「Individual」インタビュー
眉村ちあきを深く知るためのいくつかの質問 個性が爆発した快作「Individual」の誕生、コロナ禍で得た“強さ”も明かす
眉村ちあきは、自己肯定感が高そうだという声について「だまされてるな、って思う(笑)。私は自己肯定感が高いふりをしてるんですよ」と語る。眉村は、2017年に自身が社長を務める「株式会社 会社じゃないもん」を設立し、2018年には『ゴッドタン』(テレビ東京系)で即興ソングを披露し注目を集めるなど、さまざまな活動で話題を呼んできた。2020年12月14日には日本武道館公演も行い、日本コカ・コーラの「ジョージア」Worker's Songキャンペーンや日清食品の「カップヌードルPRO」の楽曲も手がけ、順風満帆な活躍ぶりだ。しかし、実はコロナ禍まで他人に怒ることができなかったともいう。彼女がコロナ禍で得たという「強さ」について聞いた。(宗像明将)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
自粛で溜まりに溜まったものを吐き出して生まれた“爆発”ソング!
――私が初めて眉村さんをライブで見たとき、お客さんのハゲいじりをしていたんですよ。私はポイントが高いんじゃないかと思って来ました。
眉村:別にそういう見た目が好きということではないんですよ(笑)。
――え、そうなんですか?
眉村:マユムラー(眉村ちあきファンの総称)はハゲか太っているおじさんが多くて、自分もおじさんを見てかわいいなって思うんです。
――私は100点満点で何点ぐらいでしょう?
眉村:70点ぐらい(笑)。
――なかなかの点数で良かったです。それにしても、7月7日に配信リリースされた「Individual」はメロディの展開がとにかく多いですね。一般的なJ-POPは「Aメロ→Bメロ→サビ」という構成なのに、「Individual」は「サビ→Aメロ→Bメロ→Cメロ→Dメロ→Eメロ→Fメロ→Bメロ→サビ」という構造です。これはどこから生まれてきたんでしょうか?
眉村:きっかけはふたつあって、一つは大槻ケンヂさんのこの間のアルバムに、映画を見てるみたいな展開で、ミュージカルみたいにセリフもある曲があって(特撮のアルバム『エレクトリック ジェリーフィッシュ』収録「歌劇「空飛ぶゾルバ」より「夢」」)、「私もやりたい」って思ったことで。もう一つは、最近タイアップのコンペにも挑戦するようになって。そういうのって、テーマに合わせたり、決まってるものに対して曲を書いてみたりするチャレンジなので、今回は自由に作ってみようかなって。コロナ禍で自粛して溜まりに溜まったものを全部ここに吐き出すつもりで、めちゃくちゃしてやろうと思って作りました(笑)。
――いろんなものが溜まっていたわけですね。
眉村:好きにやりました。「Bメロのあとサビに行かなきゃいけないっていうのもなくね?」と思って。音楽って自由だし。だから、Bメロの後に思いついたメロディをCメロとして、それをどんどんどんどん付け足していったら、いつの間にかすごいことになってた。
――タイアップの曲を作るのは大変ですか?
眉村:まだ経験値が浅いから「大変だな」って思うときがあって。しかも、コンペで落ちるじゃないですか。「こんなに大変な思いをして作って落ちることなんてあるの?」と思って。落ちたら一生恨むくらいの努力をそれぞれの曲にかけてるのに、落とされることがあるんだ、っていうことも悔しくて爆発しました。
――コンペに落ちたとき、落ち込んだりもしますか?
眉村:全然しますよ。ふだんも本当に生活力が低いので、まず普通に洗濯物を干せなくて落ち込んだり。気になったものがひとつあると、それに集中しちゃって、忘れるんですよ。しかも、どんどん目移りして、何をやってたかわかんなくなる。よくマネージャーさんに「私って今何してたんだっけ?」って聞きます。
――マネージャーさんはどういう反応をするんですか?
眉村:「知らねーよ」って(笑)。家でしてたことなので、「そりゃそうだよな」なと思って(笑)。そういうのも「もう嫌だ」ってなって泣いたりします。たとえば、洗濯も何度も干すのを忘れるから、何度も洗濯機を回すじゃないですか。人より2倍時間がかかるから、「普通に忘れずに干してたら、他のやりたいことを進めてるはずなのに、なんで私はこんなに時間がかかるんだろう?」みたいな。あと、電車も切符で乗ると絶対に失くすから、2倍お金がかかったり。「私って生きてて普通の人よりいっぱいお金がかかるし、いっぱい時間もかかってて、なんてもったいないことしてるんだろう、一生これなのかもしれない、うわー!」ってなります。
――眉村ちあきさんは自己肯定感が高そうだから意外です。
眉村:だまされてるな、って思う(笑)。私は自己肯定感が高いふりをしてるんですよ。
――ということは、本当はどういう感じなんですか?
眉村:本当は全部気にしちゃう。たとえば、横に人がいてスマホを触ってるとしたら、「私の話、面白くないんだ」ってなる。スタッフさんと話してて「帰りたいなー」って言われたら、「私と一緒に仕事するの楽しくないから帰りたいんだ」とか、本当に一瞬なっちゃう。でも、すぐ「そんなことないよ!」って思って、ぐちゃぐちゃ消すみたいな。
――そういうときにうまく切り替えはできるんですか?
眉村:昔からできないですね。今もなっちゃう。うまくいかないとき、どうしたらいいか私もわかんないですよ。
――でも、アルバムや日本武道館公演のタイトルも『日本元気女歌手』だし、元気っていうイメージが強いですよね。それは負担ではないですか?
眉村:そういうイメージがついていることは負担ではないです。実際に体力がめちゃくちゃあるので、そういう意味の元気はめっちゃあるんですよ。ずっと遊んでられる。楽しいときのアドレナリンも半端ないから、そういう意味では「元気女歌手」だろうなって思うし。でも、たとえば誰かに何かの変更の連絡をお願いしたときに、「私がこんなことしたせいで連絡させちゃった」とかになるんですよね。だから、根本は自己肯定感はめっちゃ低いんだろうなって思います。
――意外ですね。
眉村:発信する音楽とかTwitterとかは、「今日も最高だね!」みたいことを書くようにしてて。だから周りからは自己肯定感が高いと思われるんだなって思うし、「自己肯定感が高いです」っていう発信しかしてないから、みんなだまされています。
――そんな眉村さんが好き勝手にやった「Individual」のような曲を今後も作りたいですか?
眉村:全然やります。大衆に受ける系の曲もガンガン作りたいし、こういう「Individual」みたいに好き勝手な曲もどんどん作りたいです。
――眉村さんの中で、大衆性と自分のやりたいこととのバランスってどうとっているんですか?
眉村:コンペに提出するものは、「こういう雰囲気で」「テンポはこれぐらいで」「何秒以内で」「サビは声を張る感じで」とかあるんです。それに一応合わせては作るけど、大衆受けかどうかは正直、自分ではあんまりわかってなくて、「Individual」も、けっこう大衆受けだと思って作ってて(笑)。一応サビをキャッチーにしてるし、みんな歌えるようにしてありますね。
――サビがすごくキャッチーなんで、「Aメロ→Bメロ→サビ」に無理矢理削ると、清涼飲料水のCMソングもいけると思うんですよ。
眉村:そうなんですよ! アクエリアスで使ってほしいなあと思って、このサビができたんですよ、そういえば。今思い出した(笑)。でも、アクエリアス用のことを忘れながら爆発した曲を作って。
――アクエリアス用の曲は結局できたんですか?
眉村:できなかった(笑)。サビだけ送って「使って!」って言いたいです。あと、ここの部分は甲子園っぽい感じにもしたんです(「Individual」のサビを歌いながら)。甲子園球場で演奏してほしいなあ。
――歌われてみると、たしかに吹奏楽向けですね。大衆性とのバランスを考えてストレスになることはありますか?
眉村:あんまりないですね。やろうと思えばうまく作れるから。「作れない」ってなったときにストレスを感じるのかなって。でも、作るのもめっちゃ発散になるんですよ。だから今のところ「最高!」って感じです。人生で一番幸せな瞬間が曲が完成したときなんですよ。眉村ちあきの活動を始めてから最高の日々です。