The Birthday、新境地『サンバースト』に宿ったリアリティ 真実を歌い鳴らすことで体現する“ロックの本質”
The Birthday、11枚目となるアルバム『サンバースト』が7月28日にリリースされた。過去10枚のアルバムも傑作ばかりだったが、「まだこんな音楽を聴かせてくれるのか」と思わず歓喜の叫びを上げたくなるような、素晴らしく意義深いアルバムである。1つのロックバンドとしても、詩人・チバユウスケ(Vo/Gt)のキャリアとしても、新たな扉を開いたのではないだろうか。
9月からは本作のリリースツアー『SUNBURST TOUR 2021』も予定されており、ライブ演奏を想定して作られたアルバムであることはこれまでと変わらないだろう。だがこの1年半、コロナ禍でライブが制限され、ひたすら制作と向き合っていたこともあってか、レコーディング作品としての完成度はキャリア随一かもしれない。バンドの中心にあるのが“歌”だというのは、先日放送された『69号室の住人』(TOKYO MX)でもチバが口にしていたが、音数を絞りながら組まれた緻密かつ緩急豊かなアレンジによって、チバの歌う言葉が深く深く、胸の奥まで染み渡ってくる。一撃で突き刺すパンチラインよりも、じっくり紐解きたい詩的な歌詞になっているのは『サンバースト』の特徴だ。サウンドと言葉、両面において高い作家性が発揮された作品であると言えるだろう。
『サンバースト』に至る過程も振り返っておくと、まず両A面シングル『ヒマワリ / オルゴール』の存在は大きかったはずだ。折れたヒマワリ、壊れたオルゴール。それらをモチーフにしながら未来への希望を滲ませていた2曲は、ライブの少なかった2020年に必要な楽曲だったと思うし、『GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020』で本編の最初と最後に置いて、印象的に響かせられたのもよかったのだろう。『サンバースト』に「ヒマワリ」「オルゴール」が収録されないのは正直驚いたが、そうやってシングルとして完結できたからこそ、アルバムは新しい方向性で着地できたのかもしれない。
そんなツアーの追加公演『GLITTER SMOKING FLOWERS at LIQUIDROOM』が今年4月6日に行われたが、唐突に『サンバースト』から新曲が初披露された。THE BLUE HEARTSを彷彿とさせる猪突猛進な歌い出し、3分で駆け抜ける爽快な曲構成。「アンチェイン」だ。しかし、例えば「DISKO」がそうだったように、ジャンルとしてのパンクやハードコアをそのまま取り込むのではなく、The Birthdayらしいキラキラしたメロディと掛け合わせることによって、オリジナルな楽曲として見事に昇華されていた。「もしや来たる新作はシンプルな曲で構成されたパンク回帰アルバムか!?」と一瞬頭をよぎったものの、いざ届いた『サンバースト』を聴いてみると、予想のはるか上を行くアルバムなのだった。
M1「12月2日」が異様な幕開けを飾り、M2「息もできない」からM7「晴れた午後」まで一気に駆け抜け、M8「スイセンカ」を挟んで、M10「ギムレット」で強烈な爪痕を残し、M11「バタフライ」でそっとアルバムは閉じられていく。『サンバースト』はこれまで以上に精巧な“楽曲の流れ”で聴かせる作品なのかもしれない。
加えて、アルバムに通底している1つのテーマがあるように思う。それは“真実”についての作品であるということだ。もっというと、朽ち果てた世界とそこに存在する小さな愛、それらを“ありのまま”描写したような作品ではないだろうか。
「人間の生まれた時から世の中なんて腐ってんだって」(※1)というのはチバの持論だろうし、それがThe Birthdayの楽曲の根底にあることは明らかだ。それでも、ほんの一筋の希望を象徴するのが「FLOWER」での“枯れ木に咲く花”だったし、〈OH BABY!〉という一言だけで、希望を未来までつなげていくエネルギーが前作『VIVIAN KILLERS』の核だった。しかし『サンバースト』には、どこか世の中の空気感とリンクするような“リアリティ”が宿っている。『VIVIAN KILLERS』が「世界は腐っている。だけど希望はある」という描き方だったとすれば、『サンバースト』は「腐った世界と希望は同時に存在していて、どちらも目を背けられない真実」なのだと、ありありと語っているように思うのだ。