『バンドリ!』大迫力のライブ映像を実現する制作の裏側 梅津朋美監督×3DCG 森田紘吏インタビュー

『バンドリ!』梅津監督×森田紘吏インタビュー

3DCGならではのカメラワークでゴージャスな絵作りを実現

――アンコールを3種類用意する、というアイデアについても教えてください。

梅津:これは音楽チームの方から、『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』に向けての新曲をつくりましょう、という話が出てきた中で決まったと思います。ただ、そのときMorfonicaはまだこの作品には出演する予定ではありませんでした。もともとは公開時期が早かった関係もあって、最初に制作がスタートした頃は、まだMorfonicaが作品に登場していなかったんです。それで、Poppin'PartyとPastel*Palettesのコラボレーションの中に、Morfonicaにも加わってもらう形になりました。『BanG Dream! FILM LIVE』シリーズは、キャラクターによる「リアルライブ」を目指しているシリーズではありますが、合同楽曲はなかなかリアルライブでは実現しづらいものだと思うので、このシリーズならではなのかな、と。

――森田さんは、CG表現について今回特に大切にしたことはありますか?

森田:基本的には、これまでやってきていることとそんなに変わってはいないんですが、それをよりいいものにしていこう、という形で進めていきました。

――『BanG Dream!』シリーズの場合、アニメーション版でもすでにモーションキャプチャーを使った表現が採用されていましたよね。

梅津:はい。ただ、『FILM LIVE』シリーズはお話がない分、ライブへの没入感をより大切にする必要があります。ですから、ひたすら根性でクオリティが上がるように努力していく、という形でした。座組や仕掛けはこれまでと大きく変わってはいませんが、キャラクターの動きや表情で「ああ、生きているんだな」と感じられるような、キャラクターたちの感情が伝わるような表情を心がけていきました。キャラクターが実際に生きていて、汗をかいている様子が感じられるようなものにしたいと思っていました。

――リアルライブとのリンクを感じる部分も随所にあったように感じます。モーションキャプチャーに繋がる話ですと、愛美さんがPoppin’Partyのメンバーのみなさんの方に振り返って演奏するような仕草や、RASの小原さんがステップを踏みながらギターを弾くモーションなども、作品内で見事に再現されていたように感じます。

梅津:リアルライブを行なっているバンドに関しては、「ここはこの演者さんの動きを取り入れてください」と相談してアクターさんに再現してもらったところもありましたし、逆にアクターさん自身が勉強してきてくださって採用させていただいた部分もありました。加えて、モーションキャプチャーで拾えなかった動きや表情に関しては、アニメーターさんの方でつけてもらっています。

森田:たとえば、MCパート中に紹介されて楽器を弾く動きはモーションキャプチャーを撮っていないので、そこはアニメーターの力で表現されています。

梅津:たとえば、(Afterglowの宇田川)巴のドラミング、すごくいいですよね。手付けで頑張ったところも色々とあるんです。今回は音がかなり豪華になったので、音の熱量に合わせるために、普段よりもキャラクターの口をより大きく開いたりもしています。母音が「イ」の口をすると、口角が上がって歯が見えて、下まぶたが持ち上がって目が笑って見えるので、顔の表情がついて、彼女たちの楽しそうな表情がより伝わるのかな、と思って仕上げていきました。

森田:これまでも『BanG Dream!』シリーズにかかわってきているため、3DCGのチームも「このキャラクターはこうした方がいいだろう」ということがある程度分かっているので、それに我々が味付けしていった感じです。たとえば、決めポーズの部分は、モーションキャプチャーだけに頼らずに、味付けをすることで見栄えをかっこよく、可愛くこだわりました。

――カメラワークや演出も非常に凝っている印象を受けました。ズームインやズームアウトもかなり大胆に用意されていましたし、空中からの視点も印象的でした。

森田:今回は特に、演出やカメラワークに手間のかかることを多くやっているので、その部分がよく見えているのかな、と思います。

梅津:ライブシーンをずっと観ていても飽きないように、コントラストをつけられるようにしています。また、会場が広い分、カメラを引いたときの効果も伝わりやすいので、「引くときは思いきり引く」という形にしました。やはり、そうするとゴージャスに見えますよね。

森田:通常のアニメのカメラワークは、長く大きめに用意した絵をスライドさせるような形で行なわれますが、3DCGの場合は、空間上をカメラが自由に動き回ることができます。非常に手間もかかりますが、今回の作品では3DCGならではのよさを生かしていきました。

梅津:やっぱり、作画ではなかなかあれほど回り込んだりはできないですよね。

森田:そういったものも含めて、3Dにしかできないカメラワークを意識しています。また、2D的なカメラワークを使うときも、画面が平面的に見えないよう、手前と奥のキャラクターでスライド幅を変えています。

梅津:あれはすごくいいですよね。この作品では、キャラは2コマで動いているものの、カメラワークはフルコマで動いています。キャラもフルコマだと、ぬるぬる動いてしまって3Dっぽい気持ち悪さが出てしまうんです。そこで、カメラや物&周りの風景はフルコマで動かしつつ、キャラクターはアニメっぽく2コマで動かす工夫を加えて、アニメっぽく見えるようにしました。また、ゴージャスさの表れとして、ステージの後ろにあるスクリーンの映像にも注目していただきたいです。あの部分も、カメラ1台分の映像ではなく、2台、3台を使って表現するような豪華なものになっています。

森田:ですから、1カットつくるのにも、2~3カット分の労力が必要でした。

梅津:大変でしたよね(笑)。でも、リアルライブでも、ステージ上のスクリーンには、メインのカメラだけではなくて、色々な視点からのカメラの映像が加わっています。だからこそ、スクリーンの中の映像にも厚みやゴージャス感を持たせていきました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる