THE ALFEE、現役48年支える強固な関係性 「1本では折れちゃうけど、3本そろってやっと戦える」
THE ALFEEが、2年8カ月ぶりのフルアルバム『天地創造』をリリースした。同作は全12曲のうち9曲が新曲という充実ぶり。今の時代だからこそ届けられる、THE ALFEEサウンドとメッセージが凝縮された意欲作となった。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、この2年間で4本のツアー開催を見送るも、配信番組『Come on ! ALFEE !!』や無観客ライブを行い、昨年12月には日本武道館公演を有観客で開催するなど、48周年を迎えてもなお現役バリバリの活躍を見せるTHE ALFEE。インタビューでは、バンドの個性=3人のボーカル/3声コーラスを軸に作られたという『天地創造』の制作秘話と共に、高見沢俊彦、桜井賢、坂崎幸之助という強固なトライアングルの絆を感じる貴重な話を聞くことができた。(編集部)
「さすが、俺たちの歌声を熟知しているなと」(桜井)
ーー最新アルバム『天地創造』は、これまで以上に3人の歌声のハーモニーを活かした作品だと感じました。今作を制作するにあたって、どのようなコンセプトを考えていたのでしょうか?
高見沢俊彦(以下、高見沢):この2年間でツアーが4回飛んでしまい、制作期間がいつもよりもたくさんありましたから、じっくり練ることが出来ましたね。これからのことも含め、活動を振り返ったりする中で、THE ALFEEの強みは何なのか、あらためて再検証してみました。僕らの強みとは3人が歌えることだし、それによる3声のコーラスは僕らの最強の武器ですからね。そこで、それぞれのボーカリストとしての個性を際立たせた上で、コーラスを重ねる。そこを意図的に狙ったアルバムでもあります。
ーー改めて、それぞれの歌声の特徴をお聞きしたいのですが、表題曲「天地創造」は、桜井さんがボーカルを取られていますね。
高見沢:この曲は、桜井の音域と声質を最大限に生かしたものになっています。桜井の一番良い部分を出せたんじゃないかと思いますよ。想定以上の仕上がりになりましたしね。
桜井賢(以下、桜井):「天地創造」は、一番最後に歌入れした曲なんです。タイトルソングなので、これができないとアルバムが出せないというプレッシャーがある中、正月返上でレコーディングにのぞみましたからね(笑)。俺は普段、歌入れに時間がかかる方なんですけど、この曲は早かったですね。プロデューサー(高見沢)の言う通り、よく考えて作ってくれたからね。とにかく歌いやしかった。さすが、俺たちの歌声を熟知しているなと思いましたよ。
高見沢:シングル曲は桜井がボーカルを担当することが多いから、今でも色々なパターンの曲を歌って貰いましたからね。この曲は、一番声が艶やかにのびるポイントを計算して作りました。
桜井:昔はこんなことを言ってくれなかったです。無理だと言っているのに「出せ!」と言われて。
高見沢:だって最初は、どれだけ出るかわからなかったからさ(笑)。
桜井:やっとわかっていただけました(笑)。
ーー坂崎さんは「My Life Goes On」や「Funky Cat」などでボーカルを担当されています。
高見沢:坂崎の場合は、今回パターンがそれぞれ全然違いますね。楽曲によって歌声を分けている。器用なんですよ、この人(笑)。昨年ツアーができなくなってから配信番組を始めたんですけど、その中に「スナックアルフィー」というコーナーがあって。そこでは3人が好きな歌をカラオケで歌うんですけど、坂崎は多才この上ない!演歌からニューミュージックまで、いろいろな声が出るので、これはオリジナルで使わない手はないと思って、色々作ってみたんです(笑)。
坂崎幸之助(以下、坂崎):僕は、「My Life Goes On」と「Funky Cat」、「振動α」、「風の時代」の4曲でメインボーカルを担当していますが、全部違う声のアプローチになっていますよ。
高見沢:優しいものから、ハードなものまで。
坂崎:僕は、リクエストがあった方が楽なんですよ、任せられるよりもね(笑)。好きに歌ってと言われても、どうやって歌えばいいのかわからなくなる。
ーー「My Life Goes On」は、どんなイメージで曲を作っていきましたか?
高見沢:僕らの大先輩であるGAROへのリスペクトを込め、得意分野でもある“GARO”風なイメージで作りました。この曲のテーマはある意味、断捨離なので、1曲目の「天地創造」とはまったく真逆の世界観ですね。これを歌えるのは坂崎しかいませんからね。彼の心情に寄り添えるように創作しました。
ーー「天地創造」と「My Life Goes On」が真逆の世界観にあるということですが、そんな二面性を強く感じさせるアルバムですね。「My Life Goes On」の断捨離は人生の整理整頓という意味にも取れる一方で、「天地創造」のようにすごく前向きでアグレッシブな楽曲も収録されている。
高見沢:コロナ禍で一番強く感じたのは、人生は思い通りにならない。でも、僕らは明日を生きていかなければいけない。そういう不条理な世界で、音楽で何が出来るのかと考えたときに色んな発想が生まれました。その思いを1曲1曲形にしていった次第です。で、面白いのは今回のアルバムを曲順通り聴いて、「友よ人生を語る前に」が心に響いたことです。いつもは既発のシングル曲はアルバムの新曲と比べて、少し古い感じがしてましたが、この曲は逆に新鮮に聴こえましたね。
ーー「友よ人生を語る前に」は、同世代の方に向けたメッセージソングですね。
高見沢:そうです。もともとは僕らと同世代の方々に向けて作った曲なんですが、アルバムの中で聴くと全世代に通じるようなメッセージと捉えることができる。やっぱり、時代と共に歌の意味は変化していくのだなと思いました。リリースした2年前は、まだコロナ禍初期の頃でしたからね。
桜井:アルバムにはひとつの流れというものがありますから、そこで際立って良く感じられるということは、曲の並べ方が良かったのかなと思うね。
高見沢:「別れの心象」の後に「友よ人生を語る前に」が来るから、余計に新鮮な感じがしたのかもしれない。「別れの心象」はアコースティックな曲で、僕らにとってもノスタルジックなイメージがあります。そこから「友よ人生を語る前に」に繋がると、「まだまだいける」みたいな力強い気持ちが不思議と湧いてくるんですよ。
ーーそういったノスタルジックな一面もまた、このアルバムの持ち味の一つです。
坂崎:アコギが効果的に使われていますからね。“THE ALFEEサウンド”の原点である、アコースティックギターとコーラスが上手くハマっていています。アルバムを通して聴くと、とにかく、バランスの良い作品という印象ですね。あと、「別れの心象」は最後の最後に、もう一度ギターのフレーズを入れ直したよな。
高見沢:それまでは、全然違うフレーズが入っていたんですが、ピアノのフレーズをもっと生かしたくて、最後の最後に坂崎に弾き直してもらいました。
坂崎:ああいったシャッフルビートに、アコースティックという組み合わせは懐かしい感じがしたね。
高見沢:意外に、これまでなかった感じだよな。
ーー今回のレコーディングでもお宝的なギターは使いましたか?
坂崎:今回は高いギターが多かったです(笑)。Martin D-45がメインで、あとはGibson Doveとか、TSKという僕のオリジナルブランドの12弦ギターも使いましたね。
高見沢:TSKも高いの?
坂崎:80万くらい。
高見沢:高けぇな!(笑)
坂崎 幸之助:(笑)。でも、意外とピッとしてるんですよ。12弦ギターは普通弾きにくいから、音が好きでもみんなあまりメインでは使わないんですよね。だけど僕が使ったのはネックもすごく握りやすいし、ボディーも小ぶりで薄いんです。僕がいつもステージで使っているんですけど、プロミュージシャンに聞いても使いやすいというぐらいで。日本人向けの12弦ギターができたという感じでしたね。今回のレコーディングでも十分使えました。