斉藤和義、普遍性と時代性を同時に伝えるステージ 『202020』『55 STONES』携えた全国ツアーファイナル

斉藤和義、ツアーで伝えた普遍性と時代性

 60年代、70年代、80年代のルーツ音楽を血と肉にし、今の気分やムードを反映しながら、いろいろな感情ーー楽しさ、悔しさ、切なさ、怒り、享楽、バカバカしさーーを呼び起こす日本語の歌に結びつける。“これぞ日本のポップミュージック!”と快哉を叫びたくなる、素晴らしいコンサートだった。

 斉藤和義全国ツアー『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 “202020 & 55 STONES”』のファイナルとなる、東京・国際フォーラム ホールA公演(10月30、31日)。タイトル通り、20thアルバム『202020』(2020年1月)、21stアルバム『55 STONES』(2021年3月)の2作を引っ提げたツアーだ。昨年から今年にかけてコロナ禍により何度も公演延期を余儀なくされたが、感染状況もやや落ち着いてきたなか、(マスク着用、声出し禁止、公演中の換気などを行いつつ)オーディエンスも思う存分、“2021年の斉藤和義”を体感できたと思う。

 ライブはアルバム『55 STONES』の1曲目に収められた「BEHIND THE MASK」からスタート。マイケル・ジャクソン、エリック・クラプトンもカバーしたYMOの”ロックンロール”を原曲に近いボーカルエフェクトで披露し、オーディエンスもハンドクラップで盛り上がる。さらに80’sニューウェイブとサーフロックが混ざり合う「Strange man」(『55 STONES』)、直線的なエイトビートと奇妙なギターリフ、〈足りない自分撃ち抜いて/本当と嘘を見極めて〉というラインが共鳴する「アレ」(『202020』)を演奏。冒頭から2枚のアルバムの魅力を強く感じられるシーンが続いた。

 「何回延期になったんだって感じですけど、やあやあやあ、ようこそようこそ」「(コロナ禍でのライブに)こっちも慣れてきて。前よりも一体感があるような気もして」というMCのあとは、穏やかな解放感が気持ちいい「純風」(『55 STONES』)、真壁陽平(Gt)のスティールギターを活かした「一緒なふたり」(『55 STONES』)とカントリー、ブルースの色味を帯びた楽曲へ。松本ジュン(Key)の憂いを帯びたピアノからはじまったバラードナンバー「彼女」では、恋人を失った男の悲哀と後悔を叙情豊かに描き出し、「Lucky Cat Blues」(『55 STONES』)ではサイケデリックな混沌、そして打ち込みのトラックを取り入れた「魔法のオルゴール」(『55 STONES』)では斉藤和義流のオルタナカントリーと呼びたくなる音像が出現。幅広いルーツミュージックと独創的なアイデアを兼ね備えた楽曲、多彩なサウンドを生き生きと表現するバンドの演奏によって、ぐいぐいと引き込まれていく。演出に頼らず、音楽そのものがエンターテインメントにつながっていく圧巻のステージだ。

 換気タイムを兼ねたMCコーナーで「(NHK連続テレビ小説)『おかえりモネ』を見てたんだけど、これが深い話で、すごくよかった」というユルっとしたトークを挟み、後期The Beatlesを想起させる新曲「Over the Season」からライブは後半へ。アコギとブルースハープを鳴らしながら、コロナ禍で経験したこと、感じたことをドキュメンタリーのように綴った「2020DIARY」、雨の風景のなかで、センチメンタルな心象を映し出す「レインダンス」、華やかなポップチューン「シグナル」と、ここでもアルバム『55 STONES』の楽曲を次々と放った。

 「昨日もずっとギターを作ってたんだけど、どうしても音が出ない」という愚痴(?)とバンドメンバーのセッションに導かれた「万事休す」からは、アルバム『202020』の楽曲を連発。ジャズ、ブルース、ロックンロールが刺激的に混ざり合う「シャーク」、真壁のVan Halen直系のギターソロからはじまった「Room Number 999」など、バンドとしての魅力がダイレクトに感じられる場面が続いた。山口寛雄(Ba)、平里修一(Dr)による強靭なグルーヴ、多彩なテクニックと爆発的なダイナミズムを併せ持った真壁のギター、幅広い表現力を感じさせる松本の鍵盤によるアンサンブルはまさに鉄壁だった。

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