浅井健一、変わらないまま進化し続けてきた歩み 「THE INTERCHANGE KILLS」のライブで発揮された二面性

浅井健一、ライブで発揮された二面性

 当日はステージが2回行われ、今作はそこから選ばれた曲を収めている。観客は声出しNGの観覧で、間にはベンジーの「今日はほんとに来てくれて、ありがとうございます。今日の演奏はライブ盤になって、CDになるので。皆さん、元気良く……騒いでください、って言えないので。元気良く、観てください」というMCも入っている。とはいえ、拍手の大きさが示すように、当日のオーディエンスは規範を守りながら熱くなっていた。騒ぐことができないとしても、ベンジーが長い時間をかけて培ってきた音楽は充分に楽しむことができる。特にアコースティックの演奏に関してはこの何年間かで熟成させてきた側面があるし、かたや、あえてエレクトリックで鳴らした曲もあり、その両面が凝縮されたライブになっている。当記事の冒頭ではベンジーの変わらなさについて触れたが、そうした面では、彼は着実に進化しているのだ。

【Kenichi Asai & THE INTERCHANGE KILLSACOUSTIC & ELECTRIC "Mellow Party"】at Billboard Live TOKYO

 そしてこのライブアルバムの発売に続き、2月5日にはKILLS名義での新曲「ラブソングが聴こえる」が配信リリースされる。ギターリフも印象深いロックナンバーで、タイトルの通り、曲の始まりはロマンチックな展開を期待させるような歌詞になっている。しかし次のヴァース以降は徐々にシリアスさをまといはじめ、後半に向かっては歌詞に〈戦争〉や〈ICBM(大陸間弾道ミサイル)〉が出てくるなど、今の日本への警告のようなメッセージが歌われている。

 例えば、BLANKEYの「悪いひとたち」や初期SHERBETSの「38 Special」のような曲もメッセージ性が強かった。だが、現在の彼は、もっとつまびらかな部分まで社会情勢を気にかけながら、その中でどう生きるべきなのかを歌おうとしているのだろう。歌詞でここまで具体性を持たせた曲は、あまり記憶にない。ただ、それがそのまま終わらない流れになっているのは、やはりベンジーだという気がする。

 浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLSはこの2月にショートサーキット的に4カ所を回る『HUNDRED TABASCO TOUR』を予定している。4月には大分でのキャンプイベントへの出演、東京でのプラネタリウムライブも決定。一昨年はライブの多くがキャンセルとなり、「もう、大打撃」と言っていた彼だが(※2)、今年はどうにかこのバンドの生演奏がもっと多くの場で楽しめるようになることを願う。

※1:『音楽と人』2021年5月号
※2:『音楽と人』2020年10月号

■リリース情報
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS LIVE ALBUM
『Mellow Party -LIVE in TOKYO-』
2022年2月2日(水)発売 3,500円+税
[CD]
1.ヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車
2.ゴースト
3.小さな恋のメロディ
4.DEAD FISH
5.ICE CANDY
6.Spinning Margaret
7.Not Ready Love
8.JODY
9.Cosmic Wonder Bowler
10.危険すぎる
11.透明の戦場
12.Old Love Bullet Gun
13.全然足りない
14.少女
15.ハラピニオ

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS
「ラブソングが聴こえる」
2022年2月5日(土)配信限定リリース

・Official Website
浅井健一|SEXY STONES RECORDS
http://www.sexystones.com/
・Instagram
浅井健一|SEXY STONES RECORDS
https://www.instagram.com/kenichi_asai_official/?hl=ja
・Twitter
浅井健一|SEXY STONES RECORDS
https://twitter.com/ssrstaff

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