Awesome City Club、『Get Set』携えたツアーでまだ見ぬ世界へ 表現者としての気概感じたZepp DiverCity公演

Awesome City Club、最新ツアー東京公演レポ

 『Awesome Talks - One Man Show 2022 -』はAwesome City Clubにとって約2年ぶりの全国ツアーだった。この記事でレポートするのは4月10日のZepp DiverCity(TOKYO)公演だが、その時点で終えていた愛知・大阪公演についてatagi(Vo/Gt)は「待ってくれていた皆さんのパッションが伝わってきた」とし、「胸が詰まる思いでした」と語っていたこと、またライブ終盤にPORIN(Vo/Syn)も「こうしてみんなの顔が見れてホッとしたし、パワーをあげるつもりがたくさんもらっちゃいました」と話していたことが印象に残っている。「勿忘」のヒットをきっかけに今やテレビ番組などで見る機会も多くなってきた彼ら。しかし、自分たちの音楽を受け取る人たちの顔を直接見ることができるライブという場所は、やはり3人にとって欠かせない場なのだろう。心臓の鼓動のSEが止み、始まった1曲目は「Life still goes on」。バンドが鳴らすサウンドと聴く人の日常を軽やかに繋げるオープニングだ。

 ツアーこそ2年ぶりだが、新型コロナの感染拡大状況を鑑みてツアー形式から新木場STUDIO COASTのみの開催に変更となった『Awesome Talks -One Man Show 2020-』(2020年12月)、中野サンプラザでの『Awesome Talks - One Man Show 2021 -』(2021年8月)、東京ガーデンシアターでの『Awesome Talks One Man Show 2021 - to end the year -』(2021年12月)とワンマン自体は継続して行っていた。開放的なサウンドで観客を受け入れ、そのグルーヴで踊らせるオープニングで幕開け、atagiとPORINのハーモニーをしっとり聴かせるバラードセクションや、メンバー3人のみのアレンジで聴かせる曲などを経由し、盛り上がりとともにフィナーレを迎える……というセットリストにおける起承転結のつけ方からは、先述の3本のワンマンからの蓄積が感じられた。

 一方、先の3公演と違うポイントももちろんあった。一つは、アルバム『Get Set』のツアーのため、同作中心のセットリストになっていたこと。アルバムに収録されている10曲が全て演奏されたのだが、それ以外の曲もほとんどが『Grow apart』(2020年7月リリースの2ndフルアルバム)以降に発表された曲、さらにこの時点ではリリース前だった新曲「Good Morning」も初披露されるなど、最新のAwesome City Clubを印象付けようという姿勢を感じた。もう一つは、先の3公演ではホーン隊やコーラス隊、ストリングスなどの弦楽器やダンサーを取り入れたリッチな編成で演奏していたのに対し、今ツアーではatagi、PORIN、モリシー(Gt)とサポートメンバーの雲丹亀卓人(Ba)、伊吹文裕(Dr)、横山裕章(Key)によるシンプルなバンド編成に立ち還っていたこと。楽曲に対する反響の大きさがメンバーのクリエイティビティを増幅させるきっかけとなったのか、「勿忘」以降も新曲をコンスタントに配信していたAwesome City Club。そういった曲たちが『Get Set』には収録されているのだが、1曲1曲の個性が強く、多方向に振り切れている楽曲群をあえてシンプルに演奏してみせたところに表現者としての気概を感じた。3人にとってもトライアルなツアーになったのではないだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる