『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』インタビュー
『バンドリ!』ライブはなぜ胸を熱くする? Elements Garden 藤田淳平&菊田大介に聞く、楽曲が出来るまでのバックストーリー
アニメ/ゲーム/コミックなど様々なメディアミックス展開を行う次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』。同プロジェクトの最新ライブアニメーション作品 劇場版『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』が8月20日に劇場公開された。
同作では、リアルバンドとしても活動するPoppin’Party・Roselia・RAISE A SUILEN・Morfonicaと、Afterglow・Pastel*Palettes・ハロー、ハッピーワールド!の計7バンドがライブを展開。そこで披露される楽曲を含め、これまでの楽曲制作をすべて担ってきたのが音楽クリエイター集団 Elements Gardenだ。
リアルサウンドでは、『バンドリ!』楽曲のすべてを監修し、当作品の音楽プロデューサーを務める藤田淳平と、各バンドの楽曲や今作アンコール曲「競宴Red×Violet」を手掛ける菊田大介にメールインタビュー。アンコール曲の制作秘話をはじめ、『バンドリ!』の中心にある音楽作品へのこだわり、各バンドの魅力について聞いた。(編集部)
劇場版『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』特集
Elements Garden 藤田淳平インタビュー
ーー2019年9月に劇場公開された1作目『BanG Dream! FILM LIVE』は、当時の『BanG Dream!(以下、バンドリ!)』シリーズにとっての新たな試みになったと思うのですが、あの作品にどんな魅力を感じましたか?
藤田淳平(以下、藤田):『バンドリ!』の音楽の多様性や、リアルバンドは活動していないバンドも描かれていましたので、『バンドリ!』に初めて触れる方にも楽しんでいただけたのではと思います。また、音楽中心の作品でしたので、楽曲を大切に取り上げていただいたことに感無量でした!
ーー『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』での音楽プロデューサーの役割とは?
藤田:基本的にはすでに制作していた楽曲が採用されるということでしたので、今作においては追加で必要な楽曲や、楽器効果音などの制作を進めました。『バンドリ!』プロジェクトで制作されるオリジナル曲は全て自分が監修しています。いただいたオーダーをくみ取って、そのバンドがどういう解釈で曲を作ったか、また、シナリオから音楽的にどのようにアプローチするかを担当作家(ときには自分自身ですが)と話し合っていきます。また、音源版用のミュージシャンやエンジニアの選定も行います。携わる作家も増えてきましたので、バンド毎の色を損なわないように、かつ新しいチャレンジを続けています。
ーー『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』については、いつ頃から準備をはじめましたか?
藤田:2019年の秋ごろにはお話をいただいていたかと思います。この作品の制作に合わせて特別何かを変えた部分はありませんが、定期的に『バンドリ!』音楽会議は行っていますので、楽曲についての意見交換や、リアルライブの感想を言い合ったりしています。
ーー今回選ばれた曲についての感想を教えてください。
藤田:Elements Garden的には、所属作家がバランスよく携わっていて、よかったなと(笑)。
ーー『バンドリ!』シリーズのリアルライブの中で、特に印象的だった公演や曲はありますか?
藤田:いくつもあるのですが、2019年のRAS(RAISE A SUILEN)の神戸ライブ( 『Heaven and Earth』)は思い出に残っています。公演を通して熱く素晴らしく魅せてくれるライブでした。アニメのワンシーンの再現にもなった、(花園)たえ役の大塚(紗英)さんの登場など、作品とのシンクロもあり、感動した方も多いのではないでしょうか? また、丁度同じくRASの楽曲を多く担当している菊田(大介)君も同行していましたので、帰り道で次のRASや、『バンドリ!』楽曲のアプローチについて協議した思い出があります。
ーー今回の作品の目玉のひとつとして、3種類用意されたアンコール楽曲の存在があります。このアイデアはどんなふうに出てきたものだったのでしょう?
藤田:アンコール曲についてはこういう企画をしようとブシロードミュージック側よりご提案いただいたものです。3曲ともコラボらしくスペシャル感があり、それぞれの音楽要素が入っており大変楽しめる楽曲になったかと思います。なかでも「ラスハピーポー!」(RAISE A SUILEN×ハロー、ハッピーワールド! コラボ曲)は一番両バンドの特性が入っていると思います。同じモチーフを使いながら、音色やスケールで色を出してまるでバトルのように展開していきます。担当は藤間(仁)君ですが、彼の劇伴で培った作編曲の技術が光っていますね。
ーーこうした合同楽曲が映えるのは、シリーズで活動するバンドが増えたことや、各バンドが個性的だからこそのように感じます。これまでの『バンドリ!』シリーズの音楽面での広がりについては、どんなふうに感じていますか?
藤田:各バンドとも、最初期の4〜5曲くらいまでの色を特に重要視しました。どのバンドも楽器構成はほぼ同じですので、その中で違いを出すには、そのバンドは、いったいどんな音楽を聴いてきたのだろうか、とか、どんな文脈のなかでバンドを作ってきたのか、というところが重要になると考えてきました。そのベースの部分があるからこそ、それぞれのバンドの特色が出せていると感じています。
また、カバー曲の魅力もあると思います。カバーアレンジする際も、オリジナルの良さは損なわずに、そのバンドらしくアレンジさせてもらっています。色々なジャンルの楽曲をカバーさせていただくことでさらに音楽的にも広がったと思われます。
みなさんの目に触れないところでも色々な物語が生まれている
ーー藤田さんは以前、リアルライブでのキャストのみなさんの上達や成長に刺激されて、「今度はこんな曲をつくってみよう」とアイデアをもらえる、と話してくれていました。今回の『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』のような作品でも、同じく今後の音楽制作などに刺激を受ける部分はありますでしょうか?
藤田:ああ、あそこのコーレス(コール&レスポンス)は、ちょっと初回だととっつきにくいかな、とか、もう少しテンポが遅くてもよかったかな、ということも思わせてくれますし、ギターソロやドラムフィルも音楽の重要なポイントは全て映像で拾ってくれていましたので、フィーチャーされるのであればその部分はこういう音だったら、映像と相まってもっと派手に見えたかな? など考えてしまいます。常に音源版の仕上がりだけを考えすぎない視点が必要だと心に留めています。
ーーここ数年の『バンドリ!』シリーズは、アニメやゲームで描かれた物語がリアルライブを後押しすることもある一方で、リアルライブから生まれた魅力がアニメやゲームなどに反映されていくこともこれまで以上に増えているように感じます。こうしたシリーズ内の様々な要素のクロスオーバーについても感じていることがあれば教えてください。
藤田:キャストの皆様の努力の賜物かと思います。ライブは一日ですが、仕事の合間にリハーサルや個人練習を重ねています。ファンのみなさんの目に触れないところでも色々な物語が生まれていますので、それが『バンドリ!』制作チームの絆となり原動力となり、各部門で良い結果となってアウトプットされているのだと思います。
ーー完成した『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』を観ての感想はいかがでしたか?
藤田:リアルライブに匹敵する高揚感と楽しさがあります! 見終わった後、しっかりと「ライブを楽しめた」感動が残るんですよね。僕は水分が欲しくなりました! ステージの作り方は現実と同じようにセットされていて、でも現実ではできないギミックもあって。宙を舞ったりする演出なんか最高じゃないですか?
また音響効果の作り込みも、これまでになかった試みかと思われます。リアルライブと違い、映像で見えている部分はどんどん変化していきますので、それに合わせたミキシングをするのは非常に緻密で繊細な作業の繰り返しですので、さすが都田(和志)さん!という感想でした。試写終わりに個人的に色々と技術的な質問をさせていただいたほどです。
ーー『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』の注目ポイントを教えてください。
藤田:キャラクター同士、演奏中に目線を合わせる部分や、曲間のMCなど、演奏以外の部分でも魅力的に描かれていましたね。
ーー『バンドリ!』のリアルバンド4組(Poppin’Party、Roselia、RAISE A SUILEN、Morfonica)は、それぞれ個性のある音楽とライブが印象的です。4バンドそれぞれのどんなところに魅力を感じていますか?
藤田:Poppin’Partyは、キャラクターを演じながら演奏することの難しさに立ち向かっていったパイオニア。しっかりと前へ届ける歌声、演奏の力強さ、笑顔。Roseliaは、イントロ数秒で彼女達のバンドの世界観に惹き込まれます。その雰囲気を、どんな大きな会場でも緊張感を保ったまま最後までやりきってしまうすごさ。
RAISE A SUILENは、演奏の技量はずば抜けています。バンドの音楽的特徴から音楽から入ってくるファンや、海外のリスナーも惹きつけてしまうところ。Morfonicaは、ここ1年での成長は凄まじく、レコーディングで久しぶりに進藤(あまね)さんの歌声を聞いて驚きました。富士急ハイランド・コニファーフォレストでのライブ、楽しみにしてます!
ーー『バンドリ!』シリーズの広がりについて今感じていることを教えてください。また、今の『バンドリ!』でのお仕事にどんな魅力を感じていますか?
藤田:やはりそのスピードの速さでしょうか。これで終わり! ではなく、次のワクワクを常に用意していて、そこに向けてまたチーム一丸となって成長していけるところです。