harmoe、Gothic×Luck、NACHERRY……女性声優デュオの活況 2人の組み合わせならではの音楽性が魅力に
アニメのヒットとともに結成される、キャラクターによるユニットやグループが数多く登場し注目を集めている。それらは、アニメの放送終了と同時に活動を終えることが通例だったが、近年ではアニメシーンの活況を受け、放送終了後も活動を続けるユニット/グループも増えてきた。また、それとは別に声優同士でユニットを結成し、音楽活動をスタートさせる場合も。そんな多くのグループによって、アニメ、アニソン、声優シーンそれぞれで盛り上がりを見せている。
今回は、近年結成された女性声優デュオに注目し、それぞれの特徴や音楽性について紐解いていく。
最初に紹介するのはharmoeだ。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(以下『スタァライト』)シリーズなどで共演する、声優の岩田陽葵と小泉萌香によって結成された2人組ユニット・harmoeは、今年3月に1stシングル『きまぐれチクタック』でデビュー。オリジナリティあるコンセプトに沿って彼女らしい道を拓きはじめた。
そのコンセプトとは、ダンスポップミュージックと共にアニメや舞台のような「おとぎ話」の世界観を届けるということ。岩田は幼少期から10年以上に渡りバトントワリングを習っていたほか、小泉は2014年に開催された『アミューズオーディションフェス2014』の歌うま・声優部門でグランプリを獲得。出演する『スタァライト』シリーズや『D4DJ』での舞台・ライブ公演において、2人は指折りのダンスや演技を披露し、各作品においてファンの心を掴んできた。
今春に発売された『きまぐれチクタック』と8月に発表された『マイペースにマーメイド』の楽曲からは、念頭に置かれているのがライブパフォーマンスで、とりわけダンスではないか、ということも伺える。
フューチャーベースやジャージークラブをバックボーンにしたトラックは、プログレッシブハウスやEDMといったアップテンポで攻撃的なサウンドではなく、シンセサイザーは弱い歪みでキックサウンドは軽やか、何より柔らかく鳴らされるワブルベースの揺らぎを活かしたサウンドを特徴としている。
『きまぐれチクタック』の収録曲では、『D4DJ』で思い出されるようなキビキビとした動きが映えそうだが、「マイペースにマーメイド」のようなチルなムードと高揚感を表現するときには、手足を大きく動かしたスローダンスが求められるだろう。YouTubeの公式チャンネルでは、上記2曲のDance Practice動画がアップされているが、こうした動画からも、ユニットの狙いや志向性などを伺い知ることができる。
次に挙げるのはGothic×Luckだ。アニメ『けものフレンズ2』(テレビ東京ほか)より誕生した、カタカケフウチョウ役の八木ましろとカンザシフウチョウ役の菅まどかによる声優ユニットだ。
2018年に『舞台「けものフレンズ」2〜ゆきふるよるのけものたち〜』で共演を果たして以降、『けものフレンズ』関係のイベントなどに出演、アニメ『けものフレンズ2』では前半期・後半期で「星をつなげて」「きみは帰る場所」がそれぞれエンディング曲として起用された。
アニメ終了と同時に活動を終えることが多いなか、彼女らはそういったルートを選ぶことなく、現在でも活動を継続している。2020年3月には初のワンマンライブを開催、2021年4月からは文化放送にてラジオ『Gothic×LuckのGothic×Radio』がスタート、6月30日には2nd EP『おやすみ おはよ』を発表した。
Gothic×Luckとして初めて歌った「星をつなげて」から、アニメのキャラソンという印象を逆手にとり、ファンシーな世界観をグッと広げていくようなポップソングを歌い続けてきた2人。『おやすみ おはよ』に収録された「ユメゴコチ進展系!」は、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也が作曲を手掛けており、今年彼が制作に関わったDIALOGUE+「人生イージー?」やARCANA PROJECT「たゆたえ、七色」といった楽曲とは違い、スネアドラムを中心とした軽快なドラミングや2人の明るい声色を活かしたポップスに仕上がっている。
同曲を中心にした2nd EPは、テイストの違いはあれど基本的にバンドサウンドを中心としており、アニメの世界観との距離感を意識しつつ、Gothic×Luckとしての表現を自分たちで模索するような作品に仕上がっている。