鈴木愛理×杏沙子、「見る目ないなぁ」がつないだ二人の縁 歌と向き合う姿勢から恋愛観まで赤裸々に語り合う

鈴木愛理×杏沙子、同い年対談

 鈴木愛理が一度聴いて心を奪われたという楽曲がある。シンガーソングライターの杏沙子が歌う「見る目ないなぁ」だ。終わった恋の思い出を振り返りながら「見る目ないなぁ」とつぶやく〈わたし〉に共感するリスナーが後を絶たない失恋ソングで、リリース後も支持を伸ばしている人気曲である。鈴木愛理が同曲をカバーしたことをきっかけに、M-line Music YouTubeアカウントにて二人が対談動画を撮影。リアルサウンドでは、その動画撮影後、改めて二人に話を聞くことができた。偶然にも同い年で共通点も多い二人。初対面とは思えないほど和気あいあいとしたムードの中、お互いの心の内まで入り込むような等身大の対話を聞くことができた。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

「見る目ないなぁ」は「昨日失恋した子」のモードに入れる曲

――まずはお互いの第一印象を教えてください。

鈴木愛理(以下、鈴木):明るくて柔らかそうというイメージでした。焼きマシュマロみたいな、柔らかいけど簡単には溶けなさそうというか(笑)。明るい印象だけど、探っていったら結構悩みもある方なのかなと楽曲や杏沙子さんの雰囲気からイメージしていました。

杏沙子:私は愛理さんの去年の武道館ライブ(『鈴木愛理 LIVE 2021~26/27~』)を拝見したんですけど、すごく笑顔が可愛くて癒しをもらって。それプラス力強さみたいなものも感じたんですよね。音楽やダンスへの情熱だったり愛みたいなものを人一倍強く固く持っていらっしゃるなっていうのを感じて、格好いいなと思っていました。それで今日はじめてしっかりお話させてもらったら、すごくお茶目なところがあって、面白くて。私はそういう方が大好きなので。

鈴木:本当ですか? よかった!

杏沙子:そうなんです。ちょっとおちゃらけているところもあったので、新たな一面を知れました。本当に万能薬というか、バランスよく全てを持っていらっしゃる方だなと思いましたね。

――今日話してみてすぐに意気投合されたんですか?

鈴木:私は勝手にそう思ってます(笑)。同い年で4月生まれとか、共通点もあって。

杏沙子:なんとなくですけど、似ているところもあるのかなと勝手に思っていて。話していてなんのノイズもないというか。

鈴木:わかります。呼吸が浅くならない。私は初対面の人に対してすごく気を遣ってしまうことが多いんですけど、めちゃくちゃいつもの自分で話せているのにびっくりしています。

――鈴木さんの新しいアルバム『26/27』では杏沙子さんの「見る目ないなぁ」をカバーしていますが、楽曲と出会ってカバーしようと思ったきっかけを教えてください。

鈴木:2020年のおうち時間のとき、楽曲をカバーしてライブをする時期があって、なにを歌おうかなって調べていたんです。私、しっかり泣けるバラードが大好きなので普段からそういう曲をYouTubeで聴いているんですけど、関連動画で杏沙子さんの「見る目ないなぁ」に辿りついて。一目ぼれしてそのライブで歌わせてもらいました。それで今回アルバムを作る話になったときに、『26/27』というタイトルなので26歳、27歳の鈴木愛理が歌ってきた楽曲、作ってきた楽曲を収録するということで、ファンの人にもすごく評判がよかった杏沙子さんのカバーを今回収録してもいいでしょうかとお願いして、快諾していただきました。

――その話を聞いたとき、杏沙子さんはどう思いましたか?

杏沙子:本当に嬉しかったです。今まで、その方の大事な作品の中に自分の曲を入れていただくような経験をしたことがなかったので、「いいんですか!?」みたいな気持ちでした。愛理さんがライブで歌ってくださった日にTwitterでエゴサをしていたら、「杏沙子の『見る目ないなぁ』っていう曲を歌ってた」というツイートが出てきて、そんなことあるのかなぁって信じられなくて。とても光栄です。

鈴木愛理、杏沙子(写真=村上麗奈)

――この曲はご自身の実体験を元にされている曲なんですよね。

杏沙子:そうです。実際に「見る目ないなぁ」って言いながら書きました。愛理さんはクリックがない状態でピアノとせーので録音したと聞いて、本当に生きたままが収録されているなと思って。目の前で愛理さんが歌っているかのように聴こえて、すごく鳥肌が立ちました。私が歌っている「見る目ないなぁ」とは主人公の服装も恋人も違うと思う。ストーリーは同じなんだけどキャラクターが全く違うみたいな、別の映画を見ているような感覚がすごくあって。いい意味で全く別物。誰かの曲を歌うときに自分の色に塗り替えることができるのが愛理さんの素晴らしさだなっていうのはずっと前から思っていたんですけど、こうなるんだと思いました。

――鈴木さんは歌う前に具体的なイメージは固めていたんですか。

鈴木:なかったですね。曲のパワーでその世界につれていってもらっているので。今までの私だったら、実際の自分の感覚じゃないと泣けなかったりするんですけど、この曲は歌いだして3秒くらいで「昨日失恋した子」のモードに入れるんですよ。だから特になにも考えずに手ぶらで歌えるというか。なにも考えずに歌っても泣きそうになれるんです。失恋したときって失恋曲で泣きたい女の子もいると思うんですけど、そういう子はすごく泣けると思います。自分で歌うことでより曲に入れるから、ぜひ家でひとりで歌って泣いてほしいです(笑)!

杏沙子:嬉しいです。

鈴木:歌い終わった後、なんだかすごく浄化されます。本当に素敵な曲に出会えてよかったと思いますし、自分の歌い方としても成長させていただいた曲なので、出会いに感謝です。

杏沙子:私自身、私の曲として聴いてほしいとは思っていなくて、聴いてくれている方とか歌おうとしてくれている方の曲にしてほしいと思って曲を作っているんです。だからまさに歌ってほしいし、こうやって愛理さんの色に染めてもらったり、他のカバーしてくださる方の色に染めてもらうのが本望なので、なによりですね。

鈴木:ライブでこの曲を歌ったとき、「愛理ちゃん最近こういう失恋したのかな、大丈夫かな」っていうツイートがたくさんあったんですよ。実際はなにもないんですけど(笑)、みんながそうやって心配してくれるくらい曲のパワーがあるんです。

恋愛ソングは“周りが見えなくなる曲”が最高?

――「見る目ないなぁ」は実体験を元にされていますけど、おふたりは普段歌詞を書くときや歌ったりパフォーマンスするとき、ご自分の実体験や恋愛観をどこまで反映させているんですか?

鈴木:ここ1年くらいの考えなんですけど、そのときの自分の感覚とか、どの場所でどの曲を歌うかによって曲の内容、伝えたいことって変わってくるなと思っていて。例えば恋愛ソングでも今は大事なファンに向けて歌いたいっていう気持ちになったり、本当は前向きな曲だけど、すごくつらいときに刺さる言葉として送りたいと思ったり。その時々で1曲の中で刺さるポイントが違うなって思うので、言葉を大事に伝えるように歌っていきたいというのが最近の考え方です。だから私は、ライブでは曲を通して今の自分の気持ちを伝えたいですね。

――杏沙子さんはそれに共通する部分ってありますか?

杏沙子:今の自分を投影させるっていうのは、私はそうじゃないとだめな性格だと思います。自分に嘘をつけないタイプなので。

鈴木:うんうん。私も去年の目標、「自分に嘘をつかない」でした。

杏沙子:それは歌にも出てしまうから今歌いたい曲も変わるし、愛理さんがおっしゃったように、書いたときはそういうメッセージじゃなかったけど、今だったらこう聞こえるなみたいなものを大事にしたいからその曲をセレクトして歌うこともあるので、曲を書くときも歌うときも、正直に言葉を選んだり歌ったりすることが多いですね。完全に自分の経験を書くわけではないんですけど、そこから感じたことを書いていくみたいなことが多いです。

鈴木:でも「見る目ないなぁ」とか恋愛ソングを歌うときは、今の自分とか関係なくその曲に乗せられた感情に没入することが多いかもしれないです。外に発信するよりは自分に問うというか、自分自身に向き合う感覚で。周りの人が見えなくなる感じで歌うことが多いです。

杏沙子:わかります。私の曲には周りが見えなくなる曲が多くて。

鈴木:最高です! 周りが見えなくなる曲。

杏沙子:矢印が外向きっていうよりは内に向いていることが多いですけど、ライブで聴いてくれる方が目の前にいると、仲間意識じゃないけど、大丈夫だよっていう気持ちで歌うことが最近は増えてきたかもしれないですね。「見る目ないなぁ」の感想で、「すごく切ないし悲しいし自分の失恋したときのことを思い出すんだけど、なんだか優しく包んでくれるような感じがする」というようなものをいくつかもらっていて。それを見てからは外向きでも歌うようになりました。

鈴木愛理(写真=村上麗奈)

――おふたりの曲にはいろんなタイプの恋愛の曲があると思うんですけど、こういう恋愛の曲が自分自身の性格と一致するなと思うのはどんな曲ですか?

鈴木:それこそ「見る目ないなぁ」って一見すごく悩んでいるように見えるけど、自分の芯がちゃんとあって、ちょっと「なにくそ!」みたいな感じじゃないですか(笑)。

杏沙子:そうですそうです。

鈴木:「なんだよこの!」って思いながら、そんなことを思ってる自分も嫌になって泣いてるみたいな、自分の中に芯がある女の子が主人公で。そういうものが結構近いなと思います。強がりというか……私は強がりではないんですけど、「もうだめ、誰か助けて」という感じより、1人でもがいているような曲の方が入り込みやすい印象はあります。……こんな話するの初めてですよ。恥ずかしい!

杏沙子:私は愛理さんの「きみにだけ人見知り」を聴いて、すごく似ているなって思いまた。私はめちゃくちゃ強がるタイプで、好きな人とか気になる人に対してツンケンしちゃうんですよ。

鈴木:可愛いですね!

杏沙子:(笑)。好きな人に対してだけすごく挙動不審になって、全然可愛くいられないタイプなので、聴いていてすごくわかるなと思いました(笑)。

鈴木:この曲も『26/27』に入っているんですけど、インスタライブでファンのみなさんの恋愛事情を聞いた上で作った曲なんです。「この世の中でみんなが会えていたはずの人に会えなくなったけど、最近の恋愛どう?」ってみんなに聞いてみたら、「私は電話してます」とか「次に会うときまでにダイエット頑張ります」とかそういう話が聞けて。その中で「ずっと近かった人こそ次に会ったときが一番恥ずかしい」みたいな感覚の子がいたので、それを軸に物語を作りました。話を聞いていて、いろんな人がいるんだなぁと思いましたね。

杏沙子:まさに私でしたね。刺さりました。

鈴木:でも近い距離感の人ほど恥ずかしいというのは若干わかります。私も学校の教卓とかめっちゃ苦手でした。関係ないかな(笑)?

杏沙子:どういうことですか(笑)?

鈴木:ライブで大きいステージに立って話すよりも、普段教室で足並み揃えている友達とかの前で発表する方が苦手で。顔が真っ赤になっちゃうタイプだったんですよね。改めて格好つけたりするのが恥ずかしいみたいな気持ちがあったので、全くわからない世界観ではなかったですね。ベクトルは違うかもしれないですけど。

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