DOPING PANDA、10年の時を経てたどり着いた新たなスタートライン ゆかりの地 新代田FEVERで活動再開を果たす

DOPING PANDA、10年ぶりの再結成ライブレポ

 「We are DOPING PANDA!」。ステージ上からYutaka Furukawa(Vo/Gt)が(何度も)放ったこの言葉が、すべてを象徴していた。これが言えなくなってしまった日々と再び言えるようになるまでにかかった時間、再結成を決めてからここまでに起きた数々の奇跡、そしてとにもかくにもたどり着いた新たなスタートラインとしての今日――2012年4月19日、TOKYO DOME CITY HALLでのワンマンライブをもって解散したDOPING PANDAが10年ぶりに再結成、活動再開を果たした。

 2018年に開催されたフルカワユタカのアニバーサリーイベントでの一夜限りの再結集はあったものの、今回は新作アルバムをひっさげての大復活である。3月2日、まさにそのニューアルバム『Doping Panda』がリリースされた当日にバンドにとってもゆかりの深い新代田FEVERでツアーに先んじてのキックオフイベントである『Reunion Kickoff Party at FEVER』が行われた。会場にはソニーミュージックの公式ショップでCDの予約をしたファンの中から抽選で選ばれた100名の「メイニア」(DOPING PANDAファンの呼称)が集まったフロアを前に、ドーパンの3人は久しぶりにステージ上で音を合わせる喜びと緊張感を味わっているように見えた。

 オープニングのSEで「DOPING PANDA!」とバンド名がコールされると、早くもフロアからは大きな拍手。続けてステージに登場したTaro Hojo(Ba)、HAYATO改めHayato Beat(Dr)、そしてYutaka Furukawaにも、待ってましたとばかりに熱烈な歓迎の拍手が浴びせられる。10年待ったのだから当たり前だが、とんでもない熱気だ。そんな熱気を、Furukawaのかき鳴らすギターがますます増長させていく。1曲目は彼らの出世作となったインディーズ最後のアルバム『WE IN MUSIC』からの代表曲「Mr.Superman」だ。Furukawaが興奮しながら叫ぶ、「We are DOPING PANDA!」。そして続けて2曲目「YA YA」。フロアでは手が揺れ、FEVERが早くもひとつになっていく。

 「The Fire」「Hi-Fi」……たたみかけるようにファンに愛され続けてきた初期曲を繰り出していくFurukawaとメイニアのあいだで、言葉を介さない熱いコミュニケーションが生まれる。その様子を見守るように優しげな笑みを浮かべつつスティックを振るうHayato、一音一音を丁寧に弾きながら全身でバイブスを感じているようなTaro。キンキンに尖ったサウンドとパンキッシュなノリは10年前と変わらないが、バンドが醸し出すグルーヴには10年前にはなかったまろやかさのようなものがある。かといって、ウイスキーやワインのように長期熟成で円熟味が増した、というようなことでもない。なんというか、いろいろ経験してきた3人でもう一度スタート画面で「はじめから」を選んだらどうなるの?といった、ちょうどいいフレッシュさなのだ。

 その後も解散前のドーパンの歴史を彩ってきた楽曲たちを連投していく3人。「Transient Happiness」のアウトロでFurukawaが披露した鮮やかなタッピングには一際大きな反応が起きる。「今日はrehab(リハビリ)です」「一気に緊張してきちゃいました。『Mr.Superman』むちゃくちゃ速くなっちゃった」――中盤のMCでFurukawaは笑ってそう言っていた。確かに「Mr.Superman」は速かったが、ある種の初々しさのようなものがかえって新鮮だ。もう一度バンドを始めるということ、その意味とは何なのか。この再結成が決してレトロスペクティブなものではないということを、そのフレッシュな音が何より物語っている。フレッシュといえば、Taroのキャラも見逃せない。Furukawaからの「何か言いたいことあるんじゃないの?」という絶好のパスを華麗にスルーして「……お久しぶりです」と普通に挨拶し、「ちげえよ!『やったぜ!』じゃねえのかよそこは」と思いきりツッコミを受けたり、この日はライブの途中でファンクラブ用のラジオ公開収録も行われていたが、そこで過去から現在にいたる数々の「タロティー・エピソード」を暴露されたり。Furukawaは「タロティーがどれだけおかしなヤツかを前面に出していく」と高らかに宣言していたが、Furukawaがイジり、Hayatoが絶妙なフォローに入る、という3人の関係性とそこで生まれる自然な空気感も、きっと10年前にはなかなか難しい場面もあったのではないかと思うと、それをこうして目の前で見られるということがじんわりと心に染みる。

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