逢田梨香子、「Nostalgic」に託した意味 過去と未来へ想いを馳せた“一夜限り”の中野サンプラザワンマン

逢田梨香子、ファンへの願いを込めたワンマン

 逢田梨香子が5月1日、東京・中野サンプラザホールにて『逢田梨香子 LIVE 2022 「The night before Nostalgic」』を開催した。

逢田梨香子

 2019年6月にソロアーティストデビューを果たし、間もなく3周年を迎える逢田。誕生日イベントなどを挟みながらも、ワンマンライブとしては実に1年以上ぶり。大人っぽさ全開のジャジーな「フィクション」で幕を開けると、歌唱後には“この日を待っていました”と言わんばかりに、堂々とした歌唱を披露した彼女。だが、開幕MCにて「一夜限りのライブなので、終わったら一瞬で……あ、間違えた間違えた」と、思わず冒頭2曲でライブを終わらせようとし会場全体をくすりとさせる。そこから再びシンガーとして力強い佇まいに切り替えられるのも見事なものだ。

 続く「君がくれた光」などに感じたのは、何にも遮られない、まっすぐに伸びる強い光のイメージ。ともすれば、声優アーティストというものはデビュー段階にて、彼女たちのまだ何色にも染まっていないイメージを押し出した楽曲を用意されることがほとんど。そこからどのように色を染めていくかに活動の楽しみを見出すものだ。

 だが、逢田はむしろ、その真っ白さを保ったまま、まるで光の明るさを強めていくような音楽を発表し続けているのだ。ストリングスを交えた王道J-POPのバンドサウンド。彼女の純粋な“声のよさ”を提示する上で、これ以上ないものだ(余談だが、アンコールでバンドメンバーを紹介した際の声が綺麗すぎて、さすが声優だと唸らされた)。

 新曲「Adolescence」に続く本編終盤への流れは、今回のライブの真骨頂といえる内容になっていた。まずは同新曲を用意してきたと明かすと、“やった!”と言わんばかりにゆるめのガッツポーズを両手でかざす。歌唱時には、清涼感あるミドルテンポのバンドサウンドにあわせて、これからいくつの季節が巡っても思い出は輝き続けるといったメッセージを届ける。目の前に広がる水平線をさらに押し広げるようなイメージで、リスナーを未来へと後押しする純真な一曲だ。

 歌唱後には、“Adolescence”が英語で“思春期”を意味すると解説。逢田自身、青春には限りがなく、大人になってからの方がむしろ毎日が楽しいと感じた想いが楽曲に反映されているとのことだった。思春期という言葉に対して、「まぁ、もうみんな過ぎてると思うけど……」と、いつも通り会場の笑いを誘うあたりも、彼女なりの照れ隠しなのだろう。

逢田梨香子
 続いて、“懐かしい一曲”として「ORDINARY LOVE」を披露。この2年間での環境や心境の変化を感じながら「また新しい気持ちで聴いていただけたら」という導入に始まり、アコースティックのしっとりとしたアレンジで、誰もが持つ愛情の温かさを、心のなかでじんわりと広げてくれる。最後は胸に手を当てながら、会場の左から右、右から左と、余すところなく視線をぐるりと一周させる。この楽曲にこめた想いが全員に届いたことを、しっかりと確認するようだった。

 そこから「FUTURE LINE」で再び熱量を上げると、本編を締め括る「Dream hopper」では、突き抜けるような軽やかさと同時に、サビでのビートチェンジを挟むトリッキーな構成を乗りこなすなど、テクニカルな側面も見せる。それにしても、逢田のライブは純粋に良質な楽曲を最適なタイミングで披露することに抜群に長けている。確実に点数を重ねていくセットリストとパフォーマンス……と表現すればよいのだろうか。

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