「Individual」インタビュー
眉村ちあきを深く知るためのいくつかの質問 個性が爆発した快作「Individual」の誕生、コロナ禍で得た“強さ”も明かす
“見てて幸せになれる生き物”こそアイドルだと思う
――その活動で、眉村さんは「弾き語りトラックメイカーアイドル」と名乗っていますが、「弾き語り」「トラックメイカー」「アイドル」の3つの要素の構成比はどんな割合になると思いますか?
眉村:1:3:6ですね。
――アイドルが6割で一番大きいんですね。
眉村:アイドルの認識って人によって違うと思うんですけど、私は見てて幸せになれる生き物こそアイドルだと思ってて。私はみんなのことを幸せにしてるし、「アイドル性、高いなあ」って思うので。だから6にしました。
――みんなを幸せにしてるっていう確信があるんですね。
眉村:はい。会場でみんなニッコニコなんですよ。だから「幸せそうで良かったね!」と思うし、私自身がめちゃくちゃライブが楽しくて、幸せで絶好調なんですよ。毎回推しが幸せそうにライブしてるのを見るって幸せじゃないですか。私が幸せそうにライブしてるから、みんな幸せだと思う。いい感じ、って思います。
――残りは、弾き語りが1割で、トラックメイカーが3割だから、トラックメイカーのほうが大きいんですね。
眉村:トラックメイクのほうが先に始めたし、技量も圧倒的に弾き語りよりトラックメイクのほうが得意だなって思ってるし、なんなら弾き語りはあんまり自信がないし(笑)。だからライブの見せ場はトラックをアレンジして挑むことが多いですね。
――トラックメイクに関しては、眉村さんって、ヒップホップの要素が濃いじゃないですか。トラップが鳴っている曲も多い。どんなものを聴いているんですか?
眉村:いや、ヒップホップは全然わかんなくて。中高でK-POPが流行ってて、K-POPってだいたいラップするじゃないですか。それは聴いてました。
――すごいラップの聴き方ですね。
眉村:あはは! それぐらいしかラップは聴いたことがなかったぐらい。19歳ぐらいのときに、アイドルグループに入ったんですけど、そのぐらいのときに下北沢をフラフラして、その辺の人とラップバトルしてました。
――普通は、その辺を歩いててラップバトルは始まらないと思うんですよ。何が起きたんですか?
眉村:駐車場に行ったら、B-BOYみたいな男の子達がスケボーで集合してたんですよ。私も当時スケボーに乗ってて。そしたらラジカセを運んできて、お兄さんたちがラップし始めるんですよ。そこに行って「YO YO!」って。
――めちゃくちゃ陽気な乱入者ですね。
眉村:「マジこの子、誰?」みたいな顔されました。しかもめちゃくちゃ下手なんですよ。「私の名前はちあきだぜ!」とか、もう本当に初心者がやってるのに優しく見守っててくれて、「次はお前だよ!」って言ったら、ちゃんと受け継がれるんですよ。
――強引にマイクリレーを(笑)。眉村さんはあまり音楽を聴かないとも言いますよね。
眉村:そうなんです。でも、最近はYouTubeライブしてるジャズピアノとか聴いてます。それを流して、「ここはカフェよ」みたいな感じになって、コーヒーを淹れたりして、いい女みたいなひとときを過ごして。
――それ、ご自宅なんですよね? その様子を見てる人は特にいないんですよね?
眉村:いないです(笑)。あと、最近は宝塚好きだから宝塚の演目を見て、「あ、この曲かわいい」と思ってるぐらいですね。宝塚の影響はめっちゃあります。たとえば(「Individual」を歌いながら)〈一番怖いのは 無知の人間であると〉のところとか。
――たしかに宝塚っぽいですね。
眉村:あと、ちょっとオペラっぽいコーラスを作ってみたりして。Queenの『ボヘミアン・ラプソディ』を見て、「オペラやるんだ」って知って、そこからオペラの歌を歌い方にも興味が出て、見よう見まねで真似したりしてるうちに、宝塚に出会って、「この人たちもオペラみたい」と思ってゾッコンになりました。
――音楽をあまり聴いていないなか、トラックを作る能力が異様に長けてるじゃないですか。そんなに聴いたものの再現力が高いのはなぜなんですかね。
眉村:へー、そうなんだ?
――他人事ですね。
眉村:「いい感じ!」と思った音を使うみたいなノリです(笑)。
――それは頭で覚えてるんですか?
眉村:覚えてます。聴いていいなと思ったら、それをずっと覚えているタイプで。前はよく対バンをしてたから、対バン相手がいい音を出してたら、「この音みたいな曲作ろう!」って思いながら家に帰って作る、とかやってたんですけど、最近対バンがないからマジでインプットが宝塚しかなくて。
――いい音だから家に帰って作ろう、って思って作れるのがすごいと思いますよ。普通はできないと思います。
眉村:本当ですか? 「みんな、やればできるのになー」と思います。フレーズごと覚えたりはあんまりしないけど、雰囲気とか「なんかジブリっぽいな」とか、そういう感じで覚えています。
――それは明らかな天才タイプだと思いますよ。リズムへの言葉のはめ方やテーマの選び方など、歌詞について意識していることはありますか?
眉村:それこそリズムへの言葉のはまり方を最初に考えて、そこから派生させます。
――言葉のはめ込み方がすごくきれいですよね。
眉村:嬉しいです。最初は言葉のはめ込み方だけで歌詞を書いてたんですよ。だからこっちとこっちのつながりがないとか、つじつまが合わなくなったりもしてたけど、「まあ、音が気持ち良かったらいいっしょ」と思ってたんです。だけど、最近は「いや、音が気持ち良くて、かつ意味がつながってたら最強じゃない?」っていうことに気づいて。
――最近なんですか?
眉村:はい、最近です(笑)。