石崎ひゅーい、悲しみやせつなさを体現した「さよならエレジー」 8年ぶり『Mステ』生パフォーマンスを見て
魂をわしづかみにされた気持ちになった。
2月19日、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演した石崎ひゅーいは、アコースティックギター1本で「さよならエレジー」を弾き語った。きらびやかな照明の下、たったひとりでマイクに向かい、叫ぶひゅーい。画面の向こう側から、どうしようもない孤独感と、どうしようもない痛みの感情がにじみ、噴き出していた。週末のゴールデンタイムに全国の家庭にオンエアされたこの歌を、みんな、どんなふうに聴いていたのだろうか。すさまじいパフォーマンスだった。
この日の『ミュージックステーション』は「恋うた3時間SP」と題された企画とともに放送された。それにひゅーいが出演すると聞いて、僕も楽しみにしていた。その時、彼が前回にこの番組に出演したのが2013年のことと知り、「そうか、そんなに前になるんだ」と、少し感慨深くもなった。
ひゅーいは2012年に『第三惑星交響曲』メジャーデビューを果たし、代表曲の一つと言える「花瓶の花」などでロックファンから支持を受け、俳優としても活躍してきた。菅田将暉へ「さよならエレジー」の楽曲提供したことを機に、さらに広い層のリスナーに届いていると言えるだろう。
だが、今回歌うのがその「さよならエレジー」と知り、これにはちょっと驚いた。2018年、この曲はリリース直後から熱い反響を集め、同年屈指のヒットソングとなる。もともと、ひゅーいの歌のファンで(「花瓶の花」がとくに好きだとのこと)、雑誌の対談などを通じて彼と親交を深めていた菅田の念願がかなった歌でもあった。
思えばこの2018年はひゅーいと菅田の関係において記念すべき年だった。「さよならエレジー」のリリースの直後には、ひゅーいの楽曲「ピリオド」のMVに菅田が出演している。初のベスト盤『Huwie Best』に収録された、繊細なバラードだ。
そして「さよならエレジー」が大ヒットを記録する中、しばらく後にひゅーい自身がこの歌をセルフカバーする。今回の『Mステ』でもそのシーンが一瞬流れたように、2018年9月1日、東京キネマ倶楽部でのライブで初めて披露したのだ。僕もこの場にいたのだが、演奏時のフロアの熱狂ぶりはもう大変なものだった。
この時のアレンジは、ギターの印象的なリフに象徴されるように、菅田のバージョンに寄せたものになっている。それもそのはず、この曲のアレンジを手がけたトオミヨウは、ひゅーいを初期から支えてきたミュージシャンで、バックを務めるバンドのリーダーでもあった。つまり「さよならエレジー」自体が、菅田とひゅーいプロジェクトとのコラボだったのだ。
やがて、ひゅーいが配信でこの曲をリリースした際も、この時のアレンジと地続きの仕上がりになっていた(さらに翌2019年春、ミニアルバム『ゴールデンエイジ』に収録)。
ただ、それからは2年以上の時間が経過しているし、ほかの曲も世に出ている。だから今回の『Mステ』でひゅーいが「さよならエレジー」を歌うのは意外に思ったのだ。別の候補を考えてみると、ここで歌う曲としては、同じく菅田に書いた「虹」のセルフカバーもありだったのではと思う。昨年、大きな話題を呼んだ映画『STAND BY ME ドラえもん2』の主題歌だ。
あるいは昨秋発表した「Flowers」も考えられたし、もうひとつ菅田絡みで考えれば中島みゆきの「糸」のカバーも可能性としてありそうだ(もっとも後者は昨年夏、両者の共演という形でTBS系の『CDTVライブ!ライブ!』で演奏されているが)。
しかし今回ひゅーいが歌ったのは「さよならエレジー」で、しかも弾き語り。結果、それは壮絶な歌となり、冬の夜の日本全国を走ったのだった。
ちなみに、ひゅーいの弾き語りバージョンによる同曲は、先日、YouTubeの企画「THE FIRST TAKE」で披露されている。同企画では「花瓶の花」も公開されているので、ぜひチェックしてみてほしい。