あくにゃん×田中絵里菜が考える、日韓アイドルの違いとそれぞれの面白さ

あくにゃん×田中絵里菜対談

グローバル人気を得る中で求められること

――K-POPファンがプロデューサー気質なのは、“プデュ”(『PRODUCE 101』シリーズ)ブームも関係していそうですね。

田中:そうですね。“プデュ”で生まれたグループは、まさに「自分で投票して作った」という意識が強いです。“プデュ”は単純に「このメンバーが好きだから投票する」というだけではなくて、グループのバランスを考えるような人も出てきて。「このメンバーに入って欲しくないから、全然関係ない人に投票して順位を下げたい」と考えて、ランキング外だった子が、突然上がったりという歪みが起きたこともありました。“プデュ”ブームはそういうグループの全体像を考える人が増えたきっかけではあるのかなと思います。

あくにゃん:“日プ”(『PRODUCE 101 JAPAN』)でも、グループの全体像を考えて投票する人がいたようです。投票に対する熱量が高まった結果、軽い気持ちで「日プ気になる!」とツイートしたら、そこに「この子に投票お願いします」というDMが一気に飛んできたり、逆に「この子には投票しないでください」とDMが来たり……本当に選挙みたいな感じで。

田中:あまりにも過激になったので、韓国は規制を出してました。これもアウトタグと似たようなものだと思うんですよね。

あくにゃん:アイドルたるもの清廉潔白でいてほしいというのは、日韓共通なんでしょうか。

田中:そうですね。それがより厳しくなっている感じがします。ネットで過去の画像が出回りやすくなってしまったので、昔よりバレやすいというか。韓国で一時期問題になった“いじめ”も昔の話だし、どこまでが真実なのかはわからない。アイドルだからといってどこまで品行方正な姿を求めるのか、というのも含めて、すごく難しい問題だなと思います。

あくにゃん:最近、若い子が何でもかんでもSNSにあげちゃうから、“デジタルタトゥー”を残させたくなくて事務所に入れるという親もいるらしくて。

田中:確かに練習生をやっていると、その辺の意識がちょっと違うかもしれません。

あくにゃん:あと、韓国のグループは社会貢献をする側面もあるじゃないですか。日本だと、Tシャツでアピールしたり、炊き出しに行ったりはありますが、発言をする機会はまだ少なくて。ファンが過剰に求めすぎるのはよくないとは思いますが、寄付もしたりしているのはK-POPグループのいいところだなと思って見ています。

田中:それは社会からのプレッシャーもある気がしていて。“お金を持っている人は社会に還元しなければいけない”みたいな意識が社会全体にあるように思います。アイドルに限らず、俳優や芸能人など、著名人は災害が起きたら国内外問わず寄付をしてアピールする。最近は特にBTSが取り上げられたりしていますが、「韓国の芸能人たるもの」という風潮は以前からあったので、それは若い子からしたら時にプレッシャーでもあるのかなと。若い頃から社会意識を持つのは大変だろうなと思いつつ、感心しています。

あくにゃん:日本の場合は、大っぴらに言わないで、実は寄付してました、実は被災地を訪れていました、というのが好まれている気がして。韓国はむしろ一種のPRにもなっていますよね。そこが文化の違いで、今の日本にはそのロールモデルがいないんだろうなと思います。

田中:BLM運動が起きた時も、韓国の場合、海外にファンが多いこともあると思うんですけど「ブラックミュージックやヒップホップをやっているんだから早く声明を出せ」という空気があって。一方で、日本の芸能人がツイートしていると、煙たがられていた印象があったり、世間の受け取り方も違いますよね。政治的なことを言う人、みたいにレッテルが貼られてしまうから、言いにくい雰囲気があるなと思いました。グローバル人気が出て、海外のファンが増えたら変わるのかもしれませんね。

あくにゃん:日本で自然災害などに向き合うことが許されている雰囲気なのは、『24時間テレビ』のメインパーソナリティにジャニーズが起用されていることも大きいのかなと思っています。でも本当に、世界的に人気が出ると気にしなければいけないことが多くなりますよね。過去に発表した曲の歌詞に対して謝罪をするグループも出てきていますし、世界に開かれるとこうなるんだなと。

田中:K-POPグループも、国内だけで人気があった時は指摘されていなかったことが、近年、文化の盗用について海外の意識が高まっているのもあり、許されなかったり。韓国はそういう意識にがんばって追いつこうとしているところです。

――日本でもグローバルに進出していきたいというグループが増えていますが、そのために何が必要だと思いますか?

あくにゃん:海外だと、そもそも大人数のアイドルが少ないから、売り方がわからなかったりして、そもそも流行る国が現段階では、まだ限られているのかなと思います。でもドラマの影響でジャニーズを知っているアジア圏のファンも多いですし、微博(中国のSNS)を木村拓哉さんやSnow Manがしていますし、着々と進めている印象です。

田中:あまり知られてないだけで、アジア圏ではすでに人気だったりしますよね。韓国にもジャニーズファンは多いです。私の周りは嵐のファンばかりでした(笑)。

あくにゃん:世界中でどれだけジャニーズが支持されているかというのはまだ日本国内でも十分には、可視化されていないですよね。

田中:K-POP自体、ジャニーズからいろいろ学んで発展した文化なので、もともとのアイドルファンの始まりがジャニーズだったという人も多い気がします。

ーー今はK-POPから刺激を受けているグループも多いのではと思います。今後も日韓双方から、新たなチャレンジをするグループが登場するのが楽しみですね。本日はありがとうございました!

■あくにゃん
『ヲタクをするために生きている』をモットーに
ジャニーズや、韓国アイドルをこよなく愛する“ちょろヲタ系”YouTuber
日本全国だけでなく、海外にまで応援しに行く姿がSNS上で話題に。
公式YouTube『あくにゃんちゃんねる!』:https://www.youtube.com/channel/UC-_yybtyNX3kDy7FGgXH9vg
あくにゃんTwitter:@akunyan621

■発売情報
『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』(朝日出版社)
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255012124/

『推しがいなくなっても、ぼくはずっと現場(ここ)にいる―誰も語らなかったアイドルヲタクのリアル』(株式会社主婦の友社)
あくにゃん・著
定価:本体1400円+税
サイズ、ページ数:四六判・192ページ
発売日:2021年3月17日(水)
ISBN:978-4-07-447770-8
【Amazon】https://www.amazon.co.jp/dp/407447770X

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる