イヤホンズ「はじめまして」手話や多言語で表現するエンターテインメント 目と耳で楽しむEP『identity』先行インタビュー

イヤホンズ「はじめまして」インタビュー

 イヤホンズが、2021年9月22日に目と耳で楽しむコンセプトEP『identity』をリリースする。同作には、イヤホンズが2015年に発表した楽曲「それが声優!」のリメイク楽曲が収録されるほか、ユニット誕生のきっかけとなったTVアニメ『それが声優!』の原作者・あさのますみとの対談動画も収録予定。【Online Show版】には、2020年10月31日に開催されたイヤホンズ初のオンラインライブ『EARPHONES Theory of evolution Online Show』の映像も収録される。

 同EPのリリースに先駆けて、リードトラック「はじめまして」のMVが8月19日に公開された。同曲は、手話や多言語をモチーフに取り入れ、今まで出会うことがなかった人にもイヤホンズの音楽を楽しんでほしいという思いが詰まった一曲。様々な手話をエンターテインメントとして届ける映像が話題になっている。今回の取材では、この「はじめまして」についてインタビュー。イヤホンズにとって新たな挑戦となった楽曲やMVの制作の話題を中心に話を聞いた。(編集部)

イヤホンズ「はじめまして」MUSIC VIDEO

音楽の幅広さやハートの部分を学ぶことができた

ーー先日MVが公開された新曲「はじめまして」は、9月22日にリリースされるイヤホンズ初のコンセプトEP『identity』のリードトラック。“手話”や“多言語”などの要素を盛り込んだ、“目と耳で楽しむコンセプトEP”というテーマを体現した楽曲になりました。

高橋李依(以下、高橋):(イヤホンズの)プロデューサーさんは常々、「声優という職業の人たちが普段あまり接することのない方にもアプローチできることをやっていきたい」とおっしゃっていたのですが、今回、手話や多言語を取り扱う楽曲をやってみようというお話を聞いて、「そうきたか!」と思いました。

長久友紀(以下、長久):私は最初に手話や多言語のお話を聞いたとき、いろいろと難しい部分もあるのかなと思って、不安な面があったんです。そのことを正直にプロデューサーさんにご相談して、話し合ったうえで取り組み始めました。

高野麻里佳(以下、高野):手話を取り扱うのであれば、中途半端にやってはいけないと思いますし、だからこそ最初は難しい印象もあったのですが、今回は(手話を)しっかりと学べる機会をいただけるということで、私たちも真剣に取り組んで、「新しいものを生み出すぞ!」という意気込みで臨みました。

ーーイヤホンズは毎回、作品ごとに斬新なチャレンジを行っている印象ですが、皆さんはそういった課題を与えられると燃えるタイプですか?

高橋:それは人によるかもしれないです(笑)。今回は手話の講習会を開いていただき、「ここから何を学ぶかはあなた自身」という場所を用意していただいたんです。私はもともと人と対話することが好きなので、手話の身振りや手振りを通して会話ができたとき、本当に嬉しくて。こんなに楽しいとは想像していなかったです。

長久:私は普段、昨日のことも憶えていないくらい、いろんな記憶がすぐに飛んでしまって、日々、毎日を生きることに精一杯なんです(笑)。そんななかで新しいことに踏み出すのは勇気がいることだし、いままでも、イヤホンズの活動でなければすごく不安になっていたであろう課題が与えられてきて。でも、イヤホンズは、不安のままで臨んでも、誰かが答えを教えてくれたり、道を示してくれて、自分の中で「あっ、なるほど!」って腑に落ちる答えを見つけることができるユニットなんです。だから毎回、不安でも実際に飛び込んでみるとすごく楽しい世界だということがわかって、そこからいろんな視界が広がっていくのが楽しいですし、プロデューサーさんの思惑にまんまと乗っかっちゃっている自分はチョロいんだなって思います(笑)。

高橋・高野:いやいや(笑)。

長久:きっと皆さんも「それ本当におもしろいの?」って感じることがあると思うんですよ。食わず嫌いも同じで、食べたことのないものを食べるのって最初は怖いですけど、食べてみたら美味しいと感じるものがたくさんあって。それと一緒で、音楽や人との出会いといった物事に対して、やらず嫌いのままでいるのはもったいないと、イヤホンズの活動では毎回考えさせられます。

高野:私もイヤホンズではいつもありがたい機会をいただけていると感じています。今回のEP『identity』には“自分自身のいろんな角度を探す”というコンセプトもあるのですが、多言語や手話を取り入れることで、いろんな生活をしている方のなかにある音楽に触れることができましたし、音楽の幅広さやハートの部分を学ぶことができて、すごくいい経験になりました。

ーー「はじめまして」は、これまでも「あたしのなかのものがたり」「記憶」などの楽曲をイヤホンズに提供してきた、三浦康嗣(□□□)さんが作詞・作曲・編曲を手がけています。制作はどのような段取りで進められましたか?

高橋:まず、私たちがこの楽曲とどう向き合いたいかをプロデューサーさんとお話して、そのヒアリングを受けて、プロデューサーさんが三浦さんとやり取りして、楽曲を制作してくださりました。私たちの手元に音源が届いたときには、いろんな言語の“はじめまして”が歌詞に含まれつつ、“はじめまして”に向き合うときの不安が混じった気持ちも込められた楽曲になっていて。そして音源とほぼ同じタイミングで、今回手話を教えてくださった、手話あいらんどの南(瑠霞)先生が、楽曲に合わせて手話をつけた映像を用意してくださったんです。私たちも今作のコンセプトの“目と耳で楽しむ”を感じながら楽曲に触れることができましたし、その時の先生が素敵な笑顔だった印象も強いです。

長久:わかる! しかもその映像、ちゃんと編集されていて、MVみたいな作りになっていたんですよ。先生がおうちのいろんな場面で撮影していて、楽曲に合わせて背景が変わったりするので、「これでひとつの作品じゃん!」って思いました。

高橋 完成度がすごかったよね。

ーー長久さんと高野さんは楽曲自体にどのような印象を抱きましたか?

長久:デモ音源には仮歌と、各言語ごとの“はじめまして”という言葉のガイド音声が入っていて。その正しい発音で、メロディや音符に合わせて歌わなくてはいけなかったので、そこが一番大変でした。私は日本語以外の言葉に馴染みがあまりなくて、本場の方たちの発音や舌の動きに近づけるのにすごく苦労して。でも、この「はじめまして」を通じていろんな地域の方に私たちを知ってもらいたかったので、レコーディング前にはとにかくガイドをたくさん聴いて練習しました。

高野:この曲にはたくさんの要素が詰め込まれていますけど、私が以前からお話していた「いつかイヤホンズでクラップソングをやりたい」という要素も反映していただいていて。なので、何も考えず、体のノリで聴いていただいても楽しい音楽になっているように感じました。

ーーそういえば、前作のアルバム『Theory of evolution』収録の「わがままなアレゴリー!!!」も、皆さんがアカペラで歌うクラップソングでしたよね。

高野:そうなんですよ。あの曲も私が「クラップをしたい」と言ったことがきっかけで、その要素を盛り込んでいただけて。音楽は聴くだけではなく、肌で感じて、その人自身のノリで楽しんでいただくことで、楽しさが倍増していくと思うんです。音楽を形にしていく作業って、すごく楽しいじゃないですか。それと同じで、「はじめまして」も“楽しい”が伝わる曲だと思います。

ーー「はじめまして」は、クラップや足踏み風のビートにブラスやピアノが絡むリズミカルなアレンジが、ニューオーリンズジャズやセカンドラインを思わせる陽気な楽曲で、これまで三浦さんが提供してきたラップ調の実験的な楽曲とはだいぶ趣きが異なりますよね。

長久:私、この曲のレコーディングのとき、現場に三浦さんがいたので、「えっ! なんで三浦さんがいるんですか!?」って聞いたら、「この曲、俺が作ったんだよ」と言われて、正直ビックリしました(笑)。「今までの曲と全然違うじゃないですか!」って言ったら「そうなんだよー」って。でも、よく聴いたら〈Freut mich 君に〉とか、歌詞がちゃんと韻を踏んでいるんですよね。その気持ち良さは三浦さんならではだなと思って、レコーディングのときは必死すぎて気づかなかったんですけど、完成してから「なるほど!」と思いました(笑)。

高橋:私もデモ音源をチェックしているときに、韻をすごく踏んでいる歌詞だなとは感じて。〈Enchantee なんて〉とかもそうだし。だからチェックしながら「この曲、三浦さんかも」って思ったよ。

長久:えー、すごい!! (高野に向けて)三浦さんの曲とは気づいてなかったよね?

高野:どうだろう? 私はそのあたり、あまり何も感じずにレコーディングしたから。

高橋:多分「あたしのなかのものがたり」や「記憶」の印象がすごく強いからだと思うんですけど、「この韻の気持ち良さを活かしたい!」って思える、わくわくする踏み方だったので、三浦さんかなと思って。幅が広い曲を色々作られて、すごいなあと思います。

ーー三浦さんが以前に提供された「あたしのなかのものがたり」や「記憶」は、ある種、ふと口ずさめるようなタイプの楽曲ではないですが、今回の「はじめまして」は、メロディも構成もシンプルがゆえに口ずさみやすいですし、その意味でもいろんな人に受け入れられやすい楽曲という印象を受けました。

高橋:シンプルだからこそ伝わりやすい部分はありますよね。今回のMVを制作するにあたって、手話を指導してくださった、ろう者のいくみさんとお話をしたときに、例えば、ただ数字を「1、2、3、4」と表示されても、何の数字かわからないとおっしゃっていたんですよ。(数字が表示されるテンポに合わせて)手を叩いていたり、ノッている様子が見えることで伝わったり、ろう者の方はライブ会場でも周りのお客さんの肩の動きでノリ方がわかるというお話を聞いたので、一定のリズムが続くこの楽曲は、今回のコンセプトにピッタリなんだなと感じました。

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