菅田将暉「ラストシーン」、ドラマ『日本沈没』に重なるだけではない楽曲 石崎ひゅーいとの理想的な関係性も

菅田将暉「ラストシーン」レビュー

 菅田将暉がニューシングル『ラストシーン』をリリースした。表題曲の「ラストシーン」は重厚なバラード。作詞作曲は石崎ひゅーい、編曲は石崎も信頼を寄せるトオミヨウだ。

 石崎が菅田に楽曲を提供するのは今回で5回目。そのほかにも菅田が書いた歌詞に石崎がメロディをつけた「いいんだよ、きっと」という曲があったり、菅田将暉×石崎ひゅーいとして中島みゆきの「糸」をカバーしたりと、2人は幾度となくタッグを組んでいる。

 特に、ドラマ『トドメの接吻』主題歌「さよならエレジー」や映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌「虹」は菅田の代表曲と言える存在となった。「(『トドメの接吻』主演俳優で菅田にとっては古くからの友人でもある)山﨑賢人のために書きたい」という菅田の意思を受け取り、石崎が制作した「さよならエレジー」は、石崎の菅田に向けた想いも入った1曲に(※1)。ドラマの世界観を彷彿とさせる切ない曲調の中に、芯の通った言葉を挿入したこの曲は、色気と気骨を兼ね備える菅田将暉の人間性にも重なるものだった。家族愛という大きなテーマに向き合った「虹」は、石崎にとっても大きな挑戦であり、菅田の意見をきっかけに全体の方向性が定まったとのこと(※2)。〈一生そばにいるから 一生そばにいて〉というシンプルで温かいフレーズは、これからも全国で口ずさまれ、老若男女に愛されていくことだろう。

 そして今回の「ラストシーン」。この曲は、ドラマ『日本沈没―希望のひと―』(TBS系)の主題歌として現在オンエア中だ。ドラマの原作は、1973年に刊行された小松左京の小説『日本沈没』。重心の低いバンドサウンド、ドラマティックなストリングスによる音像は歴史の厚みを表現するようだ。

菅田将暉『ラストシーン』

 日本沈没という未だかつてない困難を前に奔走する人々を描く『日本沈没―希望のひと―』で主演を務めるのは小栗旬。政治的な思惑・しがらみにもどかしさを感じながらも、“何よりも人の命を優先するべきだ”という信念を胸に行動する環境省官僚・天海啓示を演じる。主題歌である「ラストシーン」の佇まいは、この天海という人物を彷彿とさせるもの。抑制の効いたA~Bメロを経て〈戦うのさ 僕らは強く生きるため〉と意志を歌う菅田のボーカルは力強いが、サビのラスト、〈似た者同士だねって笑う、そんな景色だ〉と歌う声はどこか素朴で、日常を慈しむ気持ちが滲んでいる。また、小栗との共演機会も多い菅田の目には俳優・小栗旬自体が“信念を胸に戦う人”として映っていることだろう。そうなると、「ラストシーン」は天海啓示の歌であり、小栗旬の歌でもあるのかもしれない。

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