ずっと真夜中でいいのに。『温れ落ち度』に施された壮大な仕掛け ライブ映像で体感する、ACAねの鮮烈なメッセージ

ずとまよ『温れ落ち度』に施された壮大な仕掛け

 ずっと真夜中でいいのに。が『LIVE Blu-ray CLEANING LABO「温れ落ち度」』を9月29日にリリースした。ずとまよ初のライブ映像作品となる今作には、今年5月15日・16日に幕張メッセ幕張イベントホールで行われたワンマンライブ『CLEANING LABO「温れ落ち度」』(2公演×2日間)のうち、最終公演の模様を収録。また、初回限定盤には、昨年11月に行われたワンマンライブ『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)@東京ガーデンシアター2020.11.29』の模様も併せて収録される。

ずっと真夜中でいいのに。『LIVE Blu-ray CLEANING LABO「温れ落ち度」』 Trailer (ZUTOMAYO – CLEANING LABO NUCLEOTIDE)

 有観客ライブとして開催されてからおよそ1カ月後にはWOWOWで放送され、さらなる話題を集めた『温れ落ち度』。最初に目を引くのが大掛かりなステージセットだ。ずとまよといえばクオリティの高いMVを思い浮かべる人も多いと思うが、空間作りに対するこだわりは、ライブ会場という三次元の空間でも健在。そして、そのステージセットは主に3種類のモチーフによって形作られている。一つは、スプレー缶を持ったペインターによる開演前の演出、演者のファッション、ACAねの登場シーンに映ったシャッター扉をはじめとした、“ストリート”のモチーフ。もう一つは、試験管やビーカーといった“実験室”(LABO)のモチーフ。そして、“zutomayo mart”という架空のコンビニの看板、ブラウン管テレビ、観客が持っていたツアーグッズのしゃもじ、ACAねが叩いていた電子レンジ、Open Reel Ensemble(吉田悠、吉田匡がオープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏。DJのスクラッチのような音を奏でる)などの創作楽器といった“家電・生活用品”のモチーフ。ドラム式洗濯機、ステージ上に干されているTシャツなどの“CLEANING”のモチーフも“家電・生活用品”に分類できるだろう。

 ストリート、実験室、家電・生活用品といった3要素が掛け合わさったステージセットは、全体的な印象としてはサイバーパンク的な雰囲気だ。薄暗い照明も相まってどことなく不穏、かつ演者が口元を布などで隠していたり、ステージ上でスモークが焚かれていたりするため、“未知のガスが充満したいち生活区域とその住人”というSF的な世界観を想像してしまう。そんな世界に一筋の光をもたらすのがACAねの歌声。素顔を晒さずともそのパフォーマンスで凛とした存在感を示す姿は、どことなく世界的ポップスター・シーアのライブ演出と通ずるものすらある。

 バンドセットにOpen Reel Ensemble、弦楽カルテット、津軽三味線を加えた特別編成で『温れ落ち度』に臨んだずとまよ。ライブのオープニングを飾った「胸の煙」ではストリングスを大胆に導入し、歌謡曲的な音像に真っ向から挑んだ一方、「機械油」は明らかに実験音楽的な佇まい。また、「彷徨い酔い温度」では観客を巻き込みながら温かな空気を作り(この曲では唯一、ステージからスマホで撮った映像や盛り上がる観客の姿が挿入されている)、「ろんりねす」ではジャジーな手捌きを見せるなど、曲の在り方は実に幅広い。曲ごとに編曲者が異なり、かつ、ライブならではのアレンジも盛り込んだアンコール含めた全20曲を見事に演奏するバンドメンバーはさすがだが、音楽を鳴らすバイオリズムを彼らとしっかり共有し、その上でいつ何時も的確にメロディを射貫いてみせるACAねもすごい。そういう意味でACAねのボーカルには常に驚かされたが、特に印象的だったのが15曲目の「マイノリティ脈絡」。ライブ終盤にも関わらず、ボーカルの譜割りがこれだけ細かい曲を、言葉を粒立たせた状態でちゃんと聴かせられるのは、簡単なことではない。

ずっと真夜中でいいのに。『機械油』(from LIVE Blu-ray CLEANING LABO「温れ落ち度」) ZUTOMAYO – Engine Oil
ずっと真夜中でいいのに。『お勉強しといてよ』(from LIVE Blu-ray CLEANING LABO「温れ落ち度」) ZUTOMAYO – STUDY ME

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