野宮真貴、さらなる進化を予感させた40周年記念ライブ オルタナティブポップスの女王として放つ華やかな存在感

野宮真貴、40周年記念ライブレポート

 鮮やかなグリーンのクラシカルなドレスとグローブに、赤いヘッドドレス。ステージに現れただけでこれほどまでに絵になる人はいない。オープニングから、改めて彼女の存在感を思い知らされる。野宮真貴、デビュー40周年。40年のキャリアというと、重厚なイメージがあるかもしれないが、彼女の佇まいからはそんな雰囲気は微塵もない。常に軽やかでクールでスタイリッシュ。ずっと本流ではなく、カウンター的な存在を保ち続けているからこその軽やかさかもしれない。

 このようなことを考えさせられたのは、見た目だけではない。てっきりおなじみのピチカート・ファイヴのナンバーでスタートするのかと思い込んでいたのだが、いきなり最新アルバム『New Beautiful』に収められていたポータブル・ロックとしての新曲「Portable Love」から始まったからだ。どこか懐かしくも新鮮さを持ち合わせたキュートなポップチューンを歌った後は、同じくポータブル・ロックの1stアルバム『Q.T』に収められていた1980年代ニューウェイヴの隠れた名曲「アイドル」へと続いていく。

 野宮がBillboard Live TOKYOのステージに立つのは、2020年8月に行われた還暦ライブ以来。ここ近年のレギュラーバンドとなったスパム春日井率いるロマンティックスのメンバーが脇を固める。グルーヴ感を生かしたバンドサウンドは、改めて彼女の声にぴったりだと感じる。ポータブル・ロックのナンバーに続けて披露されたのは、なんと野宮のソロデビュー曲「女ともだち」。鈴木慶一がプロデュースしたオリエンタル風味のテクノポップチューンで、一気に気分は80年代初頭の“TOKYO”に。続けて新作に鈴木慶一が書き下ろした「美しい鏡」を歌う。「まさか40年後に慶一さんの新曲を歌うとは思わなかった」とMCでも語っていたが、このように時間がパラレルするような感覚が、この40周年記念ライブの醍醐味かもしれない。

 「私を世界に連れて行ってくれた曲」と紹介し、サングラスをかけて歌い始めたのは、彼女の代表曲といってもいい「トゥイギー・トゥイギー」だ。もともとは1981年のソロデビューアルバム『ピンクの心』に佐藤奈々子が書き下ろした楽曲だが、ここではピチカート・ファイヴ時代にアルバム『女性上位時代』でカバーした際のアレンジを採用。おなじみの振り付けでクールに決めてくれた。

 Night Tempoがアレンジした「東京は夜の七時(feat. Night Tempo)」をBGMに、野宮の40年を彩る未公開の貴重な秘蔵写真で構成された映像でブレイクタイムを挟むと、お色直しをして再登場。トレードマークである60’sスタイルの白いミニドレスとお揃いのカチューシャを身に着けた姿に魅了される。その姿そのままといってもいいような2004年のアルバム『DRESS CODE』からの「歌う『おしゃれ手帖』」のジャジーで上品なテイストは、彼女にしか出せない味わいだろう。

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