パノラマパナマタウンが表明した“選んで足を運ぶこと”のかけがえのなさ 『渦:渦 vol.2』東京編レポ

パノパナ『渦:渦 vol.2~東京編~』レポ

 パノラマパナマタウン(以下、パノパナ)の自主企画『渦:渦 vol.2~東京編~』が9月27日、新宿LOFTにてゲストアーティストに忘れらんねえよを迎えて開催された。ちなみに大阪編はPOLYSICS、昨年10月のvol.1には山嵐とSUSHIBOYSを迎えた同企画。テーマはジャンルや世代も超え、リスペクトするアーティストとの競演というシンプルなもの。ちなみに忘れらんねえよは共通の知人バンドがいるわけでもなく、正真正銘の初顔合わせ。ライブ中、柴田隆浩(Vo/Gt)はパノパナの「ずっとマイペース」の歌詞の1フレーズ〈あいつの方が先にいるように見えるけど空から見りゃ同じとこ〉に、「天才だわ! くっそロックンロールだね」と、自身が召喚されたことに納得していた。

 いつもどおりの熱演を忘れらんねえよが見せつけたあと、パノパナが登場。2バンドどちらのステージもオープンに楽しもうとするオーディエンスが多いことが場の風通しを良くしている。『渦:渦』という企画名は何も出演バンド同士だけじゃなく、ここにいる人間一人ひとりが渦になって、アウトプットとインプットを相互に行い、影響も与え合うーーそういう磁場を目指していることがわかる。パノパナのリスペクトの表明は1曲目から「世界最後になる歌は」を披露したことにも明らかだった。この曲は彼らが自分で言葉を発し音楽として鳴らし続けていく上で、その純度や強度を更新し続けていく覚悟のナンバーだと私は受け取っている。それを対バン企画の1曲目に持ってくる矜持。そして先ほど柴田が「天才」と形容した歌詞を持つ「ずっとマイペース」。岩渕想太(Vo/Gt)のラップが一語一句明快に聴こえるのは彼の発語のクリアさもあるが、バンドアンサンブルの抜き差しの絶妙さもあるだろう。もともとべたっとした音像ではないバンドだが、アルバム『情熱とユーモア』のリリースタイミングより、バンドの生楽器とヒップホップのバランスが俄然良くなった印象を持った。さらに今夏の新曲「HEAT ADDICTION~灼熱中毒~」ではMV同様、汗まみれな上にムートンコートを着込むというトゥーマッチな演出に半ばあ然としながらも、サーフ&ヒップホップな演奏は冴えを見せるという、笑いながら拳をあげたくなるカオスな空間が出現した。

 新旧織り交ぜたセットリストは軽妙さの種類は違えど、言葉が畳み掛けられる「マジカルケミカル」、「月の裏側」と違和感なく続き、ハードボイルドなマイナーチューン「ラプチャー」と会場がある歌舞伎町との相性の良さを再認識。岩渕想太曰く、上京してみて、地元・北九州と最も似た感覚を覚えるのが新宿であり、次第に観光地化され均されていく様子に一抹の寂しさを感じるが、それでもまだカオティックなこの街が好きだという。加えて新宿LOFTはバンドのメジャーデビューを発表した場所でもある。バラバラなバックボーンを持った人間がごちゃごちゃ存在している街とパノパナ、そしてこの『渦:渦』の企画趣旨がハマる理由が体感できた。

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