Fickle Friendsが語る、2ndアルバムに込めた80~90年代のきらめき コロナ禍での複雑な心境も

Fickle Friendsが語るコロナ禍での制作

 英ブライトンを拠点として活動するインディポップバンド、Fickle Friends。全英トップ10を達成したデビューアルバム『You Are Someone Else』から4年、2ndアルバム『Are We Gonna Be Alright?』がついにリリースされる。新型コロナウイルスの影響による影響で、半ば強制的に変化を迫られ活動が制限される中、2ndアルバムの制作にしても今までと同じスタイルで行うことは困難だった。暗い影が落ちるような、そんな時代においてもFickle Friendsは心惹かれた80年代後半から90年代前半のカルチャーが持っていたきらめきを取り込み、光を放っている。

 こんな時代だからこそ光が必要で、集まることができないからこそ、その素晴らしさを実感する。再び動き始めたFickle Friendsより、ボーカリストのナッティ・シャイナー(Natti Shiner)にこの4年間のこと、80〜90年代のカルチャー、そしてコロナ禍で作り上げられた2ndアルバムについて話を聞いた。(Casanova.S)

現時点で私たちが出した結論は、ただ普通に幸せになりたい

ーーデビューアルバム『You Are Someone Else』のリリースから4年が経とうとしています。その時から色々と状況が変わったと思いますが、振り返ってみていかがですか?

ナッティ・シャイナー(以下、ナッティ):なんか記憶が曖昧なんだよね(笑)。特に2020〜2021年の2年は、あまりにおかしすぎたから。最初の2年はまあまあだったけどね。しばらく休んだ後、2ndアルバムに向けて新しいことを色々試したりしていてさ。 でも、そうこうしてたらコロナでしょ? 2ndも本来なら2年前にはリリースしていたはずだったけど、結果この通り。ただ、ある意味ではこれで良かったとも思ってる。あのまま何事もなく2年前に2ndを出していたら今回とは違う作品になっていただろうし。それと同時に今まで以上に自分が音楽をやっていることに感謝するようになった。今みたいな時代だからこそ、気持ちを曲にして吐き出すことで救われた気分になったから。

ーーもともと2ndアルバムとして発表予定だったという2枚のEP『Weird Years (Season 1)』と『Weird Years (Season 2)』をリリースすることになった経緯を教えてください。この柔軟な動きはインディ的なDIY精神とユーモアに溢れていて、とても魅力的に映りました。

ナッティ:何もできないからと言って、完全に活動をストップしちゃうのはイヤだったんだよね。自分たちには音楽しかないっていうのに、それすら奪われたら本当気が狂うから(笑)。もともと2ndアルバムになるはずだった作品も半分ぐらいは完成していたんだけど、ロックダウンで身動きが取れない状態になって。そういう状況でもファンに忘れられないようにするためにはどうしたらいいだろうと考えて、EPを2枚に分けて出すっていう作戦に切り替えたんだよね。でも身動きが取れない状況だったから、ミュージックビデオとかも全部自分たちでやるしかなくて。だけど、クリエイティブにならざるを得なくなったからかえって良かったよ。もともと超DIYからスタートしてるバンドだから、その頃に戻ったみたいだった。サポートなんて一切なくて、音楽にアートワークにビデオ制作まで、全部自分たちでやり遂げていたからね。だから悪いことばかりではなかったんだけど、やっぱりおかしな時期ではあったよ。ライブができないのも辛かったし。そういえば、実は日本にも行く予定だったんだよ! 2020年9月に日本とアジアのツアーが決まっていたのに……あのときは本当にガッカリした。

Fickle Friends – Won’t Hurt Myself (Official Video)

ーー2ndアルバムの制作過程についても教えてください。具体的にどのようなことでパンデミックの影響を受けましたか?

ナッティ:本来ならスタジオに1カ月くらい篭ってみんなで一緒にレコーディングできたら良かったんだけど、それができない状況だったから、全部自分たちでやるしかなかった。幸いにも私たちのバンドは宅録に馴れていたから、他のバンドと比べて制作面のダメージは少なかったと思う。でもやっぱりみんなで集まってレコーディングできないっていうのは寂しかったな。

 1stのときは4人でアメリカに行って作ったけど、今回はジャック(・ウィルソン)と彼の家にあるスタジオで2人だったから……でも、基本お互い好きなことやろうねって姿勢でやってたんだよね。ジャンルとかルールとか一切なしで、自分たちの作りたい曲を作ろうって。壁にぶち当たるまで書いて書いて書きまくって、結果的には全部で40曲くらい作って、その中から一番気に入った12曲を選んだのが今回のアルバムなんだ。

ーーアルバムを作る上でインスピレーションの元になったものはなんですか?

ナッティ:インスピレーションというかアルバムはこの4年間の日記みたいなもので、メンバー全員マジで色々あった激動の4年だったから。ただでさえ人生で大きな変化を迎えようとする時期に、追い討ちをかけるみたいにパンデミックがあって、音楽とも友達とも完全に切り離されて、本当に身が引き裂かれるくらい人生で一番しんどかった時期だった。だから、どん底の状態でわずかに残された人間関係とか、自分の人生を少しでも明るく照らしてくれるものに感謝したい気持ちになったんだよね。その時期はセラピーに通うぐらいメンタルが限界で、毎晩寝る前に日記を書いて、とにかく自分の頭を空っぽにする必要があった。だからネタに困るってことはなかった(笑)。今回のアルバムタイトル『Are We Gonna Be Alright?』(=私たちって大丈夫だよね?)は、まさにいま言ったみたいなこと全部を言い表すような言葉だと思うんだ。何か一つの意味に限定されていないし、自分が今こうして生きている目的について質問を投げかけるような言葉というか、何のために生きて、人生で何を得たいのか? を考えるような言葉というか。その上で、とりあえず現時点で私たちが出した結論は、ただ普通に幸せになりたいっていう。それをひたすら追求してるのが今回のアルバムなんだ。

Fickle Friends – Love You to Death (Official Audio)

ーーアルバムにも収録されている「Pretty Great」のシングルのアートワークはラジカセ、「Love You To Death」のオフィシャルオーディオ映像はビデオテープと、時代を象徴するようなアイテムを使い意識的に80年代や90年代を表現しているように感じますが、Fickle Friendsにとって80年代、90年代とはどのような時代なのでしょうか?

ナッティ:昔から80年代から90年代初期に妙に惹かれるんだよね。バンドを始めたきっかけも、メンバー全員がマイケル・ジャクソンの大ファンだったからというのもあるし。あの時代のプロダクションというかサウンドが好きで、それを自分たちの音にも取り込みたいと思ったんだよね。何がそんなにツボなのかわからないけど、あの時代のカルチャー全般……特に80〜90年代の映画とかかな? ちょうどいまホラー映画にハマってて、『スクリーム』や『キャリー』、ジョン・ウォーターズの作品とか。あと『すてきな片想い』に『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』、 『フェリスはある朝突然に』とかなんだけど、何がそんなに好きなんだろうね? なんとなく良い時代だったんだろうなって想像するんだよ。自分が90年代生まれだからというのも関係してるけど。その反面、今の時代はどこか冷めてるっていうか……音楽も今だったらSpotifyとかストリーミングが主流だけど、あの時代はウォークマンやカセット、レコードとかで聴いてたわけでしょ? 形があって触れることができる、実体がある感じ。実際にレコードを手に取ってプレイヤーに乗せて、そこから音楽が流れてくる、その一連の動作がすごくいいんだよね。そういうのもあって、昔からあの時代の音楽に惹かれていると思う。

 あの時代のサウンドが好きだから、自分たちがそういう時代に現役で活動してるバンドだったらってこっそり想像しながら音楽を作ったりするしさ(笑)。そう言えば今回のアートワークを作る時にいくつか参考になるイメージを集めてたんだけど、それで90年代の日本の広告にめちゃくちゃハマったんだよね。特にウォークマンの広告。全体的なルックスとか色使いとか衣装とか、デザインも当時のアメリカの広告よりもクールで洗練されていて、これこそまさに今回のアルバムに求めているイメージそのものだってなったんだよね。

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