国内外で注目集めるジャパニーズ・シティポップ コンピ盤『ALDELIGHT CITY』点と点を線で繋ぐ試み

『ALDELIGHT CITY』レビュー

 以下、本コンピで特に注目して聴いてもらいたい数曲をピックアップしておく。

・DISC1-1「君は天然色 (40th Anniversary Version)」大瀧詠一

 今年発売40周年を迎えた名作『A LONG VACATION』のプロモーション用に制作されたドラムカウント入りバージョン。これが初CD化とのこと。

・DISC1-4「バイブレイション(Single Version)」笠井紀美子

 1977年のアルバム『TOKYO SPECIAL』収録。山下達郎「LOVE CEREBRATION」原曲として知られるが、さらに遡ればアルファレコードからリリースされるはずだったアメリカ人女性シンガー、リンダ・キャリエールの幻のアルバムへの提供曲でもあった(笠井バージョンは安井かずみが新たに日本語で作詞)。

・DISC1-16「恋は流星 Part 2」吉田美奈子

 アルバム・バージョンは山下達郎との共同プロデュース作『TWILIGHT ZONE』(1977年)収録。アルバムと同日に7インチ・シングルで発売されたこの曲はカップリングがドラムブレイクからスタジオジャムへと展開する「Part 2」で、オリジナルの7インチは以前からコレクターズ・アイテムとして取引されている。「Part 1」と続けてCDに収録されるのは今回が初めてとのこと。

・DISC 2-1「RIDE ON TIME」Rainych × evening cinema

 松原みき「真夜中のドア~stay with me」を日本語で歌い世界的に大ヒットさせたインドネシアの女性YouTuber・Rainychと、TikTok経由でいまや世界的なバイラル人気を誇る現代シティポップ・バンドとなったevening cinemaの共演で、しかも楽曲が山下達郎屈指の名曲という。ディスク2冒頭から4曲目「BLUE LAGOON 2003 -Hot Summer Breeze-」までのカバー曲の流れは現代への誘導を担うものだ。

・DISC 2-5「恋のレスキュー隊」PLATINUM 900

 1990年代後半に活動し、残した作品の再発が待ち望まれていた彼ら。今年、唯一のアルバム『フリー(アット・ラスト)』(1999年)がアナログ/CDで復刻され大きな話題を呼んだが、この曲は同作の2年前にリリースされていたデビュー・ミニアルバム『プラチナム航空900便』冒頭を飾った1曲。もともとがCDでの発売のため“初CD化”という表現にはならないが、オリジナル盤は入手困難だし、収録をひそかに喜んでいる人は多いはず。

・DISC 2-10「PINK SHADOW」ブレッド&バター

 デビューから52年目を迎えたブレッド&バター。1974年リリースのシングル「ピンク・シャドウ」は、すでに70年代に山下達郎もライブ・アルバム『IT'S A POPPIN' TIME』(1978年)でカバーしていたほどのシティポップ・クラシックだが、今回は1998年にカーネーションをバックに迎えた再録バージョン(こちらも今年7インチのみで先行リリースされていた)を収録。温故知新の可能性を自ら更新し続ける彼ら。そもそもディスク2に大ベテランのブレッド&バターが入っていて何の違和感もないこと自体が奇跡だ。

 国内外での発掘の進み具合や現代の流行と密接に関係しながら過去の“いい曲”の基準や解釈がどんどん変わっていく。現在も過去も同時に動いていくダイナミズムが生まれるとそのブームはなかなかしぶといし、いずれはボサノヴァみたいに時代を超えた感覚として定着する未来があるのかもしれない。このコンピレーションがシリーズ化されるのかはわからないが、2022年、23年、あるいは2030年、2050年と、この先も変わっていくセンスでの選曲をそのときどきで見ることができたら楽しいだろうな。

■リリース情報
『ALDELIGHT CITY-A New Standard For Japanese Pop 1975-2021-』
発売日:2021年10月27日(水)
価格:¥3,520(税込)
品番:MHCL 2948-9  CD2枚組

特設サイト
https://www.110107.com/s/oto/page/ALDELIGHTCITY?ima=3025

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