Lucky kilimanjaro 熊木幸丸のルーツとは? Macintosh、風来のシレン……クリエイティブに影響与えた4つのアイテムから紐解く

熊木幸丸に影響を与えた4つのアイテム 

 2ndアルバム『DAILY BOP』のリリース以降、東京・日比谷野外大音楽堂ワンマン開催、初の全国ツアー、シングル『踊りの合図』のリリースなど、精力的な活動を展開しているLucky Kilimanjaroが新曲「楽園」を サプライズリリース。熊木幸丸いわく、今作のテーマは「インスタントな楽園」。持続する日々の中で生まれる享楽を、浮遊感のあるサウンドともに描いたという。常にメッセージ性の強い音楽をリスナーに提案してきた熊木の思想・クリエイティブの源泉はどこにあるのか。今回リアルサウンドではそんな熊木のルーツを解き明かすべく、熊木自身に影響を与えた4つのアイテムをピックアップしてもらい話を聞いた。(編集部)

クリエイティブを開花させた「Macintosh」との出会い

ーー今日は熊木さんの人生に影響を与えた4つのアイテムを事前に選んで挙げていただいたので、それらについてのエピソードを伺うとともに、新曲「楽園」についてもお話を聞けたらと思っています。アイテムはPower Macintosh G3、ゲームソフト『不思議のダンジョン 風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!』、シンセサイザー「Roland GAIA SH-01」、そしてダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』(早川書房)。時系列的に言うと、どれに最初に出会いましたか?

熊木幸丸(以下、熊木):最初はPower Mac G3ですね。両親がデザインの仕事をやっているので、小さい頃から家に普通にMacがあったんです。僕が小さい頃はまだ珍しかったんですけど、むしろ僕にとってはMacこそがパソコンっていう感じで、小学校に入ってWindowsに出会った時は全然違ってビックリしました。この青色のG3は、小学校の低学年の頃に、親のお下がりで貰いました。シンプルなお絵かきソフトが入っていたんですけど、元々、絵を描くのが好きだったし、それを使って自分の部屋で絵を描いて遊んでいましたね。自分の手の動きがそのまま画面に反映されていく感じが楽しかったんだろうと思います。なんでもないような絵だったんですけど、それがクリエイティブなことに興味を持ち始めたスタートだったかもしれません。

ーーG3は、形状も可愛らしいですね。1999年に発売された、「Macintosh」という名前が付けられた最後の機体らしいです。そういうところも含めて、今見るとちょっと前時代的な感じもするというか。

熊木:そうなんですよね。見た目も昔のコンピュータっていう感じだし、スペックもやっぱり当時のもので。親はOS10を使っていて、僕はOS8.6というのを使っていたんですけど、自分はOS10じゃないのが悔しくて、このG3にOS10をアップデートしようとしたこともあったんです。でも、スペックがまったく追いついていなくて、アップデートした瞬間に止まっちゃって、古いOSを再インストールしてもらったこともありました(笑)。

ーー今も曲作りなどでMacを使われているんですよね?

熊木:MacBook Proを使っています。思えば、Macには相当依存していますね(笑)。ないと仕事ができないし、自分にとっては一番大事なプロダクトかもしれない。そもそも最初に曲を作り始めたときにLogicを使っていたので、曲を作る体験ともずっと繋がっているんです。3年前くらいから、Ableton Liveというドイツの会社のDAWを使っているんですけど。

ーー変えたのはきっかけがあったんですか?

熊木:きっかけは気まぐれでした。「なんか変えてみたいな」って。それでAbleton Liveを試してみたんですけど、今のほうが直感的に作業できている感じがします。僕、すごくせっかちなんですよ。自分が思いついたことがすぐにできないとイライラしてしまう。なので、曲作りにおいて「速度」は自分にとって大事な要素なんですけど、Ableton Liveはそういう面ですごく自分に合っていますね。

ゲームは生きるヒントのなり得る

ーー次は『不思議のダンジョン 風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!』の話をしていただきましょうか。2000年にNINTENDO64用に発売されたゲームソフトですね。

熊木:小学生の頃はゲームデザイナーになりたいと思っていたくらいゲームが好きで、64で一番やり込んだのが『風来のシレン』だったんです。「トルネコ」や「チョコボ」でも有名な『不思議なダンジョン』シリーズで、いわゆる「ローグライク」と呼ばれるゲームですね。大枠のストーリーはあるけど、ダンジョンはランダムになっていて、基本的にはプレイするたびに同じ感じにはならない。前回OKだったことが今回はダメになるっていうこともある。僕がこのシリーズの好きなところは、ダメだったらちゃんと死ぬところ(笑)。その状況の中でちゃんとした判断をして、ベストを追求していかないとゲームオーバーになってしまう。やり直しは効かない。そのスリリングさが面白かったんですよね。数えきれないくらいプレイしました。

ーー僕が子供の頃はゲームをやっていると怒られる、みたいなイメージもあったんですけど、ゲームから得たもので、生きていくヒントになることも多々ありそうですよね。

熊木:そうなんですよ。特に『風来のシレン』に関しては、今あるリソースで、どうやってその状況を切り抜けるかを考えるのが楽しかったんですけど、そうやってプランを立てていく考え方は今でも役立っていると思います。僕が小さい頃も「ゲームをするなんて無駄なことだ」って言われていましたし、今でもそういう意見はあるんだろうと思うけど、でも、ゲームをやることで思考能力にいい影響を与えることってあると思います。僕は子供ができたら、好きなだけゲームをやらせてあげたいです(笑)。

ーー最近はどんなゲームをやられていますか?

熊木:同じローグライク系でいえば、Switchで出た『HADES』。『風来のシレン』のようなターン性ではなくてアクションゲームなんですけど、グラフィックもよくて気に入ってます。あと『HADES』は死ぬのが前提なんですよ。「死んで強くなる」というよくわからないゲームなんですけど(笑)、新鮮で面白いです。あと『ゼノブレイド』というゲームもすごく好きです。RPGなんですけど、世界観が好きなんですよね。時間軸が複雑で、古い世代の人類と今の人類がつながっている、みたいな感じで、歴史的な大きさを感じられて面白いです。

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