崎山蒼志、鮮やかに鳴り響くバンドサウンドで魅了 石崎ひゅーいも登場した『Face To Time Case』ツアー東京公演

崎山蒼志『Face To Time Case』ツアー東京公演

 崎山蒼志の東名阪バンドツアー『Face To Time Case』の東京公演が2月12日にSpotify O-EASTで行われた。2月2日に発売されたメジャー2ndアルバムの名を冠した本公演。タイアップ曲も数多く収録する本作の楽曲を中心に、数々なコラボを通して新たな側面を引き出した楽曲や、初期から垣間見える衝動を含んだ楽曲などバラエティに富んだステージを披露した。

 ライブはアルバムと同じく「舟を漕ぐ」からスタートする。〈舟を漕ぐ〉と繰り返しながら穏やかな景色を見せる一方、鋭いタッチで奏でられるギターとタイトなドラムをはじめとするバンドサウンドが魅了する。この日のライブで楽曲の魅力をさらに磨き上げたのは、宗本康兵(Key)、GOTO(Dr)、有島コレスケ(Ba)から成るバックバンドの演奏だった。崎山の楽曲には振れ幅の大きい展開やそれに伴うブレイクなどが多い。「舟を漕ぐ」に至っては途中で3拍子に変化するが、そのような変化を息の合ったプレイで鮮やかに展開していくさまは壮観であった。

 「過剰/異常」に続けて披露されたのは、崎山が1人で演奏してきた楽曲をバンドアレンジにした“再定義シリーズ”のうちの2曲、「Undulation」、「Samidare」。バンドサウンドで再定義しただけあって各楽器の存在感は大きく、生命力の漲った演奏で圧倒する。「Undulation」では〈強く刺す〉と紡いだ直後に崎山によって鳴らされるギターの1音がまさに歌詞を表現したように強く、「Samidare」ではギターと並走するドラムとベースが疾走感とともに重量感を生み、キーボードが叙情的な空気を高めていく。エッジの効いた高速のギターストロークをはじめ、崎山の奏でるギターはバンドとともに勢いを増す。しかし歌唱はどこか落ち着いており、堂々たるボーカリゼーションが存在感を放った。

 再定義シリーズでは崎山がバンドの音色と出逢うことでさらに鮮烈さを増したが、そこで表現した勢いを今の崎山によって改めて形にした楽曲が、ドラマーのGOTOとともに披露した「Pale Pink」だろう。低く打ち付けるキックと打ち込みのシンセベースの音色に身をゆだねるように、崎山はギターを置いてステージを飛び跳ねる。この楽曲の前にはいきものがかりの水野良樹と共作した「風来」、映画『かそけきサンカヨウ』主題歌の「幽けき」を続けて演奏している。ポップスと彼の声とのコラボレーションのあとに披露される、彼が1人で打ち込みで制作した楽曲。フロアに目もくれずGOTOの方を向きながら飛び跳ね、内省的な詞を紡ぐ崎山を見ていると、彼のプライベートな感情やむき出しの衝動をのぞき見しているような気分に陥る。同じく打ち込みで作ったという「水栓」に鮮やかに繋がると、自由に飛び跳ねながら音と戯れるようにステージを展開した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる