眉村ちあき、ファンと過ごした特別で愛しい日 たくさんの笑顔に包まれた初の日本武道館公演
開演時間をすぎると「ライブが出来ずみんなに会うことができなすぎて耳から何かが飛び出そうな違和感がある」と言う眉村ちあきに、謎の男が治療に必要な3つのアイテムを教えるという、独特な世界観のオープニング映像が流れた。今回のライブはそのアイテムを探す旅に出るというコンセプトがあるようだ。
冒険の始まりを感じさせる「冒険隊 ~森の勇者~」でライブがスタート。衣装のマントをなびかせながら上手から下手、センターステージと駆けずり回りながら勢いよくパフォーマンスする。「さっそくトロッコに乗っちゃおうかな」と言って早くもトロッコに乗って会場を周ろうとするが、すでにトロッコには人が乗って動き出している。乗っていたのは眉村の実母。会場を周りながら客席に手を振り、それにファンも応えて母に注目して手を振り返す。眉村も負けじと「みんなこっちを見て!」と声高に叫んでいた。そしてライブ定番曲の「ナックルセンス」を早くも披露。この曲はファンがコールをすることがお決まりの曲だが、感染症対策で客席は声を出せない。そのためあらかじめ録音されたコールや掛け声の音源が会場に流れ、それに合わせてファンが腕を上げたり手拍子をして盛り上げていた。曲の後半では宙づりになり、スクリーンに映った怪物のゴストファーと剣を持った眉村が戦った。そこで耳の違和感を治すアイテムを手に入れるというコンセプトに合わせた演出もあった。
「前半に畳み掛けすぎ」と本人が歌い終わってから言ってしまうほどに、ド派手な演出が続いた冒頭。しかし盛り上げるだけが眉村ちあきの魅力ではない。ここからはミュージシャンとしての凄みを感じる曲が続く。「リアル不協和音」では紫の照明に照らされながら妖艶な雰囲気の中でアコースティックギターをかき鳴らし、「マーメイドボーイ」では海の中をイメージした映像をバックに歌い幻想的な雰囲気を作り出す。東京の街の景色を映す映像をバックに歌った「夕顔バラード」での、圧倒的な声量と感情豊かな表現力で会場全体を包み込む姿は圧巻だった。表現力豊かな高い歌唱力も彼女の魅力だ。
「落ちサビでわたしに壁ドンをしてときめかせてほしい」と言って、ファンに腕を前に出して壁ドンのポーズをするように指示してから「シュビデュバ・オブ・クラティー」をパフォーマンス。コロナ禍の影響で制限がある中でも、独特な方法で観客を巻き込んで一体感を作っていく。久々のワンマンライブで多少の緊張はあったのだろうか。「壁みてる」では「ライブのやり方思い出してきた!」と曲中に叫び、さらに自由にパフォーマンスした眉村。ファンも手拍子をしたり手を振ったりと、さらに楽しそうに盛り上がる。キッズダンサーと一緒に「手を取り合うからね」をポップにパフォーマンスしたときは、眉村と一緒に同じ方向にファンも身体を揺らしていた。眉村ちあきのライブは以前からずっとファンとの強い信頼関係を他のアーティスト以上に感じるものだった。その深い関係性は、大会場でもコロナ禍でも変わらないのだ。
5分の換気タイムを終え、水色の衣装に着替えてセンターステージに再登場した眉村。弾き語りで「顔面ファラウェイ」や「ツクツクボウシ」、「東京留守番電話ップ」など複数の人気曲をメドレーでマッシュアップのように繋げて披露。シンガーソングライターとしての底力を感じるライブ限定アレンジに盛大な拍手が贈られる。そして家族への感謝を伝える「Dear My Family」を歌い、「みんなに大好きを返すね」と告げてから「本気のラブソング」を、ステージに設置されたミラーボールが美しく会場を照らす中で優しく語りかけるように歌った。「音楽と結婚ちよ!」で〈わたしは一生音楽を辞めない 誓おう〉と歌う都度に客席から温かな拍手が贈られる。曲の途中では「お前らはインスタライブとかでわたしの顔を見れるけど、わたしはそっちを見れなかったから寂しかったんだからな」とひねくれつつもファンへの愛を感じる言葉を告げる眉村。たくさんの愛が詰まった曲が続くことで、優しい雰囲気で会場が満たされる。
バラード曲「36.8℃」を感動的に歌い上げ、切り株の形をした椅子に座って「やさいせいかつ」を明るく歌った。そしてゲストにWiennersの玉屋2060%を迎えた「偏差値2ダンス」、トロッコに乗って会場を周った「ビバ☆青春☆カメ☆トマト」をパフォーマンスし、感動も盛り上がりもピークを迎える。
本編最後には「路上ライブで暴言を吐かれたりテレビに出て批判されたり嫌なこともあったけど、情緒不安定で等身大の眉村ちあきが魅力的だと思うの。私は勇者だから最後に全員を勇者にして終わらせます。全身全霊心を込めて歌います」と告げてから「大丈夫」をエモーショナルに歌った。