BE:FIRST、ライブでこそ伝わる歌唱力 JUNON、MANATO、SHUNTOにフォーカスして考察
5月3日にデビュー半年を迎えたBE:FIRST。プレデビュー期を含めた結成後の9カ月間で数々のステージを経験してきた。中でも初めて彼らのパフォーマンスを生で見た人が口々に言うのは、「クオリティファースト」を掲げる彼らの生歌の質の高さだ。そこで、今回は日々進化を続けるBE:FIRSTの歌唱力に焦点を当て、その魅力を掘り下げていく。
BE:FIRSTの最大の特徴は、メンバー全員が安定した高い歌唱力を備えていることだ。タイプの異なるそれぞれの歌声が楽曲を余すところなく彩り、その組み合わせが織りなす無限の音楽の可能性を秘めている。彼らのスキルとは、単に音程を取れる、リズムを正確に刻める、というものではない。全員が曲に応じた表現技法で高音域から低音域までの声色を自在に用い、そのクオリティをライブ終盤まで確実に保つ実力が「上手い」と言わしめるのだ。BE:FIRSTに歌唱担当やメインボーカルという概念は存在せず、全員がセンターを担う粒揃い。これもリーダーを設けず各々が得意分野で牽引していくという形を選んだこのグループの持ち味であろう。
ポップなサウンドが引き立つ楽曲でひときわ伸びやかなハイトーンを響かせる最年長のJUNONは、「家で歌っていた」と言うように実は歌は独学。しかし歌が好きな想いから積み重ねてきた経験値は非常に色濃く、女声でも出しにくい高音域も艶やかに歌い上げるのだから、初めて歌声を聴いた人は皆釘付けになるに違いない。さらに、オーディション『THE FIRST』出演時から「プリフックが得意」(※1)と語っていたように、新曲「Betrayal Game」でもサビ前のプリフックで突き抜けるFを披露し、オクターブの音域を網羅する高音の絶対的守備範囲を確立。サビの落ち着いたトーンとのコントラストが際立つシーンとなっているが、このハイトーンボイスをクールな表情で、色っぽく使いこなす彼の手腕にファンはお手上げだろう。
それだけでなく、踊りながら歌うパートでも歌声が安定し続ける底力を兼ね備えているのもJUNONの歌声の「本当の凄さ」である。「Bye-Good-Bye」では最高音がF♯、約2オクターブの音域を網羅するサビ前半を丸々担当し、他のメンバーと同じように踊りながらパフォーマンス。BE:FIRSTのコレオグラフィはハードでレベルが高いことにも注目が集まるが、それをもろともせずダンスと歌のクオリティを両方担保することには驚く人も多いだろう。むしろJUNONの場合、難易度の高い高音パートを経験すればするほど歌唱力を上げているようにも思えるのだ。それもそのはず、「Bye-Good-Bye」の自分のパートについてJUNONは「プレッシャーや緊張よりも『やってやるぞ』という気持ち」とコメントしている(※2)。「僕の歌声で世界を掴み取る」(※3)と宣誓したBE:FIRSTの高音域の守護者は、必ずやそれを成し遂げてみせるだろう。
BE:FIRSTの楽曲の全体的な質を底上げするのは、幼少期から培った歌声で歌唱面を率いるMANATO。彼はグループ内でもとりわけあらゆるパートを任され、サビはもちろん、歌い出しからバトンを受け取り緊張感のあるAメロ、一変する雰囲気の中で息を呑むような空気感を掌握するプリフック、歯切れ良くSOTAとのコンビネーションを見せるラップ、ラストサビの華々しいフェイクなど多岐に渡る表現方法と声色で楽曲を立体的に彩る類いまれなメンバーだ。彼の歌声には決して揺るがない絶対的な安定感があり、『THE FIRST』でSKY-HIは「まるで音楽を目で見ているようだ」と評価。オーディションでも自分の歌を早い段階で確立し、スキルアップや感情の爆発など表現方法を磨くことに注力していたのが記憶に新しい。
結成当初からライブやフェスに参加してきたBE:FIRSTは今や10曲弱のセットリストを携えてステージに立つようになった。歌・ダンスともに体力を消費する長丁場のライブは長年の経験がものを言うことがほとんどだが、MANATOは「ライブパフォーマンスで成長したところ」と問われると、デビュー半年にも関わらず「たくさんのライブ現場を経験してペース配分に慣れてきた」(※4)と回答。それもそのはず、BE:FIRSTがこの半年間で出演したライブ、TVパフォーマンスは莫大な数であり、彼らはその一つひとつと丁寧に向き合って歩みを進めてきた。最近ではライブ終盤のMANATOの安定感が特別際立つが、疲れと緊張を一切感じさせることなく終始どっしりと構え、堂々とした面持ちでステージに立つ姿は早くも貫禄を漂わせ始めている。「クオリティファースト」を体現するMANATOは、誰も代われないBE:FISRTの絶対的な歌唱軸だ。