松任谷由実、斉藤由貴、海援隊、尾崎豊、松田聖子……40代以上に刺さる“卒業”ソング、呼び起こされる学生時代の記憶

 卒業シーズンが近づくたび、ふと胸を締め付けるのは、淡い学生時代の記憶だ。友との別れ、あの日交わした約束、そして新たな未来への不安と期待。そんな複雑な感情に時を越えてそっと寄り添うのが“卒業ソング”である。音楽ストリーミングサービス『LINE MUSIC』が発表した2025年版の世代別「卒業ソングランキングTOP10」(※1)を見ると、40代以上が選ぶ卒業ソングランキングには、昨年まで発表されていた10代向けランキングとはまた違った名曲の数々があらためて光を放っている。

 40代以上が選ぶ「卒業ソングランキング」の首位を飾ったのは、荒井由実(松任谷由実)の「卒業写真」である。1975年、元々はハイ・ファイ・セットへの提供曲として生まれ、同年に松任谷自身がセルフカバーを果たすと、その柔らかなバラードは瞬く間に卒業ソングの定番へと昇華した。

 この曲は、優しいメロディに乗せた〈卒業写真のあの人は やさしい目をしてる〉という印象的なフレーズが、聴く人々の記憶の奥にしまわれた大切な瞬間を呼び覚ます。歌詞には、卒業後に広がる未知の未来への不安と過ぎ去った日々への郷愁が巧みに織り交ぜられており、まるで時の流れを感じさせるかのようだ。今なお卒業ソングの定番として多くの人に愛され続ける「卒業写真」は、これからも長く聴き継がれることになるだろう。

 続いて2位にランクインしたのは、1985年リリースの斉藤由貴の「卒業」である。この楽曲は、松本隆が手掛けた叙情的な歌詞と筒美京平による繊細なサウンドが絶妙に絡み合い、青春時代のほろ苦い感情を丹念に描き出している。

 この曲で表現されているのは、単なる学校の卒業ではなく、想いを寄せる人との別れに立ち向かう決意と、その裏に潜む不安や寂しさではないだろうか。〈ああ 卒業式で泣かないと/冷たい人と言われそう〉という虚勢を張ったような一節の裏側には、卒業式よりもさらに寂しい別れの瞬間が示唆されているのだ。イントロのアルペジオは、楽曲全体に通底する切なさを象徴しており、聴く者を一瞬にして楽曲世界に引き込んでいく。発売から40年以上経った今でも多くのアーティストがカバーしており、どの世代にとっても胸に響く色褪せない名曲だ。

 1979年にリリースされた海援隊の「贈る言葉」は、3位にランクイン。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)の主題歌としてもおなじみの楽曲である。この楽曲の制作には、武田鉄矢の個人的な失恋の痛みが色濃く反映されていながらも、〈信じられぬと 嘆くよりも/人を信じて 傷つくほうがいい〉という力強いメッセージは、まさに卒業という人生の転機に立つ者へのエールとなっている。

 この曲が時代を超えて愛される理由は、単なるドラマティックなメロディだけではなく、その歌詞に込められた力強くも優しいテーマにある。教師が生徒に、または親が子に贈る温かい言葉として、聴く人々の心にそっと寄り添う「贈る言葉」は、卒業式という節目の持つ厳粛さと優しさを同時に感じさせる。時代が移り変わっても、この曲が多くの人にとって心の支えとなり続けているのは、まさにそのメッセージの普遍性ゆえに他ならない。

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