『バンドリ!』大迫力のライブ映像を実現する制作の裏側 梅津朋美監督×3DCG 森田紘吏インタビュー

『バンドリ!』梅津監督×森田紘吏インタビュー

 2019年に1作目が劇場公開され、声優陣によるバンドがライブを繰り広げる『BanG Dream!』シリーズの「リアルライブ」とは異なる、「アニメーションライブ」として話題となった『BanG Dream! FILM LIVE』シリーズ。その第2作目となる劇場版『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』が完成した。

劇場版「BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage」ロングPV

 監督は前作に引き続き、『BanG Dream! 2nd Season』や『BanG Dream! 3rd Season』に演出や絵コンテなどでかかわってきた梅津朋美氏が担当。リアルライブでキャスト陣が行なってきた様々な公演のライブ音源を活用し、3DCG技術も駆使したアニメーション表現を加えることで、会場のリアルな熱気を感じさせるような作品に仕上げている。登場バンドのコラボによる新曲をそれぞれ使用した、3種類のアンコールが用意されていることも話題だ。

 リアルサウンドでは、『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』を支えるクリエイターたちの連続インタビューを掲載。梅津朋美監督と、3DCGの責任者を務めた森田紘吏スーパーバイザーに、今回の作品に込められた映像面でのこだわりや工夫を聞いた。(杉山仁)

劇場版『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』特集

リアリティを生み出す映像演出における仕掛け

――現在の『BanG Dream!』内には様々なシリーズが存在しています。その中で『BanG Dream! FILM LIVE』(以下『FILM LIVE』)はどんなシリーズだと感じていますか?

梅津:『オールスター感謝祭』のような、「お祭り」的な作品だと思っていますね。ドラマパートがないからこそ、音とキャラ性を全力でぶつけられるシリーズだと思います。

森田:TVシリーズの場合、22分のうち20分ほどが日常シーンで、2分ぐらいが演奏シーンに充てられたりしますが、『FILM LIVE』シリーズは演奏シーンが大半を占めますから、やはり、そこは全然違いますよね。

梅津:だからこそ、前回の『BanG Dream! FILM LIVE』から共通して目指しているのは、「キャラクターがリアルライブをやっていて、視聴者がその世界の観客になれること」です。『BanG Dream!』シリーズのキャラクターたちが、自分たちと同じこの世界のどこかでライブをやっていて、それをライブビューイングで観ている、という体験を目指しています。

――キャストのみなさんが演奏する『BanG Dream!』のリアルライブとまったく同じように、キャラクターがこの世界でライブをする体験を目指しているんですね。

梅津:今回の『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』については、前回からの反省点もリベンジの心で拾い上げていきました。たとえば、リアリティと楽しさを増すために、会場の規模を大きくしたのもそのひとつです。また、前回はステージ周りがガラッとしすぎていたので、今回はその辺りも作り込んでいます。現実の風景って、実は思っている以上に様々なものが置いてありますよね。リアリティを出すためには情報量を増やすことが必要で、たとえば今回用意したものだと、水飲みボックスなどもそうです。水のペットボトルが置いてあることで「ああ、曲間で水を飲んでいるんだろうな」と想像できると思うんですよ。
舞台としてのリアリティだけではなく、水を飲んで汗をかく、彼女たちのリアリティも出せたらな、と。

森田:他には、歌詞を表示するディスプレイなども作品内で再現しています。

――小物までこだわることで、「キャラクターが本当に生きているように感じられる」ということですか。作品をひとつのライブとして見せるために工夫したことはありますか?

梅津:前回のときは、「リアルライブ」というにはバンドごとの転換の時間があまりなく、そこがリアルじゃないと思っていました。そこで、『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』では会場を3カ所用意して、それを中継で繋いでいこうと思っていました。ただ、その構成でライブの熱を繋げていくことは、なかなか難しいと思ったんです。そこで「同じ会場に3つのステージを置いてしまおう」「会場を大きくしよう」と最終的な形を考えました。MCパートにもこだわりましたし、「MCを挟まないでサプライズ的に繋ぐ方がこのバンドらしいな」と思うバンドについては、そのまま始めたりもしています。

森田:また、曲が終わってそれに対して観客が反応したり、曲が始まってまた会場が沸いたりというような「観客のリアクション」もリアルにできたのかな、と思っています。

梅津:これは曲間の繋ぎに限らずですが、前回は観客の動きがリズムに対して一定の動きしか用意できていなかったので、ライブ感を出すための観客の姿が、ずっと一定にしか動いていない状態でした。今観ると「この曲のここはこう動くのに!」と、リアルライブでの観客のみなさんの盛り上がりを表現できていない部分があったんです。今回は、それを表現するためにも、モーションキャプチャーで観客の動きを収録して、リアルライブに慣れている方にも違和感のない動きにできるよう考えました。観客の姿が映ったときにライブ感がそがれてしまうのではなくて、むしろライブ感が増すように、ライブに行ったことのない方でも「ここでこう振ればいいんだな」と分かるぐらいのものにしたいと思っていました。

森田:観客のモーションキャプチャーは実は社内で撮っていまして、リアルライブを経験しているサンジゲンの社員が、楽曲ごとの動きを表現しています。曲を流しながら「いつもライブを観ている通りに動いてほしい」と伝えて、その様子を収録していきました。特別な振り付けがある曲もありますから、それを再現してもらったりもしています。

梅津:観客のモーションを撮影するために丸2日かかりました(笑)。

森田:(笑)。全曲分録っていまして、MCパートのリアクション部分も含めて、すべてモーションキャプチャーで収録したものを使っているんです。

――セットリストについてはどんな基準で選んでいきましたか?

梅津:「ライブで盛り上がる曲」という趣旨で選んでいますね。たたき台のようなセットリストを並べて、ああでもないこうでもないと話し合いました。最初はショート尺だったものの、メンバー全員を映すためにフル尺に変更した曲もありました。編集も私が担当しているので、セットリストについてはシナリオや構成の段階からタイムラインとして存在していて、「曲がこうあって、次にこうなる」と、シナリオ構成の段階から育てていった感じです。

森田:各バンドが出演する順番にも、バンドの色に抑揚があるような印象を受けました。

梅津:バンドの出演順を決める前に、「三角ステージ」と「四角ステージ」で交互に演奏のキャッチボールしていくことを決めていたので、音楽性やバンドの雰囲気的に、「このバンドの後にはこのバンドが出てきた方が繋がりやすいな」ということを考えていきました。「三角ステージはモニターが大きいので、RAS(RAISE A SUILEN)はそっちの方がいいんじゃないか」とか、色んなことを考えています。そんなに悩まずにハマったかな、と思っています。

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