Panorama Panama Town、爆音で掻き鳴らした“2021年のロックンロール” 1年半ぶり有観客開催の東京ワンマン
Panorama Panama Townが、東京でのワンマン有観客としては約1年半ぶりのライブを新宿LOFTで開催した。2020年はフロントマン岩渕想太(Vo/Gt)の声帯ポリープ手術、メンバー脱退による編成の変更という局面も。そして新体制のリスタートとなるはずだった、盟友バンドを迎えての日比谷野外音楽堂でのライブが残念ながら中止に。この日も岩渕が「もどかしさが続いた年」と振り返り、コロナ禍以外の側面でもタフな時期を過ごしてきたわけだが、東京・大阪の2カ所とはいえ、久々にツアーを完遂した彼らに対して、苦難を乗り越え、晴れて有観客のライブを成功させたという美談に回収したくない想いが残った。
昨年8月にこの場所から行った配信ライブのラスト曲、「On the Road」からライブはスタート。サポートメンバー 大見勇人(Dr)の8ビートが、曲の“顔”に思えるぐらい存在感を増している。立て続けに演奏した「SHINKAICHI」は重いギアで爆走するトレーラーのようなスピード感。間違ってもEV車じゃない。でも、楽器の音は全てが磨かれていて、リフ一つ、ベースの刻み一つ、スネアの音一つ、どれもが最高にクールで熱い。ロックンロールをどれだけ今のものにできるかはサウンドとビートにかかっているが、その意味でも今、パノパナが鳴らしているのは間違いなく2021年のロックンロールだ。
人数制限がある現状、ロフトのフロアにスツールが置かれるという珍しい光景を見たが、オーディエンスもしょっぱなから盛り上がるというより、徐々にサビで手を挙げたり、静かに見守っている人もいる。そのバラバラさも“パノパナのライブに来た”実感を甦らせる。ここ最近、岩渕は再びギター&ボーカルに徹していて、浪越康平(Gt)との抜き差しのスリルを味わえるのだが、モータウンビートの「C’mon Future」ではリフとバッキングのアンサンブルが際立った。新曲もインディーズ初期のナンバーも違和感なく並び、加速する車に乗っかったような体感。これぞライブだ。
一転、タノアキヒコ(Ba)のマンチェビートを思わせるベースが牽引する「Gaffe」からは彼らのファンクネスをタイトにぶつける。音源とは違うストイックなバンドアレンジで聴かせる「月の裏側」は今の4人のサウンドにアップデートされていた。フロアがうねり始めたところにまた重量級トレーラーのごとき「Dogs」をたたき込むと、新作EP『Rolling』からの「氾濫」では目に映る現実が言葉となってただただ発される。部屋の中にいても街に出ても押し寄せてくる広告、監視、コミュニケーション、VR、娯楽、ファッション......。何が自分にとってのリアルか分からなくなって濁流に流されそうな今、言えるのはこの曲の歌詞のように〈I want to believe me〉〈I want to believe in love〉ということだろうし、それをデカい音で鳴らすことで、新曲に抱いていたシンパシーを生身の体で答え合わせしている自分に気づく。