koyori(電ポルP/コンポーザー)、針原翼(はりーP/コンポーザー)からなる3人組音楽プロジェクトである彼らは、東京・下北沢とインターネット上にルーツを持つ。昨年は特に意欲的に新曲をリリースし、下北沢での10カ所12公演ツアーを完走するなど、着実な成長を遂げている。そんな彼らの初ワンマンライブとなったこの日は、渋谷駅から会場のWWW Xに向かう景色を撮った映像と、その道筋を歩くアニメーションが融合したオープニング映像で開幕。サポートバンドによるパワフルなドラミングとベースがノリを作り出し、印象的なギターリフのイントロでセツコを迎え入れた1曲目は「リルビィ」。そのどっしりとしたサウンドを楽しむようにセツコがじっくりと歌を乗せる。歌い回しのバリエーションの豊富さと、繊細な感情を歌に反映させるのを得意とするシンガーであるセツコだが、この日はこれまでよりもさらに感情の解像度が上がっていたのと同時に、よりバンド隊との一体感も増していたようにも聞こえた。「ピカロ」の落ちサビ後、ラスサビに向けて歌う〈大嫌いなレイデエ 大嫌いだレイデエ 大失敗さレイデエ〉というフレーズは迫真そのもの。徐々に覇気を強めていく迫力に、突風が吹いたような衝撃を受けた。さらに「だぶんにんげん」のサビでは声を張り上げながら腕をまっすぐに挙げ、フロアの空気を掌握。ステージングやライブにおける成長をひしひしと感じさせた。

 疾走感のあるバンドサウンドの中、キーボードが一抹の悲しさを感じさせる「雨」では、セツコの特徴的なブレスが歌詞の切迫感とリンクする。椅子に座って静かに歌った「ふたくち」で見せた、時折前屈みになる様子は、セツコ自身の苦しさと向き合うようだ。下北沢ツアーの千秋楽の際には「ここが私の居場所」と改めて彼女にとっての空白ごっこを位置づけたセツコだったが、それは単に現在の彼女の物理的な居場所というだけでなく、彼女が自身をさらけ出し、自らと向き合うための場所という意味もあるのだろう。それは終盤、この日のための新曲「ポジフィルム」を披露する際に「今回もネガティブめな歌詞だけど、勘違いしないでほしいのは、これは前向きな気持ちで書いたっていうことで。曲を通して、昔のことを前向きに噛み砕いていきたいと思ったんです。みんなぐちゃぐちゃした感情ってどこかに持っていると思うんだけど、私はそのぐちゃぐちゃな状態を、ここに立つことで見せてもいいっていうのを自分に教えたい」と語ったことからも窺える。変わりたい、前向きになりたい、苦しかった日々に向き合いたい。そういった感情が、「ポジフィルム」の制作のみならず、セツコの表現力に磨きをかけているように感じた。

空白ごっこ(写真=Aoi Haruna(superbly inc.))

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